災害時こそDXが必要な理由

2024年1月3日
全体に公開

1月1日に発生した令和6年能登半島地震で被害に合われた方にお悔やみとお見舞い申し上げます。又、日夜、支援活動に関わられている方には心から感謝と敬意を表します。くれぐれもご安全に。

私自身、金沢と東京の二重生活を送っています。地震発生当時、金沢にいなかったので直接的に被災はしていないのですが自宅の様子が心配ですし、友人知人の生活状況は勿論、輪島や穴水は何度も訪れたことがある大好きな街なのでニュースで流れる映像を見る度に心を痛めています。まずは命/安全の確保が最優先ですが、金沢市民として復興支援に積極的に携わって行きたいと考えています。

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昨年末に某優良物流事業者のDX責任者と話す機会がありました。この会社さんは複数の地方都市と災害協定を締結しておられます。一義的には、災害発生時に自社物流センターやトラックを支援物資の供給のために利用出来るようにするのが目的。興味深かったのは、その一義的な目的に加えて有事に備えた拠点跨ぎの業務標準化、更にはDigitalを使った仕事の変革をも目的としているとのことでした(正にDX!)。気合と根性だけでは災害時の兵站に限界があるので、全体最適のシクミを作らないといけない。他方、平時の状態を想定していては拠点単位や部署単位の個別最適を打破するのが難しいと。

必要な場所に必要なモノが必要なタイミングで供給されるのが理想。過去の災害では善意の支援物資が、不必要なモノ/量が不必要なタイミングで届けられるといった報道もありました。

理想的な供給、つまり最小限のリソースで最大の便益を生む支援物資の供給を実現するためには、普段からトラックサイズやパレットサイズといったハード面の標準化に加え、情報伝達や業務手順、作業者やドライバーのAvailabilityや能力データ、入出庫作業データや配送データの収集/蓄積/利活用といったソフト面での標準化が必要条件。理想は企業内のみならず、企業跨ぎで。

パレットサイズの標準化が進まない

アパレルや食品など商品単価が低い商材は売上高に占める物流費比率が高くなりがちです。故に少しでもトラックの積載効率を上げてトラック台数を減らすために「ばら積み」するのが一般的でしたが(パレットを使わずに積み木のように商材を積載する方法)、昨今、パレット利用が注目されています。背景として、2024年問題対策の政府ガイドラインの一つにパレットの活用が挙げられていることがあります。

アパレル卸や食品卸は複数メーカーの商材を扱うので、メーカー間の梱包資材やパレットの規格がバラバラのままだと効率良くパレットを使えません。そこで梱包規格やパレットサイズの業界ごとの標準化がテーマになります。DFL(Design For Logistics)というコンセプトがあり、官民で取り組んでいるのですが、パレット事業者さん曰く「最後は個社個社の希望やメンツが先に立ち、業界標準のような統一化が進まない。」とのことで、現場レベルでは総論賛成各論反対の状況です。

統制社会になることは競争によるサービスレベル向上やイノベーションの芽を摘むリスクが高まりますが、物流のような社会インフラはお互いに手を握ることも大切ではないかと思います。

フィジカルインターネットの世界観

冒頭で書いた災害時の全体最適の実現。これを平時でも実現するのがフィジカルインターネットの世界観とも言えます。政府主導でロードマップも作成されています。

災害対応でも、2024年が迫っても、その実現が難しいので、相当高いハードルだと思いますが、私個人としても実現させたいコンセプトです。

大量生産/大量消費による経済発展、GDPやGDP/Capitaといった指標で豊かさを追い求めてきた現代社会。それ自体を否定するものではありませんし、それ故に様々なイノベーションが起きるのも事実。しかしカーボンニュートラルが注目され、温暖化による災害がこれだけ続くと、立ち止まって持続可能な成長とは何か、今一度考え直す必要があると感じています。

物流は「運ぶ」「保管する」「労働集約的作業」という印象が強いと思いますが、ロジスティクスやサプライチェーンマネジメントの観点で見ると、「最小限のリソースで最大の便益を生む供給システムを構築する。転じてCNやGXに繋がる。」という解釈も出来るはず。物流こそが真に持続的な豊かさと夢を実現するドライバー。2024年問題に端を発し、もっと注目度が高まることを期待しますし、私も高い視座を持って社会課題の解決に貢献したいと思います。

トップ画像:UnsplashのHan Chenxuが撮影した写真

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