福島が想像以上の場所だった。

2024年3月11日
全体に公開

2011.3.11 東日本大震災

この時期になると、メディアやネットではまだまだこの話題が持ち上がる。

当時私は小学5年生であったが、学校での訓練ではない避難や計画停電を目の当たりにし、大変なことが起きていることだけはわかった。

それから12年後の2023年9月、南相馬市に1ヶ月間滞在をする機会を得た。

そもそも私は、津波や原発事故によって甚大な被害を受けた福島県の浜通り(太平洋に面する地域一帯)に、一度も訪れたことはなかった。

被災地と呼ばれていた場所がどうなっているのか、当然わからない。

いざ行ってみると、想像とは全く違う、日本で1番面白い場所が福島にはあった。

福島の今

私が滞在した福島県南相馬市は、東日本大震災による津波や家屋倒壊の被害、原発事故により、2016年7月まで避難指示区域となっていた場所です。

(Googleマップ)

東京から南相馬市までは電車で向かいました。

現地までの道中に、震災の爪痕がそのまま残っているものは何も見当たりません。

唯一見つけたものが、駅に備え付けられている放射線量の測定器です。

筆者撮影

ちなみにこの0.08という数字、外国や国内の都市と比べた時に、低い場合があるくらい普通の数字です。

もちろん伝承館や遺構などの場に行くと、当時の状況がそのまま保存されていたり、資料などが置いてあります。

街中に行くと、言われなければ気づかない、日本中どこにでもあるような景色が広がっています。

もちろん全てが災害前に戻った訳ではありません。

しかし、この13年間の復興のおかげで、ほとんどの人が普通の日常を過ごしているのです。

福島の過去

福島県は大きく3つに分けられます。会津、中通り、浜通り。この太平洋側に面している浜通りの中にあります。

周りの都市には、上に仙台、左に福島市、下に水戸があります。(が、近くのマクドナルドとスターバックスコーヒーまではどうしても1時間弱の時間がかかり、普段都心にいる私が1ヶ月滞在するには中々の環境でした。)

元々は平将門の直系である相馬藩が統治していた地域だったことから、今の地名になっています。

今でも旧相馬藩領と呼び、複数の地域(南相馬市、相馬市、浪江町、大熊町、双葉町、飯館村、葛尾村)からなる地域の一部です。

現代で旧〇〇藩領と呼ぶ地域はあまり多くはありません。

なぜならこの地域には、相馬藩のお殿様がまだ存在しており、過去の歴史が色濃く残っているのです。

相馬藩34代当主 相馬行胤氏です。現在はこの地域にて、新しい民主主義の形を自律分散型で作ろうと取り組んでいます。

相馬藩の名残は復興の際にも現れていました。

この地域は過去に天明の飢饉に襲われ、人口減少が一気に進んだ過去がありました。

人口が減少したままでは、国を維持できません。

そのため、1800年頃に移民政策を打ち出します。

浄土真宗からの移民を受け入れることで大成功をし、人口が増加しました。

その後、この地では二宮尊徳の報徳精神が実践されていました。

至誠・勤労・分度・推譲を行うことで、人間が物質的にも精神的にも豊かに暮らすことができるという教えです。

のちに天保の飢饉を迎えますが、報徳精神を実践することで、飢餓で亡くなる人はいなかったそうです。

飢饉や報徳精神、移民政策の歴史がすでにあったからこそ、東日本大震災後の復興ができたという人もいらっしゃるそうです。

日本最後のフロンティア

私が滞在した場所は南相馬市小高区にある、小高ワーカーズベースという施設です。

この施設の代表は先ほどご紹介した記事にも出ている和田智行さんです。

施設としては、コワーキングスペースと宿泊所がセットになっているものです。

施設の機能とは他に、小高ワーカーズベースには『地域の100の課題から100のビジネスを創出する』というミッションが存在します。

目の前の課題の解決を「自分たちがコントロールできない誰か」に委ねるのではなく、持続的に解決するためのアクションを自らが起こす。1000人を雇用する1の事業に身を委ねた画一的な地域ではなく、10人を雇用する100の事業が個性を放ち、多様な価値観が光り輝く地域でありたい。そんな風土を醸成するために、私たちは事業を生み出し続けます。
(引用:小高ワーカーズベースnote https://note.com/odakaworkers/n/n82b68f3dde44)

一度ゼロになってしまったこの地域を新しく作り上げるという目標を掲げています。

こちらが当時思い描いた将来の様子です。

筆者友人撮影

いざこの地域を回ってみると、ほとんどが実現されているんですね。

街では馬が普通に闊歩している様子を見ることができ、酒蔵が何個も出来上がったり、ロボットテストフィールドがあったりします。

これを実現するために大人たちが本気で、自分達の理想に向かって走っているのです。

やらされているのではなく、やりたいからやっている。もちろん自分のやりたいことだから本気で取り組んでいる。

そんなかっこいい大人を見ているだけで、わくわくします。

しかもそんな憧れるような大人がたくさんいます。

そんな大人の和田智行さんと高橋大就さんがNewsPicksのイベントに出られていた際のレポートがこちらです。
アーカイブもありますのでよろしければどうぞ

新たな事業を立ち上げる大人が増えているため、労働力が必要になってくるわけで。そこに私のような大学生が関わり始めると、貴重な労働力になることもしばしばです。

もちろん強制はされず、面白い経験をさせてもらえます。

ある大学生がこの街を一言で表現すると『楽しい地獄』であると言いました。

楽しいことが起こりすぎて、面白いけど大変だと。

学生たちは激しく同意をし、大人たちは爆笑です。

なぜこの地に惹かれるのか

楽しいことが起こるというのは重要な要素だと思います。

これが田舎だから。ではなくこの地域だから面白いことが各地で頻繁に起きているのだと。

この地域には若者や移住者が数多く集まっています。

それは、この町には余白があるから、関わりしろが多くあるないう人がいます。

何かをやりたいと声を上げると、「お、やってみなよ」とか、「応援するよ」など言ってくれ、本当に実現します。

震災でゼロになったところから、元に戻さないといけない、前に進まないといけない。

そんな状況にあったからこそ、現地の方も応援してくれるし、感謝してもらえます。

そんな環境を面白いと感じてやってきて人がいて、その人たちが面白いことをやっているからまた次の人がやってくる。

この循環を生み出せているのが今の福島です。

以上、私が感じ、今も関わり続けている理由です。

今は東京で大学生をやらなければならないためまだまだではありますが、福島にいる面白い大人たちの後を追えるように、追いつけるように鍛えていきたいと思っています。

前回の記事では第5期Student Pickerの鈴木恭平さんが、日常に潜む、人間を欺くデザインについて紹介してくださいました!

企業がどう消費者を扱うかなどがわかる方法を知れるので、よかったらご一読ください!

(カバーフォト:筆者撮影)

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