中国ゼロコロナ解除まであと8800万回

2022年10月12日
全体に公開

コロナの話、皆さん興味あります? なんか日本はもう「コロナ終わった」モードで記事を書いても全然引きがない印象です。まだこれから二転三転するっしょ、と素人ながらに思っている次第ですが。

で、問題は私が専門とする中国です。世界銀行が9月26日に発表した最新の見通しでは2022年の実質成長率は2.8%との予測。4月の5%から一気に下方修正です。10月11日発表の「IMF世界経済見通し」は3.2%との予測です。

中国でもまもなく第3四半期の成長率が発表されますが、5.5%成長という目標は放棄するとのシグナルがすでに発信されているので、鉛筆なめなめしないで素直に厳しい数字を出してくると予想しています。

それにしても3%前後とは。2000年代の二桁成長当たり前、8%を切ったら人民が革命を起こすという「保八」(8%成長死守)がおおまじめに話されていた時代からは隔世の感があります。習近平時代になると、新常態やらL字成長(いずれも成長率が一段落ちた新たなステージを維持するという話)が唱えられベースが下がるよねという流れで、成長率はじりじり下げていたのですが、今回の景気減速で一気に数年分先取りした感があります。

ゼロコロナ解除まで8800万回

中国経済のリスクは何があるのか?ざざーっと書き出すと以下のようになるかと。

・ゼロコロナによる消費減速
・不動産規制と恒大集団問題から波及した不動産危機
・ドル高元安基調による資本逃避
・景気不透明感に伴う企業の投資削減
・コモディティ価格上昇に伴う原料費高騰
・世界経済の低迷に伴う輸出の先行き不透明感

特に上の2つがリスキーです。中国共産党は不動産危機対策にはいろいろ手を打っているわけですが、ゼロコロナと消費減速にはあんまり手当をしていないのが現状です。いつ、ゼロコロナをやめるの?やめられるの?が注目の的に。

そうした中、一部の人々が希望を抱いていたのは「党大会が終わったらゼロコロナをやめるんじゃね?」という観測です。が、党大会開幕まで1週間を切った10月10日、その期待をへし折る記事が、中国共産党機関紙「人民日報」に掲載されました。

「動態的ゼロコロナ」は持続可能であり堅持すべき  “动态清零”可持续而且必须坚持
現行コロナ対策への信頼と忍耐を強化せよ 增强对当前疫情防控政策的信心和耐心

出口戦略への言及はゼロで、「堅持すれば勝利する」といった煽り文句にショックを受ける人が多数。目新しい内容は特にありませんが、最近中国国内でちょっと話題となっている「海外だとオミクロンの死亡率はインフルより低いんですけど……(まだゼロコロナ続けるの?」という風潮に対し、「死亡率は低くても感染力がめっちゃ高いから、ゼロコロナを続けないと中国2億6700万人の高齢人口(60歳以上)がピンチ」と反論しているところが注目されます。

まあ、確かに中国は人口が多いし田舎の医療インフラが貧弱なので、ゼロコロナをやめれば数十万人は死者が出ると予想されています。この被害を少しでも減らせる体制を作ることがゼロコロナ撤回の前提となるわけですが、カギを握るのが高齢者のワクチン接種率です。

8月31日時点で2回接種を完了した高齢者(60歳以上)は2億2600万人、3回接種は1億7600万人と発表されています。つまり、60歳以上人口の3回目接種完了率は66%。日本は65歳以上人口の3回目接種完了率が90.6%(10月11日時点)なので、大きな開きがあります。この数字を日本並にしないとゼロコロナ解除は難しそうです。

問題はワクチン接種の進度です。5月7日時点の発表では2回接種は2億1257万人、3回接種は1億4364万人でした。約4カ月でざっと4000万回打っていますが、3回目接種完了率を90%にするにはあと8800万回が必要。となると、今のペースでは9カ月かかりますし、そのころには「4回目やってないと免疫足りないです」とかいう話になりかねないという。

寝たきり老人のいる部屋に乱入してPCR検査をする、乳飲み子から引き離して母親を集中隔離、感染者が飼っていた愛犬を棍棒で殴り殺す……とコロナ残虐物語が乱舞する中国ですが、なぜかワクチンだけは「接種するしないは自由意志でござる」「ワクチン打ったらお金上げるけど……やっぱり打ちませんか……とほほ」と優しさいっぱい。強制がいいとは思いませんが、このちぐはぐさが気になります。

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