メタバースが「普段使い」になる日:ICT教育とエデュテイメント

2024年5月18日
全体に公開

前回の記事では、メタバースが普段使いになるための3つのユースケース(ゲーム、フィットネス、教育)についてお話しました。今回は、その中でも私が特に注目している「教育」について掘り下げていきます。

メタバース×教育の3つのカテゴリー

私はメタバースを活用した教育のユースケースを、大きく3つのカテゴリーに分けて考えています。

1.コミュニケーション革命
2.ICT教育の入り口と出口
3.エデュテイメント

1.コミュニケーション革命

教育は分解すると思想や知識やノウハウの伝達、いわゆるコミュニケーションの要素が大きいです。メタバースの本質的価値いくつかありますが、そのなかのひとつがコミュニケーション革命。「メタバースは3D空間であり、情報量が多いため、メタバース内に入って学ぶことが多くの学びにつながる(例えば車の運転の練習や工場の機器の使い方など)」というのが、メタバース×教育という角度での大本丸です。あらゆるジャンルの教育に応用が効き、教師、教材、教室の在り方の革命もカバーできます。ただ上記の前回記事で言及したように、メタバースの本質的な価値の享受はまだまだ普段使いするには『重い』です。ヘッドマウントディスプレイが十分に普及して職場や家庭などの生活の中に浸透している段階で、その力を存分に発揮するジャンルです。

2.ICT教育

ICT教育とは、プログラミングやデジタル技術を学ぶ教育のことです。2020年度から日本の小学校でプログラミング教育が必修化され、子どもたちがプログラミング的思考やコーディングに触れる機会が増えました。

学ぶ目的が明確になると、学習意欲が向上します。子どもたちにとって、ゲーム開発は魅力的なアウトプット先です。最近では、個人や小規模チームでもゲームを制作できる環境が整っており、「Among Us」や「8番出口」のようなヒット作も生まれています。無料のゲーム開発ツール(Unity、Unreal Engine、Blenderなど)や、ノーコード開発の普及もこの動きを後押ししています。

さらに、YouTuberなどの配信者がインディーゲームを紹介することで、個人でもヒット作を生み出せるチャンスが広がっています。最近では地上波番組でも遊ばれることがあり、波に乗ったインディーゲームは大企業の公式リリースのIPゲームよりも広まりを見せることがあります。

ただし、ピンキリあるものの、こういった独立型のゲーム開発は、ゲームを開発する以外にも、デバイス対応や各プラットホームの審査に対する知識、サーバーなどのインフラ周りの知識など、プログラミングを学び始めた子どもたちのアウトプット先としては、少しハードルが高い部分もあります。そこでプログラミング学習の短期的なゴールとして、ゲーム×メタバースのUGCプラットフォームを活用する事例が増えてきています。

広がるUGCプラットフォーム

最近注目されているのが、UGC(User Generated Content)プラットフォームを活用したゲーム作り教室(=プログラミング教育)です。例えば昔は動画作りと言えば、TV局か映画会社くらいしかすることはなく、家で機器を集めてホームビデオに字幕を付けるなどしていた人はそうとうなマニアだったかと思います。それが今では、YoutubeやTikTokでの公開が一般化しています。このように、実はゲーム開発も個人が手軽に行えるようになってきています。

特に、 専用のアプリケーションで独立型のゲームを作る方法以上に簡単な手法でFortniteやRobloxのなか、つまりゲームの中にゲームを作るという手法が、現在最も手軽にゲームをローンチする方法として、個人クリエイターを中心に注目を集めています。また、気になる収益面に関しても、ゲームをプレイされればプレイされるほどゲーム内通貨や実際のお金が入ってくる(※年齢制限など諸条件があります)ので、開発者の技術を学んだ先の出口としての収益化を目指すことができます。

ゲーム内に広告を出すなどして収益化することも可能

学習者の短期的なゴールとして、簡単に自分のゲームを作成し、公開することができ、プログラミング学習の動機付けにもなります。例えば、Robloxのプログラミング教室では、子どもたちが自分のゲームを作ることで「ゲームが好きだからやってみたい」という学びの入り口と「ゲームを公開して皆に遊んでほしい」という学びの出口が設計できるという利点があります。

実際の事例

ビックカメラでは、Robloxプログラミング教室を無料で開催しており、親子で参加することができます。これにより、子どもたちは無料でプログラミングを学び、店舗は集客効果を得るという、ウィンウィンの状況が生まれています。

茨城県では、講座を開催して、県内の人々にもゲーム開発の世界で活躍するきっかけを提供しています。すでに活躍している地方在住YouTuberやTikTokerと同様に、地方在住者でも活躍の場を見つけることができるのがゲームメタバース開発者の特徴です。地方在住のゲーム開発者は、生活コストを抑えながら活躍し続けることが可能なことも利点ですね。さらに、県内全体のITリテラシー向上や、茨城の定住者・移住者増加に向けた長期的目標も持っています。

プログラミング教育活用はメタバースを作ることを目的としているため、上述したようにメタバースの持つ夢のようなポテンシャル、本質的な価値の部分からはズレますが、2024年5月現在で短期的に結果がみえる活用事例、プログラミング教育の入り口→学ぶきっかけプログラミング教育の出口→学ぶ目的としての有用性は大いにあります。

次回は「エデュテイメント」

エデュテイメントとは、教育(Education)と娯楽(Entertainment)を組み合わせたもので、メタバースを通じて楽しく学ぶことができます。例えば、言語学習や歴史の学びをゲーム化することで、子どもたちはより楽しく、効果的に学ぶことができます。

メタバースのエデュテイメント利用は教育に新しい可能性をもたらしています。次回は、エデュテイメントについてさらに詳しくお話します。
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