【AI経営】生成AI活用のための思考実験
深層学習ブームの際には、「なんでもいいからAIの活用を考えて」という指令が山のように飛んでいました。
ひょっとしたら今は「生成AIを経営や業務に活用するためのアイデアを考えて!」という指令がたくさん飛んでいるのではないでしょうか?そんな皆さんが考えるとっかかりになるような思考実験を考えてみました。
アウトプットから考える
前々回、前回とChatGPTを使いこなすための思考術について、記事を書きました。
前回の記事の中で、「アウトプットから設計しよう」という話を書きました。
何のためにAIを使うのか、その目的を設計するところからはじめると成果につながりやすいです。今回はそのための思考実験について書きたいと思います。
デジタル技術と経営の関係
AIをはじめデジタル技術を経営に活用する場合、大きく3つくらいの活用に分けることができます。
・業務効率化
・既存業務の売り上げ拡大
・新規事業
これらのテーマは、直近のトレンドだった「デジタルトランスフォーメーション(DX)」でも議論がなされてきたテーマです。DXの中でテーマになっていた課題に応用を考えるのが一番わかりやすいポイントかもしれませんが、生成AIらしいテーマというのも当然存在します。そのテーマを考えるための思考実験をしてみましょう。
その前に、デジタル技術のおさらいをします。デジタルの特徴として、以下のような性質をあげることができます。
〇コミュニケーションコストが0に近い →手紙や対面でのコミュニケーションよりもコストが削減できる
〇リアルタイム →アプリやメールで即時に対応でき、タイムラグがなくなる
〇全数性 →全体のデータを把握できるので、顧客管理や物品管理を正確にできる
〇複製ができる →デジタルデータは複製可能でコストが削減できる
〇データの二次活用ができる →デジタルの仕組みをいれておくと、必然的にデータが残り、そのデータを用いてKPIのモニタリング、分析などができる
AI導入の思考実験
ChatGPT登場以前にAI活用の思考実験を行うときは以下のような問いを投げかけていました。
「24時間365日 文句も言わずに、「予測」や「計測」、「検出」などの仕事をしてくれるデータサイエンティストを雇用出来たらどのような仕事を振りますか?」
数字のデータや画像データなどがある状態で、無料でデータサイエンティストを雇えたらどんな仕事を頼んでみるか? ここで思いついた内容の一部は、機械学習で自動化できるのではないかという思考実験です。何も思いつかない場合やデータがないという場合は、AI活用よりもデータづくりや業務知識の形式化からはじめましょうとアドバイスしています。
生成AIはこの質問を少し変化させました。
生成AIを活用した業務効率化の思考実験
業務効率化に関しては、以下のような質問を考えてみるのはどうでしょうか?
「突然、従業員が半分になった時に、どの仕事を外注して乗り切りますか?」
今回は、データサイエンティストではなく、従業員です。それだけ対応可能なタスクの幅が拡大したことをあらわしています。また業務のうち、外注しやすい作業は、「ある程度まとまっており」「依頼が言語化しやすい」ものであると考えられます。その業務は生成AIによって自動化できる条件が一部整っている状態です。
例えば、以下は横須賀市での生成AI活用のケースですが、「文章案の作成や要約、校正」「情報の検索、調査」「アイデアだし、案だし」などがあがっています。アンケートの設問作成なども分かりやすい事例です。
生成AIを活用した既存事業の売上拡大策
売り上げの拡大策としては、営業やマーケティングを通じて顧客基盤の拡大・ロイヤリティ向上や付加価値の向上などがあげられます。しかし、いきなり付加価値向上にAIを使うのは少し難易度が高いので、営業やマーケティングを通じて顧客基盤の拡大・ロイヤリティ向上への利用がおすすめです(AIを活用した付加価値向上にはAI技術の開発力と深い洞察がないとなかなか難しい部分があります)。こんな思考実験はいかがでしょうか?
「突然、営業やカスタマーサポートの従業員がほぼ無料で10倍になったら、どんな仕事をふりますか?」
この時には、顧客管理などがある程度デジタルでできているということは、ある種の前提となると思います。そうでないと10倍の人員が効果的に活動はできないからです。10倍の人員がいれば、単一的なメルマガ配信などではなく、もっと細かく細分化したメールでのコミュニケーションなども可能になるでしょう。顧客層への挨拶や新製品の発表、問い合わせなどへの対応、顧客の状況や現在の状況を踏まえたコミュニケーションも可能になります。
こうした対応は、デジタル系サービスのお家芸でした。デジタルサービスは、データを子細にとることで、ユーザを層別化し、顧客ごとに異なった対応が可能でした。生成AIを活用すると、デジタルサービスでなくても、こうした総当たり的なコミュニケーションが可能になるかもしれません。よりニーズに応じた提案なども可能になるでしょう。
逆算思考で活用アイデアを整理する
これらの思考実験を通じて、「マイナスを0にする」タイプと「0をプラスにする」タイプの課題がでてくると思います。社内説得的には、「マイナスを0にする」タイプの方が費用対効果を説明しやすい例が多いですが、理想的には「マイナスを0にする」と「0をプラスにする」をくっつけた提案が、スケールしやすいと思います。
例えば、業務効率化で「クレーム対応を外注する」として、そのクレームデータを蓄積・分析して、その知見を用いて顧客対応重要度を評価し、顧客開拓のためにカスタマーサポートが丁寧にコミュニケーションをとるという連続したストーリーができるとハイブリッド化します。
生成AIを活用した新規事業について
新規事業への応用などは、まずはこうしたサイトなどを見るとアイデア発想の刺激になると思います。生成AIを組み込んだ新規サービスは世界中で山ほど登場しています。それらをブラウジングすると、ひょっとしたら新しい気づきがあるかもしれません。
そしてより本質的に生成AIを活用するには、以前紹介した以下のフレームで検討していただけると良いかと思います。
AIの社会実装に向けて、多くの事例を作っていくことが不可欠です。ぜひ皆さんと一緒にいろいろな研究を進めていきたいと思います。
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