AI時代のゴールドマイナーたち
ゴールドラッシュにおけるビジネスについては、「ツルハシとシャベルを売れ」というお話が有名です。こうした逸話が広がったことで、自らリスクを取るゴールドマイナーではなく、ツルハシ屋を目指す人が増えているような気もします。本日は、AI時代のゴールドマイナーに関する記事です。
「ツルハシとシャベルを売れ」
「ツルハシとシャベルを売れ」という言葉は、1849年に始まったカリフォルニア・ゴールドラッシュを背景にした表現です。この時期、数多くの人々が金を求めてカリフォルニアに殺到しましたが、実際に金鉱を見つけることができた人はほんの一部でした。一方で、これらのゴールドマイナーたちに必要なツルハシ、シャベル、洗い盤などの道具や、食料、衣料品などを販売した人々は、金を探す人々に比べて安定した利益を上げることができました。
この話は、市場において直接的な成功が難しい場合や競争が激しい場合でも、関連する補完的な商品やサービスを提供することでビジネスチャンスを探り、利益を上げることができるというものです。これは、「補完品戦略」や「間接戦略」とも言われます。
また、これは新しい市場や産業が生まれる際には、その市場や産業自体に参入するだけでなく、それを支える周辺産業に注目するべきであるという教訓も含んでいます。市場が成熟するにつれて、直接的な参入が難しくなることもあるため、間接的に市場に参入し価値を提供することで、競争を避けつつビジネスの成功が望めるでしょう。
ツルハシを探す?
ゴールドラッシュを背景に、「ツルハシ」を売る方がビジネス的に優れているという風潮が少し見られます。では、AIにおける「ツルハシ」とはなんでしょうか?
ChatGPTに聞いてみましたが、「AIインフラ」や「AIプラットフォーム」、「AI人材育成」などが「ツルハシ」と言えるでしょう。そして、昨今のAIニュースなどを見ていると、こうした「ツルハシ」事業が巨額の資金投資を集めているのが分かるかと思います。もちろん代表格は、「AIインフラ」のNVIDIAであり、「AIプラットフォーム」のOPEN AIです。
そこでハタと気が付くと思います。AI時代の「ツルハシ」をつくる方がこれ大変なんじゃないのか!と・・・
物理的は「ツルハシ」が必要だった金鉱探しと異なり、デジタルの世界では、一つのツルハシがすべてのゴールドマイナーに使われる可能性があります。そう「ツルハシ」はもはや物理的なモノではないのです。そして、モノづくりが好きな日本は、どうしても「ツルハシ」づくりに走ってしまいます。
一旦「ツルハシ」づくりは少し忘れて、ツルハシを使って、金を掘る作業をガンガン進めた方がいいのではないでしょうか?
(余談:と書きつつ、私自身も「ツルハシ」づくりの研究開発をしています。AIがより社会で効果的に活用されるためのパーソナルAI基盤とそれを支えるデータ生成基盤の研究をしています。)
主役はゴールドマイナーたち
たしかにゴールドマイナー達は今は忘れられているかもしれませんが、当時の主役は間違いなく、金を見つけた人たちだったはずです。そうしたゴールドマイナーたち、今回のブームでいえば、生成系AIを使っていち早くサービスをはじめ、金を見つけようとする起業家たちにもっと焦点をあててもいいのではないでしょうか?
肝心の金鉱探しが盛り上がられなければ、ツルハシが売れないように、AIの社会実装が進まないと、NVDIAのGPUも売れないのです。
そんな時にこんな記事を見つけました。少し内容を紹介したいと思います。
この記事の筆者は、生成AIの登場は、大きなビジネス変革のチャンスだととらえています。つまりまだまだ金が見つかるという考え方です。
まず一番目に、ネットワーク構造に変化がおとずれるという指摘です。
- AI以前のネットワーク → 人と人、人と企業がつながる
- AIを活用したネットワーク → アルゴリズムのために/アルゴリズムによってコンテンツを投稿・消費する人々
- AI専用ネットワーク → AIが一人ひとりにパーソナライズされたコンテンツを作成
この絵を見てみると、生成AIがでてくることで、AI単独ネットワークが成立し、パーソナライズされたコンテンツ提供が可能になってきます。これまでの、「AI以前のネットワーク」や「AIを活用したネットワーク」では、ネットワークの参加者の数が関係性や提供コンテンツの質に影響していました。youtubeのように多数の参加者がいるから、良いコンテンツがそろっており、さらにそれをAIで適切に届けてきたわけです。しかし、AI専用ネットワークになってくると、参加者が少なくてもAIの質が高ければ、個別化されたコンテンツ提供が可能になります。
あらゆるプロダクトの再定義
二つ目の指摘はAIの登場で、あらゆるプロダクトの再定義が迫られます。
- UI/UXはAIによって再構築される - 従来のUIは無意味になる
- 製品のカバー範囲はAIによって再構築される - 既存企業は異なるスコープで競争する
- ビジネスモデルはAIで再構築される - 既存のビジネスモデルは適応できない
- これまでの技術系企業は、AI以降の世界では存在しない
あらゆる製品のUI/UXは再定義される必要があり、製品のカバー範囲も拡大する。また人手ではなく、AIアシスタントがサポートを行い、これまでの技術を無に帰するような技術が続々登場する。
こうした環境はたしかに起業家の心をくすぐる状況でしょう。
最後の注目点として、高品質はサービス業におけるサポーターとしてのAIの可能性をあげています。不動産の仲介や金融資産管理など、高付加価値はサービスにおいて、AIをうまく活用できれば十分な収益化が可能であると指摘している。
ゴールドマイナーを支援しよう
ゴールドマイナーが必ず金を見つけられないのと同じように、サービスモデルへの挑戦者はたくさんの失敗も生み出すでしょう。例えば、Future Toolsなどのサイトを見ると、すでに何百ものサービスができあがっています。
このうち、生き残るのはほんの一握りでしょう。
しかし、実際は失敗にも大きな意味があり、失敗するということは、そこに金がない(あるいはもっと掘らないといけない)という知識をさずけてくれるのです。そして、金を見つけるためには、掘り続けないといけないです。掘り続ける真剣さと撤退の勇気を両立させた研究者・起業家がもっともっとたくさん必要です。ゴールドマイナーになりたい方とぜひいろいろ議論をしていきたいと思っています。
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