英ジャガー・ランドローバー ハンソン社長と対談|好調なSUVから電動化まで

2024年4月20日
全体に公開

トピックスオーナーの前田謙一郎です。 

今回はいつもとは少し異なったスペシャル記事をお届けしたいと思います。先週、イギリスの高級自動車ブランド、ジャガー・ランドローバー・ジャパンマグナス・ハンソン社長とお会いする機会があり、最近のビジネスや今後の電動化やEVについて色々話をすることができましたので、その模様をお届けしたいと思います。

ジャガー・ランドローバー ・ジャパン マグナス・ハンソン代表取締役社長

いきなりですが、ランドローバーを代表する人気車種は以下の007「No time to die」にも登場するディフェンダー。この007のテーマと悪路を走破するディフェンダーは何回見ても飽きません。無骨なディフェンダーの魅力とブリティッシュネスが詰まった個人的に大好きな映像なのでまず紹介させてもらいました笑

自動車に詳しくないと分かりにくいですが、ジャガー・ランドローバーはイギリスを代表する高級車ブランドで、一つの会社に2つのブランド、ジャガーとランドローバーを抱えている会社です。イギリスの会社ではありますが、現在はインドのタタ・モータースが所有をしています。

ジャガーはお馴染みの車で分かりやいと思います。もう一方のランドローバーの下にはディフェンダー、レンジローバー、ディスカバリーなどの様々なSUVモデルを展開しています。2023年には今後のジャガーの電動化を見据え、CIを「JLR」としたとも発表されました。

画像:https://www.jaguarlandrover.com/

ブランドの概要を知っていただいところで、ここから対談内容をお伝えしたいと思います。

最近の調子は!? ランドローバーが大人気

前田:お久しぶりです!先週のフォーミュラEは楽しかったです。他記事で日本でのジャガー・ランドローバーの販売が昨年比で81%増加したと聞いたりしました。最近の調子はどう!?

マグナス:
すごく好調。僕たちは長期的な成長軌道に乗っていて、特にランドローバーは、過去10年間で日本で10倍以上の成長を遂げてる。そのパフォーマンスに満足してるし、お客様からの需要もますます増えている。

 先週は東京でフォーミュラEがあり、ジャガーブランドにとってもエキサイティングな週だった。ジャガーチームのパフォーマンスは少し残念だったけどね・・(現在、チームランキングは首位と好調だが、東京E-Prixでは表彰台に届かなかった)

東京E-Prixでのジャガーマシン 画像:Getty Images 

前田:そう!ランドローバーの成長やジャガーのFormula Eでの活躍などブランド全体が良い方向に行ってるのを感じる。特に販売好調の背景とか要因はどう考えてますか?

マグナス:
まずは、半導体とサプライチェーンの回復。現在は通常のリードタイムで車を納車できてる。そして昨年の成長は、ランドローバーのブランド強化、しっかりとしたディーラー網、そして色んなモデルの魅力が反映された結果だと思っている。

世界で人気のディフェンダー 画像:https://www.landrover.co.uk

例えば、ディフェンダーは日本でも大ヒットしてるけど、2019年のラグビーワールドカップ決勝での発売以来、すごく人気が出て、毎年モデルごとに成長してる。第5世代のレンジローバーと第3世代のレンジローバースポーツも、新モデルになりこれまでにない新しいお客様が購入もしている。

新車はもちろん、ブランド力のため中古車バリューも高い。いわゆる大量在庫、大幅値引、「新古車あります」タイプのビジネスではなく、押し売りではないビジネス。そのような方法では、長期的に持続可能なブランドやビジネスを築くことは不可能だしね。

フラッグシップのレンジローバー 画像:https://www.landrover.co.uk

前田:確かにブランドが強ければ引き合いはあるし、無理な値下げをして台数を稼ぐ必要もないですね。そのランドローバーやレンジローバーが日本で人気なのはどうして?

マグナス:
ランドローバーはユニークなブランドストーリーがあるし、本当の意味で唯一のラグジュアリーSUVメーカー。他の多くのブランドもSUVを作ってるけど、殆どが人気があるし、ビジネスと利益のためだと思う。

一方、僕たちランドローバーは1947年からSUVを作っていて、日本のお客様は僕たちが本物だということをよく理解している。もちろんディフェンダーやレンジローバーファミリーのデザインやモダンラグジュアリー、性能が他のSUVとは一線を画しているのも理由であると思うよ。

あと、日本では英国文化がすごく受け入れられているのも一つの理由。イギリス皇室、音楽、ファッション、そしてロイヤルワラント(王室御用達。日本でいう宮内庁御用達的な称号)まで。英国の伝統と格式は日本でも似たような部分があり理解しやすいと思う。

ロイヤルワラントを受けたブランド 画像:www.telegraph.co.uk

気になるブランドの電動化やEVは?

