MESがあるならWESも!?変わる物流センター運営管理

2023年12月27日
全体に公開

昨今、物流業界のセミナーや雑誌などで目にするようになったWES(Warehouse Execution System)。しかし、WESのカバー範囲が広いせいもあり、その定義はかなり人/企業によってバラツキがあります。WESが注目されている理由の一つとして、物流センターに複数ベンダーのロボットが導入され始めたことが挙げられますが、WESはロボット管理だけを担うシステムではありません。一部の荷主専用物流センターと違い、通常の物流センターは複雑なリソース管理が求められます。製造業のMES同様、機械/ロボットと人材といったリソースをどうやって最大限活用するか、又、その管理手法をどうやって形式知化し標準化するかが、今後の物流センター運営で最も重要なポイントになることは間違いありません。

MESの概要については、こちらのサイトが上手く纏まっています。

物流センターのIT化/デジタル化の歴史

労働集約的なイメージが強い物流センターの運営ですが、実は30年程前からIT化や機械化が急速に進んでいます。WMS(Warehouse Management System)と言われる倉庫管理システムは、元々は基幹システムの一部機能で、その名の通り商品在庫を管理するシステムでしたが、先入れ先出しや進捗管理などの作業支援領域の機能拡張が進み、現在は基幹システムとは別にWMSを単独で導入するのが一般的です。今やWMSはMust-haveのシステム。唯、WMSを使って作業者個人単位での作業実績データや位置情報をリアルタイムで取得出来ている物流現場は限定的です。

WCS、更には統合WCSというコンセプトの登場

通称「マテハン機器」(マテリアルハンドリング。自動倉庫や搬送コンベアなど。)の導入も30年程前から始まっています。WCS(Warehouse Control System)と呼ぶミドルウェアが存在し、上位システムであるWMSから出る作業指示をマテハン機器への作業指示にTranslateする機能を担います。

5年程前までは、大手のマテハンメーカーさんがWMSとWCS、そしてマテハンを垂直統合で提案するのが一般的でした。しかし、amazonがKivaロボット(ルンバの大きいやつのイメージです)を導入した頃から変化が現れます。KivaのようなAGVやAMRと言われる搬送機はほとんどが中国ベンダー製で、ここ5年ほどの間に日本でも一気にマーケットが広がりました。結果、垂直統合で管理されていた物流センター内のシクミに複数ベンダーのロボットやシステムが入り込むようになりました。

ロボットをコントロールするシステムをRCSと呼ぶこともあります。複数のWCSやRCSが混在する状況下、プラグアンドプレーを実現するために「統合WCS」という概念も生まれました。又、これをWESと呼ぶケースも散見されます。

これからの物流センターの運営管理

冒頭、一部の荷主専用物流センターと書きました。システムやマテハンに投資する資金余力があり、自社ビジネスに合わせた専用設計が出来る物流センターは全体の極一部。99%の物流センターは、複雑に絡み合いながらもFragmentedなセンター内外の情報やデータをリアルタイムに収集、蓄積、利活用しなければ、全体最適を実現出来ません。

例えば、従来型のマテハン(WCS)、新しいタイプのロボット(RCS)、作業者(個人の能力値や勤怠情報)といったリソース、WMSの入出荷情報やTMS(Transport Management System)からの輸配送計画やバース管理システムといった外部環境に関する情報やデータ。

このような背景があり業界内でWESが喧しく話題に挙がりますが、私は本当の意味でのWESは現段階で存在していないと見ています。WESを実現するためのデータ標準化と夫々のモジュールの連携といったアーキテクチャー設計が重要。ここにはオペレーションの理解や深い造詣も必要でSIerやITベンダーだけでは難しい。自社製品を売りたいマテハンメーカーやロボットベンダーにとっても難しい。

WESを制する者が物流センター運営を制す。

トップ画像:UnsplashのArno Senonerが撮影した写真     

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