【2024年予測】2023年海外フェムテックを振り返ってわかった3つのこと

2024年1月7日
全体に公開

1.この記事でわかること

・2023年海外フェムテック資金調達トップ10

・2024年海外フェムテック予測

・フェムテックの市場調査に便利なWebサイトの紹介

2.2023年海外フェムテック資金調達トップ10

2023年海外フェムテック資金調達トップ10を、Femtech Insiderの公開情報を参考に紹介する。利便上、1ドル140円、1ユーロ155円、1ポンド180円で換算している。

Femtech InsiderおよびPRTIMESの記事を元に筆者が作成

1位:🇰🇷Lunit(210億円)乳がん検査

2013年に韓国で創業。2022年7月に、KOSDAQ(コスダック)市場に上場し、がんの診断・治療向けのAI活用ソリューションを開発している。

FDA(米食品医薬品局)とCEマーク(欧州の法律に適合していることを宣言した証)を取得しており、主力製品Lumit INSIGHTシリーズは、40カ国以上の病院や医療機関で臨床使用されている。

韓国・ソウルは、フェムテックに特化したアクセラレーターが立ち上がっており、これから徐々にフェムテック企業が増えてくる見込みである。韓国のフェムテックを取り巻く背景については、こちらの記事も参考にしてほしい。

2位:🇺🇸Kindbody(175億円)不妊治療プラットフォーム

2018年に米国で創業。オンライン・オフラインの不妊治療クリニックを運営している。個人向けはもちろん、100社以上の企業に対し、法人向け福利厚生サービスも展開している。

卵子凍結サービスを身近に感じてもらうため、おしゃれなポップアップトラックで無料の妊よう性検査サービスや、妊娠可能性がわかる検査で卵子凍結の成功確率がわかるシュミレーターを提供。

遺伝子解析やクリニックなど次々に買収し、遺伝子検査、卵子・受精卵凍結、体外受精までの一気通貫サービスをシームレスに提供できる体制を整えている。

若年層の取り込みが上手な部分は、日本も見習いたい。

3位:🇺🇸Gynesonics(93億円)子宮筋腫の治療医療器具

子宮筋腫の治療に使用される医療機器を開発し、FDA(米食品医薬品局)の認可を受けている。

子宮筋腫は、婦人科の病気の中で最も多いと言われる。子宮の壁(筋層)にできる腫瘍で、大きさは米粒ほどのものから、人の頭ほどになるものまでさまざまだが、不妊や流産の原因にもなるともいわれている。

子宮筋腫の除去は、回復に時間がかかる子宮摘出術などの医療処置に限定されてきた。Gynesonicsの技術は、45分の外来手術で筋腫を除去し、ほとんどの患者が翌日には通常どおりの生活を再開できる。

子宮筋腫の治療は、症状の程度、筋腫の大きさやできた場所、今後の妊娠・出産予定などを考慮したうえで、治療方針が決まる。同社の製品が発展することにより、治療の選択肢が広がることに期待したい。

4位:🇬🇧Peppy(63億円)福利厚生プラットフォーム

英国で従業員の福利厚生プラットフォームを展開しており、日本のSony Innovation Fundも出資している。今回の資金調達で、米国市場への拡大を行う。

Peppyを創業した際、従業員の福利厚生としての「更年期障害サポート」は世界初だったが、更年期分野の関心がイギリス全土で広がり、今ではイギリスの中学校では更年期障害についての授業も行われている。

国の動きをいち早くキャッチし、ビジネスを広げた一例と言える。

5位:🇩🇰🇺🇸Freya Biosciences(53億円)不妊治療

デンマークのコペンハーゲンと、米マサチューセッツ州ボストン両拠点に本社を置くバイオテクノロジー企業。日本のコランダム・システム・バイオロジーも出資している。

同社は、体外受精(IVF)を含む生殖補助医療(ART)を受けている「膣内微生物叢異常」がある女性の不妊症の治療を目的とした「膣内微生物免疫療法」の開発を進めている。

体外受精の需要が特に高いと言われる、日本や韓国での事業展開も計画している。

6位:🇺🇸Embr Labs(49億円)更年期ホットフラッシュ軽減デバイス

更年期女性向けのホットフラッシュ軽減デバイス「Embr Wave2」を販売している。

手首の内側の皮膚に冷却または温める感覚を与えて、自立神経系にアクセスすることで、ホットフラッシュの緩和・ストレス管理・睡眠の改善を促している。

世界最大級の「ほてりデジタルバイオマーカー」を作成し、機械学習を利用し、人が感じる前にほてりを予測できるアルゴリズムを開発した。脳に信号を送り、ほてりを事前予測、緩和するデバイスとなっている。