前田:みんな気になっている電動化やEVモデルについてはどう?

マグナス:
そうだね、今年は全てのランドローバーモデルにPHEVの設定をする。偉大な一歩で僕たちのモダンなシステムでは60km以上のEV走行が可能で、エンジンとBEVのブリッジモデルになる。

すでに聞いた事がある人もいると思うけど、最初のランドローバーのBEVモデルもアナウンスされていて、これはゲームチェンジャーになる。

前田:そう、僕もレンジローバー Electric、フル電動SUVにはすごく期待しています!フルサイズのラグジュアリーSUVにはパワーと静粛性の両立が必要だし、BEVはとてもあってると思う。このレンジローバーEVについて話せることは?

Range Rover Electricのティーザー 画像:https://www.landrover.co.uk

マグナス:
ティーザーキャンペーンは少しずつ始まっていて、これまでのレンジローバーの歴史の中で最も洗練されたモデルになる。ここがすごく重要。EVということではなくて、フラッグシップのレンジローバーを提供することに意味がある。

多くのお客様はまずはレンジローバーやレンジローバースポーツというモデル自体を選んでいて、エクステリアカラーやインテリアを選ぶようにEVという選択肢もある。これが僕たちのブランドの在り方だ。

前田:フラッグシップモデル、今後もすごく楽しみにしています。

ところで、マグナスはスウェーデン出身でよく知っていると思うけど、同じ北欧のノルウェーなどは大きくEVにシフトしている。(2024年1月時点で、ノルウェーのEVの市場シェアはすでに82%)

世界のEVシフトは継続するけど、一部ではEVへの投資の延期する会社もある。今後の自動車業界についてはどう見てますか?

ジャガー・ランドローバーのオフィスにて。ブランドの現在から将来までカジュアルに話をすることができた

マグナス:
地球温暖化や環境規制を考慮するとゼロ・エミッションへのシフトは長期的には避けられない。そしてそれは世界どの国でも同じで、まずはBEVがその未来を切り拓き、将来的にはFCEV(燃料電池車)も重要な役割を占めると思う。

でも、世界の国や地域にはそれぞれのエネルギー事情、政策、インフラや規制があり、ある程度はそれらに合わせた商品を展開していくことが大事だ。

前田:確かに、商品ポートフォリオは重要だと思う。ところで以前からニュースにもあったように、ジャガーは今後は完全電動化ブランドへ進むんですよね?

マグナス:
そう。ジャガー・ランドローバーは2039年にネットゼロカーボンを目指していて、2025年にはジャガーは完全な電動ラグジュアリーブランドになり、モダンラグジュアリー界の新しいスタンダードになる。

全く新しいジャガーのプロダクトラインナップとゼロからのデザインはこれまでにないようなドラマティックなEVになると確信しているよ!今年の後半には日本でも色々なニュースを出せると思うし、今、日本にはUK本社から来たジャガー・ブランドディレクターがいるから話を聞いてみるのもいいと思う。

新しい完全電動ジャガーのティーザーイメージ 画像:https://www.jaguarlandrover.com/

前田:全く新しいモダンラグジュアリーなBEV。確かに今のマーケットではなかなか無いポジショニングですね。BEVは更なる普及のため低価格モデルへシフトしてるけど、高級モデルの市場もさらに拡大しそうですね。また、今後も色々教えてください。

伝統と革新、JLRの今後に注目したい

マグナス社長と話ができてブランドの方向性を直接聞く事ができたのは貴重な機会でした。唯一無二のSUV、伝統と革新をルーツに持つジャガー・ランドローバーならではの電動化とブランディング。

現在、EV市場はキャズムを超えてより大衆層へ進むべく多くのブランドが低価格のモデルの発売にしのぎを削っていますが、高級車ブランドにはそのポジショニングにあった電動化の進め方があるように思います。

同時に車としてのテクノロジー目線だけではなく、個人的にも音楽、ファッションなどのイギリスカルチャーと相まったジャガー・ランドローバーにはこれからも注目したいと思います。それでは、次のトピックスでお会いしましょう。

いつも気さくに話してくれるマグナス社長。対談、有難うございました。

トピックスオーナー:前田謙一郎 

マーケティングコンサルタント&自動車業界アドバイザリー。テスラ・ポルシェなどの外資系自動車メーカーで執行役員等を経験後、2023年Undertones Consultingを設立。

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