【経営企画の必読書】先輩、本棚の中身を教えてください!

2024年5月1日
全体に公開

事業部から経営企画部に異動してみて、その業務量と範囲の広さに呆然とする―4月にそんな経験をした経営企画パーソンはいないだろうか。

そこで、記者が「この方の本棚をのぞいてみたい!」と思っていた、ある大手素材メーカーの経営企画部課長に話を伺った。

経営企画の先輩は、どんな「必読書」を紹介するのだろうか。

経営企画の新任者はもちろん、「今さら聞けない..」を解決するGWの読書候補としても、また経営企画同士でおすすめ本を語り合う機会としても、本記事を活用して頂きたい。

マインド編:スキルマニアになるな、参謀になれ

──経営企画部の新任者は、何をどのような順番で学べばよいのでしょうか。

経営企画の「先輩」 ①マインド、②知識、③スキルの順番だと思います。

まずマインドを学ぶというのは、経営企画部と事業部のマインドに大きなギャップがあるからです。事業全体を俯瞰する、長期的な視点をもつ、というのは機能分化した大企業の事業部ではなかなかできません。

──経営企画のマインドは、実地で学ぶ以外にどんな本がおすすめですか。

戦略参謀の仕事」「BCGの特訓」の2冊がおススメです。

経営企画部は、経営者の参謀です。企業としてPDCAサイクルのレベルを高めるために、どうやって経営者に意思決定を行ってもらうか。「自分は参謀になれているだろうか」と振り返りながらこの本を読んでいます。

BCGの特訓」の教訓は、「スキルマニアになるな」ということです。まず土台となるマインドを持ってから、スキルを身に付ける。経営課題を解決するという点で、経営企画とコンサルタントは同じです。コンサルタントのマインドセットから経営企画部が学ぶことは多いと思います。

知識編:まずは全体像を学ぶ一冊から

──マインドの次は知識ということですが、経営企画の必須知識は幅広そうです。

まず初めに、「戦略としての企業価値」で全体像を学ぶことをおすすめします。

経営企画部は経営トップの頭の中を理解しながら、意思決定をサポートします。その上で必要なのは「事業家思考」と「投資家思考」。事業部の企画業務経験者は、事業家思考を持っている方もいらっしゃると思います。そこにファイナンスの視点も組み合わせることで、企業価値の創出につなげることができます。

──まず体系を学んでから、個別に入るのですね。

テーマ別のおすすめはこちらです。自身の業務の関連性の高さから選んでも、いまの自分に足りない知識を補うという考え方でも構いません。実践を通じて知識を知恵に昇華するイメージです。

会社の向かう先(ミッション・ビジョン・バリュー):「理念経営2.0 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ

競争戦略・ビジネスモデル:「事業戦略策定ガイドブック―理論と事例で学ぶ戦略策定の技術

ビジネスプロセス(現場力の向上、DX推進など):「ビジネスプロセスの教科書

会計とファイナンス:「「専門家」以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書

官公庁が発行しているガイドラインや白書も参考にすることが多いです。

例えば「価値協創ガイダンス2.0」「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針~イノベーション・マネジメントシステムのガイダンス規格(ISO56002)を踏まえた手引書~」(いずれも経済産業省)はおすすめです。

スキル編:問題解決の王道を学ぶべし

──経営企画のスキルも、幅広いものが求められそうです。

スキルは他部署で学んだことを活かせる場面も多いです。

経営企画部の基本スキルは、問題解決。問題解決の書籍はたくさんありますが、例えば「グロービスMBAクリティカル・シンキング」は、課題をどう見極め、解決するかという王道を学ぶことができます。

私自身、経営企画部に異動してからこの本を再読しました。課題解決を実践する機会は、事業部時代よりも多いと感じています。

そうはいっても読み切れない..四半期に1冊ペースでも大丈夫

──おなかがいっぱいになってきました。これら全部を読まないと、経営企画のスタートラインに立てないのでしょうか。

そんなことはありません(笑)

私自身、「積ん読」になっている本が何冊もあります。肩ひじを張らず、「四半期に1冊ペースで読み進めよう」というスタンスで問題ありません。

──そう聞いて安心しました。最初は分からなかったことが、何度か読み直すと理解が進む、ということもありそうですね。

その通りです。最初から全て理解できる、ということはあり得ません。読書が目的ではなく、そこで学んだことを現場で活かすことが大事です。

経営企画で経験を積む中で、「あの本に書いてあったことって、こういうことなんだ」と気づく。そこで改めて自社の課題を見たときに、「こういうアプローチができないかな」と実践につなげていく。もう一度読み返し、辞書として書籍を使う、というイメージです。

──今日は先輩の本棚の中身をのぞくことができて、とても得した気分です。

私が読みきれていない良い本がもっとあるはずです。他の経営企画の方がどんな本をおすすめするのか、とても気になりますね。

(見出し画像:荻野沙椰・小原峰彦)

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