7位:🇺🇸Diana Health(47億円)妊産婦ケア

病院や医療システムと連携し、メンタルヘルスや妊娠・出産・産後ケア、ウェルネスコーチングを対面およびテレヘルスで提供している。

米国では、妊娠関連の死亡は過去25年間で2倍以上に増加し、他の先進国よりも多くの女性が、出産で死亡している。

同じくニューヨークで、妊娠・出産・産後をターゲットに、対面とテレヘルスで包括的にサービスを提供するOura Healthも、2023年に1,910万ドルの資金調達をしており、米国での妊産婦ケアが拡大していることが伺える。

8位:🇺🇸Herself Health(46億円)65歳以上の女性向けプライマリケア

2022年アメリカ・ニューヨークで創業され、2023年は2度の資金調達を実施。65歳以上の女性向けに検査・投薬・画像診断・手術など総合的なアプローチで、患者ケアを実践している。

65歳以上・700人以上の女性にインタビューを実施し、女性に合わせた包括的なプライマリケアサービスの必要性を実証しており、納得性も高い。

同社のインタビューによると、この年齢層の女性たちは、自分たちの悩みに医師が耳を傾けず、女性特有のニーズが理解できない医師に遭遇する悩みを抱えているとのこと。

筆者が執筆した記事でも、女性と医師との意思疎通がうまくいかない事例を紹介している。日本でも少子高齢化社会を迎え、必要とされる分野だと実感している。

https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00037/101300012/?P=1 を参考に筆者が作成

9位:🇺🇸Octave Bioscience(42億円)多発性硬化症の診断

自己免疫疾患は、免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気である。原因は不明だが、最も一般的な自己免疫疾患のひとつが多発性硬化症(Multiple Sclerosis)である。

多発性硬化症は、欧米の白人に多いと言われており、女性がこの病気を発症する可能性は男性の4倍と言われている。

多発性硬化症の診断にはMRIや髄液検査がある。同社は血液バイオマーカーや高度な画像処理機能を統合し、医療従事者に対して、患者の疾患進行状況を包括的に把握できるような仕組みを提供している。

この仕組みにより、医療従事者や患者は、個別の疾患管理や治療計画が立てられるようになった。2022年後半に発売後、すでに全米の権威あるクリニックへサービス提供されている。

10位:🇨🇦Practice Better(37億円)専門家向けソフトウェア

2016年にカナダで創業。医療従事者などの専門家に対し、顧客をサポートするソフトウェアプラットフォームを提供している企業である。

スケジュールやテレヘルス・支払まで、さまざまな業務内容を管理する「医療従事者向けSaaS」であり、世界15,000人の医療従事者など専門家に利用されている。

2023年7月には、カナダを拠点する医療従事者向けに栄養計画ソフトウエアを提供するThat  Clean Lifeを買収。

プラットフォーム上のケアプランに、栄養計画と食事をシームレスに統合し、医療従事者が顧客に対し、より適切なサポートができるようにしている。

3.2024年海外フェムテック予測

上記は、2022年海外フェムテックの大型資金調達について書いた記事である。昨年と比較すると、婦人科系疾患や更年期分野の大型資金調達が増えたのが2023年であった。

フェムテック市場の広がりとして、月経・生理にはじまり、妊娠・妊活、そして更年期や婦人科疾患の分野へ発展する傾向がある。2023年の大型資金調達をもとに、2024年の海外フェムテック市場を予測してみた。

2024年 海外フェムテック市場予測

①更年期および更年期後のケア

②婦人科系疾患の予防・早期診断などの医療系

③症状などのモニタリング 

日本は2023年、オンライン診療をはじめとする更年期分野の起業が徐々に増えてきたが、婦人科系疾患の分野はまだまだ少なく、日本でトレンドになるのは数年後と推測している。

出典:「女性の健康と働き方マニュアル」をもとに筆者が作成

4.お知らせ:フェムテックデータベース公開

1️⃣【保存版】これを見ればフェムテックが一目でわかる。フェムテックデータベース①

2️⃣【2023年最新版】これを見ればフェムテックが一目でわかる。フェムテックデータベース②

筆者は日頃、フェムテックの起業や新規事業の相談にのる機会が多いが、よく聞かれるのが、「事業を検討するうえで必要なデータや資料がないか?」というものだ。

そこで、Femtech Community Japanでは、フェムテックの市場を知る上で必要となるデータベースを作成した。

「保存版」と「2023年最新版」に分かれており、海外のフェムテック関連サイトや、厚生労働省や経済産業省などの調査結果がまとまっている。フェムテック事業を検討する際の参考にしてほしい。

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