インドネシア大手財閥CVC、Living Lab Venturesが日本進出
インドネシアの大手財閥Sinar Mas Group(シナルマス・グループ)傘下のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、Living Lab Venturesが日本進出を発表しました。
シナルマス・グループと言えば、ウィジャヤ・ファミリーが経営するASEAN最大級のコングロマリット(複合企業体)で、製紙・パームオイル・金融・不動産開発と、4つのコア事業を展開しています。
そんなシナルマスは複数の日本企業と様々な分野と協業しているなど、実はかなり日本と馴染み深い財閥なんです。詳しくみていきましょう。
サムネイル画像:インドネシアの首都ジャカルタの様子(UnsplashのAfif Ramdhasuma)
☕️coffee break
シナルマス・グループは1962年に中国系インドネシア人のエカ・チプタ・ウィジャヤ氏によって製紙事業からスタートしました。
当時のインドネシアは独立から約20年間が経過し、共産主義への傾倒が強まったスカルノ政権が不安定になっていました。1967年にはスハルト氏が2代目大統領に就任し、政治的・経済的・社会的に大きな変化が起きていました。
スカルノ政権下では経済ナショナリズムにより、インフレ・財政難に直面していたため、スハルト政権では経済の安定化と成長・輸出産業の強化が掲げられていました。
その結果、国内のビジネスと教育が成長し、輸出事業が促進されました。シナルマスはこの機会を活用して、大量の木が必要な製紙事業において、インドネシアの豊かな森林資源を武器にASEAN最大の製紙会社にまで成長させました。
そして、70年代後半には政府が農業とプランテーション産業の開発を奨励していたことを受け、パーム油プランテーション事業にも参入しました。
これもインドネシアの気候と土地がパーム油の生産に適していることが強みとなり、海外需要にも対応しながら事業を拡大していきました。
外貨を稼ぎ、順調に事業拡大していた80年〜90年代。ついにインドネシア国内でも金融自由化(銀行業に競争が導入)、本格的な経済発展が進み始めました。
これを受け、シナルマスは金融・不動産(都市開発)にも参入し、現在まで4つのコア事業として展開しているのです。
🍪もっとくわしく
現在、シナルマス・グループは創業者の孫(第三)世代へと事業が承継されています。
第3世代の創業家のミッションはこれまで拡大してきたコア事業をデジタル化で変革していくことです。
その一環として、テクノロジー・スタートアップへの投資・協業を目的とするCVCが設立されました。
- 2017年設立:SMDV(Sinar Mas Digital Ventures)
👉シナルマス・グループとともにデジタル・エコシステムを構築することを目的としたCVC。主にFinTechやEC・マーケットプレイスを中心に投資しており、代表的な投資先には日本発のFinTechユニコーン「Opn(旧:SYNQA、Omise)」があります。
- 2018年設立:EV Growth
👉東南アジア拠点でシリーズB以降のスタートアップを投資対象とする2億5000万ドル規模のグロースファンド。インドネシアのシードステージで実績豊富なEast Ventures、ITに知見のあるLINEヤフー傘下のZ Venture Capital、財閥として大手企業とのネットワークがあるSMDVの3社で運営しています。
- 2022年設立:Living Lab Ventures←今回日本に参入
👉シナルマスの傘下でインドネシア最大の総合不動産会社、Sinar Mas Land傘下のCVC。現在グループ一体となり、2050年に居住人口300万人を見込む、BSD City(ジャカルタ郊外の都市)の開発に取り組んでおり、そこで包括的なデジタルエコシステムを構築することが目的です。
投資領域はスマートな都市生活をサポートすべく、不動産テックを中心に、スマートテクノロジー(スマートシティ)、デジタルライフ(EC、ソーシャルネットワーク)、モビリティ分野に注力しています。 インキュベーション拠点「Living Lab X 」も運営しているため、スタートアップが迅速な開発・実証に取り組むことをサポートすることが可能です。
「Living Lab Venturesのアプローチ」
日本進出においては、JETROと連携しながら、日本からインドネシアへの進出を目指すスタートアップの支援を狙っています。
🍫ちなみに
日本企業でシナルマス・グループと協業している事例はこんなにもあるんです。
「シナルマス・グループと日本企業の主な協業事例」
⚪️製紙事業
・ユニ・チャーム(現地法人の共同経営)
⚪️不動産
・双日(工業団地開発)
・伊藤忠商事(工業団地、分譲マンション開発など)
・イオンモール(商業施設の共同運営)
・三菱商事(BSD Cityの開発)
・阪急阪神不動産(商業施設・オフィスビルの運営)
⚪️金融
・伊藤忠商事(P2Pレンディング事業)
・住友商事、三井住友銀行(オートファイナンス企業の共同経営)
・三井住友海上火災保険(生命保険事業)
・宝印刷(日系企業のインドネシア証券取引所への上場支援で業務提携)
⚪️その他
・資生堂(2014年に合弁会社を設立)
このように、シナルマス・グループと日本企業との間では長きにわたって、幅広い分野での協業が行われています。
巨大なインドネシア市場で成功する日本のスタートアップを生み出すために、Living Lab Venturesはどのような企業に投資し、協業事例を生み出すのか、要注目です。
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