ChatGPT、リリース1年でこんなに変わった
米OpenAIがAIチャットボット「ChatGPT」を2022年11月30日にリリースしてから、1年が経ちました。
当初は無料版での提供だったものの、当時史上最速となる5日でユーザー100万人突破(その後、Metaが提供する「Threads」が5日で1億人突破したため、最速記録は塗り替えられています)。
その後も破竹の勢いでユーザー数を増加させながらも高速で新機能をリリースし続け、世界中から注目を集めています。この1年を振り返っていきましょう。
☕️coffee break
AIチャットボットの歴史は1966年まで遡ります。
最初のAIチャットボットはマサチューセッツ工科大学(MIT)のジョセフ・ワイゼンバウム教授が開発した「ELIZA」です。
心理カウンセラーの代わりにユーザーの入力内容からキーワードを抽出し、それに基づいてプログラムされた応答を生成するもので、深い理解や分析は行われていませんでした。
このELIZAをさらに進化させて、AIチャットボットにおけるターニングポイントとなったのが、1995年にMITのリチャード・ウォレス教授が開発した「A.L.I.C.E.(Artificial Linguistic Internet Computer Entity)」です。
A.L.I.C.E.はELIZAよりも高度な自然言語処理技術を組み込み、幅広いトピックの質問に対して、柔軟な回答や議論ができるようになりました。
2000年代後半からは機械学習とディープラーニング技術が急速に発展し、2017年にはGoogleの研究者らが公開した論文『Attention Is All You Need』で、革新的な自然言語処理モデル「Transformer」が発表されました。
何が革新的だったかを簡単に言うと、"文の長さや複雑さに関係なく、文脈や因果関係を理解できるようになった"のです。
2018年、OpenAIはTransformerを基盤に大規模なデータセットを用いて訓練した大規模言語モデル「GPT-1」を発表しました。このGPT-1、そしてGPT-2の後継として、2020年に「GPT-3」が発表されました。
ChatGPTはこのGPT-3のアップグレード版「GPT-3.5」をもとに開発され、2022年11月30日にリリースされました。
とはいえ、完璧にはほど遠い状態でしたが、ジョークに対応したり、詩を書いたり....
これまでのAIチャットボットよりもさらに難易度の高いタスクを柔軟にこなせるようになったことで、初期の段階から多くの人を魅了したのです。
🍪もっとくわしく
2022年11月30日にChatGPTがリリースされてからの動向を時系列でみていきましょう。
「2023年上半期」
- 1月:アクティブユーザー1億人を突破
- 2月:新機能の優先アクセスなどが受けられる月額20ドルのプレミアムサービス「ChatGPT Plus(以降は有料ユーザーと記載)」をリリース
- 3月:有料ユーザー限定での提供
①画像解析技術などが発展した大規模言語モデル「GPT-4」へのアクセス
②プラグイン(拡張)機能の拡充
- 5月:
①有料ユーザー向けにウェブブラウジング(検索)機能を提供開始
②iOSアプリをリリース
- 7月:
①プログラミングコードを生成する「Code Interpreter」の提供開始
②自分好みの回答を得られるカスタム指示機能の提供開始
③Androidアプリを一部地域から提供開始
- 9月:
①英語に加え、日本語など9ヵ国語への対応を開始
②アプリでの音声会話機能、画像入力への対応を開始
- 10月:
画像生成機能「DALL・E 3」の統合を開始
- 11月:有料ユーザー限定で自分でカスタマイズができるチャットボット「GPTs」の提供開始
(一部省略しているため、詳細はリリースノートをご覧ください)
トラブルでウェブブラウジング機能の一時停止などもありましたが、わずか1年でこれほどの機能拡充などを行ってきたのです。
🍫ちなみに
2024年の初頭には、カスタマイズできる「GPTs」を公開できる「GPT Store」の展開が予定されています。
当初は2023年内の提供を予定していましたが、サム・アルトマンCEOの解任騒動があったことから、リリースを延期せざるを得なくなったわけです。
このGPTsとGPT Storeは、AIキャラクターチャット「Character.ai」の動向を受け、ChatGPTをさらに利用しやすくするために開発していると考えられます。
9月にSimilarwebが公開したデータによると、米国でのChatGPTアプリ版(iOS/Android)の月間アクティブユーザーは約600万人、Character.aiは約420万人。
Webからのアクセス数を合算するとはるかにChatGPTのユーザー数が多いとはいえ、アプリではCharacterのユーザー数が間近に迫っているんです。
これほどユーザーを惹きつけている背景には著名な人物やキャラクターをカスタマイズして、チャットで純粋に楽しむことができるからです。10-20代を中心に週末などの空き時間を利用して長時間利用されています。
業務時間で活用されることが多いChatGPTをさらに利用しやすくするには、Character.aiを参考に特定業務やシーンに特化したチャットボットを開発する必要性を感じたのではないでしょうか。
2024年、OpenAIはどのようなことを仕掛けてくるのか、目が離せませんね。
サムネイル画像:Unsplash/Jonathan Kemper
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