誰も語りたがらないメタバースの不都合な真実

2024年4月20日
全体に公開

前回の記事では、「やばい」発表から1年で起きたことについてお話しました。それは、Fortnite(FN)のクリエイティブ2.0「UEFN」(Unreal Editor for Fortnite)の発表後に起きたFN界隈の変化です。

UEFNの登場により、より自由度の高いマップ制作が可能になり、FNに新規参入する企業や自治体が増加しました。

これはとても良い動きですが、彼らが直面するであろう問題が2つあります。

それが「集客」「マネタイズ」です。

これらの問題は、2024年現在メタバースに取り組む企業や自治体が抱える恒常的な悩みで、FNだけではなく、ゲームメタバースに参入した人が必ず直面する慢性的な課題でもあります。

「集客」の悩み

「FNは世界中で5億人にプレイされています!」という売り文句にもかかわらず(私もよく使いますがw)、企業や自治体がオリジナルマップを制作して公開しても、それだけで必ずしも大勢の人が集まるわけではないという問題です。

「FNのこのゲームに何万人アクセスがあった!」という話題がありますが、その実際の集客の大部分は、EpicGamesによるFN内のおすすめ(ディスカバリー)にピックアップされることに大きく依存しています。ピックアップされた場合は何十万人もの人が集まりますが、そうでなければほとんど来場者がいません。

Fortnite内でEpicGamesよりピックアップされているゲーム

ピックアップされるかどうかが集客の鍵であり、そのきっかけをつかめないと集客が難しいという構造的な問題があります。EpicGamesは外部からの集客を優遇してスコアリングするアルゴリズムを導入していますが、それだけでは十分な集客が得られないことが分かっています。

さらに、インフルエンサーを利用した集客方法やペイドプロモーションにも規約の制限やそもそものCVハードルが高いといった限界があり、残念ながら今のところ有効な手段とは言えません。

「集客」の悩みの解決は、ある意味メタバース時代の幕開けのきっかけになるレベルのキラーアイディアになるかと思います。

※補足ですが、それでもUEFNでのメタバース作りが他の方法に比べて集客面で優位であることに変わりはありません。FNで新しいマップを公開することは、新しいアプリを作ることや、独立型でゲームをゼロから作ることに比べれば、開発および集客のハードルは圧倒的に低いです。また、新しいアプリなどは1000ダウンロードしてもらうことすら大変で、さらに継続率や直帰率などにも悩む必要があるので、FNよりもはるかに難題に直面してしまいます。

「マネタイズ(収益性)」の悩み

FNマップ制作をしてマップを公開していろんな人に遊んでもらえれば「エンゲージメント報酬」というEpicGamesから報酬を得られる仕組みがあることはよく知られています。これは再生数があがればあがるほど報酬がもらえるYoutubeに仕組みのイメージは似ており、ゲームが遊ばれた回数や時間、リピート数などがブラックボックスにスコアリングされ、スコアに応じた報酬を得ることができます。なかには年間で数億円を稼いでいるクリエイターも存在し、非常に魅力的な世界です。このレベルは夢のまた夢・・・の話だとしても、個人が月に5万円を稼ぐレベルは難しくないと思います。ちょっとうれしいくらいの額ですし、メタバースやゲーム作りの民主化を進める革命的な素晴らしいサービスだと思います。

しかし、企業が一事業として満足できるほどの収益かというと、そうではありません。「UEFNのエンゲージメント収入で年間数億円稼げる可能性がある」という甘言は「Youtubeをはじめたらヒカキンさんのように数億円稼げる可能性があるので、はじめましょう」ということと同義です。どちらも100%無理、という話ではありませんが、簡単なことではないことは想像できるでしょう。夢のある話ではあると思うので私個人的には好きなのですが、企業のメタバース担当者が、メタバースでの収益性について、社内の各部署や上層部に胸を張って説明・説得する蓋然性があるかというと、現実的には皆無でしょう。

上述したメタバースの集客にも密接に関連する問題点です。

これらの問題に直面したときに、ある会社は問題をスポイルしながら進め、ある会社は戦略的にメタバース業界からピボットし、ある会社は真面目に可能性の高い方法を模索しチャレンジを続けながらアンサーを探し続けています。

次回はメタバース施策を成功に近づけるうえで「絶対にやってはいけないこと」

メタバース最大の悩みである「集客」と「マネタイズ」に対して、夢や希望がないわけではありません。実際にいくつかの解決策が存在しますので、次回はこれらの悩みを解決するためのポイントについてお話しします。

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