今年のSuper Bowl LVIII<米NFLアメフト決勝戦>で爆額CMを仕掛けたフード企業

2024年2月20日
全体に公開

すっかりコラム寄稿が出来ず仕舞いでしたが、久しぶりの寄稿となります。

そんな今回の「気まぐれ短編コラム」、読者の皆様の中には「…?」なテーマかもしれませんが、それは、全米一(いや、世界一?)放映料がバカ高いと言われる、全米アメフト決勝戦のテレビCMと新興フードブランドに関するものです。毎年一回しか訪れない興味深い行事ですので、簡単に触れてみました:

NFL(全米プロアメフトのリーグ)決勝戦であるスーパーボウルの広告料の凄さを改めて確認

このアメフト全米一を決めるSuper Bowl のCM放映料ですが、30秒のCM放映料は概算で650万〜700万ドル(約9.5億円〜10.5憶円程度)と見積もられています。

今年も主要地上波ネットワークは全米大手のCBSでしたが、彼らが前回放映したのは2021年。この時は日本のメリカリが放映権を獲得したことで日本では話題になりましたね。当時は30秒の放映料が550万ドルと言われており、この3年間でさらに高額化をしているということとなります。アメリカ人はオリンピックは日本ほど興奮しませんが、アメフトは、MLBやNBA、さらには北米アイスホッケーNHLのような「先手4勝」のものと比べて「一発勝負」であり、一年間で一番テレビが盛り上がるイベントであることが、この放映料でお分かりいただけるかと思います。

景気はそっちのけでひたすら爆上がりし続けるスーパーボウル中継時の広告放映料!

https://www.reddit.com/r/dataisbeautiful/comments/1alix2q/oc_cost_of_a_30second_super_bowl_ad_over_time/?rdt=40139

「景気そっちのけ感」がわかりやすい、S&P500株価指数とスーパーボウルのCM放映料のトレンド比較(Forbesより)

https://www.forbes.com/sites/mikeozanian/2016/01/21/super-bowls-ads-up-six-times-faster-than-stocks-past-50-years/?sh=4682091e4d2e

*ご参考:

今年の主なCM提供会社中、食品メーカーはいくつ?

さて、今年のCM放映企業を見ると、全部で59本のCMが放映されたそうです(同一企業が複数の商品を放映していますので、59社ではありません)。そうした中、主な「食品メーカー」は以下の8社でした。家庭やホームパーティーで食べ物や飲み物を楽しみながらテレビ中継を見ていることを想定すれば、食品メーカーにとって絶好のCMの機会のはずですね:

ケロッグ(Pringles)

Mars Wrigley (M&M's)

Pepsico

Oreo

Frito-Lay (Doritos)

A-B InBev (バドワイザー、バドワイザーライト、Michelobブランド)

Molson Coors

Dunkin’ Donuts <※因みに、一番話題になったCMです。Ben AffleckとJennifer Lopezが共演>

ご参考:

食品関連の「新興組」が広告を仕掛けた会社はこちら

では、「新興フードブランド」「フードサービス」は含まれていたかと言えば、今年は(筆者が見落としていない限り)以下の3社でした:

Poppi

2015年に創業された、「プレバイオティクス・ソーダ」を販売する「従来の炭酸飲料より体に悪くない」ドリンク。ここ数年で引き続き堅実に伸びている市場ですが、粗利率が極めて低いと見られており、勝ち組VS.負け組がはっきり分かれる、少数の勝ち組だけが生き残るであろう市場。彼らは、シリーズBのグロース段階の未上場ブランド(スタートアップの域はもう超えている?)。そんな「飲料ブランド」が、ここまでの費用をかけている点は注目に値します。

DoorDash

今回放映された60近いCMの中でも一番「評価・評判」の高かったCMの一つとされています。わずか30秒以内に彼らの取り扱う商品やサービスの差別性をかなり瞬間風速的に視聴者の視覚・脳裏に焼き付く工夫が凝らされていた、と、いろいろなサーベイで言われています。

フードデリバリー系は、同社を含む一部の勝ち組・ユニコーンへの大型投資がそろそろ一巡し、飽和状態な市場とみられるだけに、彼らがここで多額の費用をかけたことは興味深いです。

ご興味あれば、以下のリンクをごランクください(ただ、英語です)。

Uber Eats:

言わずもがな、Uber Eats。こちらもDoorDashと並ぶ、「フードデリバリー」では勝ち組でしょう。Uber Eatsのスーバーボウル特注CMは、(他のCMと同様)起用するタレントの話題性やその組み合わせの特徴(20年近い昔に超話題となったテレビ番組シリーズの共演者が共演)、ストーリー性が脳裏に焼き付く内容です。

ここまで高額なCM放映料を拠出する魅力と可能性

企業のマーケティング・PR担当者はいくつかの理由から、この高額費用を正当化することが可能と捉えています。

まず第一、「一国民が、一度に見る潜在的かつ唯一な市場機会」であること。

"同じ30秒という単位時間で1億人にリーチできる瞬間はそうそうない"
‐米企業PR単層部門より

スーパーボウルは、これほど多くのアメリカ人が同じものにチャンネルを合わせる数少ない機会です。さらに、今年(2024年2月11日)のスーパーボウルは2014年に記録した平均視聴者数1億1580万人の記録を更新したと言われています。

さらに、こうした視聴者数だけにその潜在的な魅力は留まらないと考えられます。PR担当にとり、今やデジタルな世の中でプロモーション活動の肝となっているソーシャルメディアや他のメディアが自社のCMについて大量にバズらせてくれながらいろいろと取り上げて書いてくれることが確実であり、それによって生まれる話題性など、あらゆる付随的な波及効果も織り込むことで、従来の広告の概念では起こり得なかった追加的な費用対効果が期待である稀有な「30秒」であることです。これらは実に数億ドルの価値があると見積もられています。

DXの世界で数多いメディアツールが蔓延る中、これほど「1点に集中する時間帯」はない大きな魅力であり、破格な倍率であるということになります。

*ご参考:

https://www.thestreet.com/sports/super-bowl-commercials-cost-millions-heres-why-advertisers-think-its-worth-it

まとめ

今年も、莫大な放映料に相応しい、超豪華なキャストによるCMばかりで、試合はそっちのけで今年は2年ぶりに現地でCMを堪能することが出来ました。バカ高い放映料を支払ってまでCMを流すスーパーボウルのCM枠は、「フードテック」企業にとってはあまり縁のない世界ではありますが、毎年数社はチャレンジしてくる点は興味深いものがあります。

さて、来年(2025年2月初旬)はどんな新興フード企業がCM放映を決断するか、それそれで楽しみにしておきたいと思います。

(蛇足ですが、肝心のスーパーボウル、筆者が応援する地元サンフランシスコの49ersが4年前の雪辱を果たしてくれるものと、「地元」で応援していましたが、野球でいう「サヨナラ負け」してしまいました。このコラムを書いている今尚ショックから立ち直れません。。。)

(カバー画像:米National Football League公式ロゴマークを引用)

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