セメント業界に起きているイノベーションがアツい

2023年8月6日
全体に公開

みなさん、お久しぶりです。6月が忙し過ぎて、7月は東京におりまして、気がつけば8月に!東京は本当に酷い暑さでした。まだ猛暑が続いているのだと思います。子供達を小学校に二週間通わせておりましたが、暑過ぎて校庭で遊べない日が続き、不機嫌に下校して帰ってくることがしばしば。自分が小学生の頃の30年以上前はそんな日はなかったような。エアコンすら学校になかったような。気候変動の影響が日々の生活にまで出てきているのを実感してしまう日が増えてしまいました。

さて、6月25日に東京大学で開催されました、Climate Tech Dayにてセメントの脱炭素のセッションでスピーカーとして参加させていただきました。今日はそこからセメントを深掘りしたいと思います。

1.セメントの排出量は?

セメントといえば、コンクリートの材料です。身の回りのコンクリートたくさんありますよね。建物、道路など皆さんの生活や企業活動に欠かせないセメントは、今後もどんどん需要が増えていきます。都市や街が発展するに従ってどんどん必要になります。

現在、セメント業界からの排出量は世界全体の7%に値します。どれくらいかというと、日本の排出量はだいたい世界の3%くらいなので、日本二つ分以上です!

下の図は1トン当たりセメントからの二酸化炭素排出量の経年推移です。ずっと減ってません!しかも1トンセメント製造して、0.6トンも二酸化炭素排出してしまうなんて、と嘆かわしくなりますが、これには理由があります。

出所:IEA, https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/direct-emissions-intensity-of-cement-production-in-the-net-zero-scenario-2015-2030-2

2.セメントになぜイノベーションが必要なのか?

セメントの製造プロセスを見てみると(下図)、排出量の大半が一つの工程に集中しています。セメントの原材料は石灰石です。その石灰石を高熱で化学反応を起こし、熱分解して酸化カルシウム(生石灰)にします。これがコンクリートの材料となります。

高熱、つまり何かを燃やさなければならない。今は、化石燃料を燃やしています。

もう一つの酸化カルシウムが作られる工程でどうしても出てしまうのが、二酸化炭素です。

出所:マッキンゼー、https://www.mckinsey.com/industries/chemicals/our-insights/laying-the-foundation-for-zero-carbon-cement

下の図でいくと、高熱が右側。左側の化学記号を見ていただくとおわかりいただけるように、酸化カルシウムのCaOができると同時に、二酸化炭素が出てしまうのが石灰石の熱分解です。

そのため、セメントの脱炭素には、この二つの主な排出量のどちらも削減しなければ脱炭素ができないわけです。

出所:NEDO、https://webmagazine.nedo.go.jp/practical-realization/articles/201705ecm/

3.今後の期待

セメント業界の抱えるこの課題を解決するため、さまざまなイノベーションが生まれています。例えば、弊社エナジー・インパクト・パートナーズ社では、このどちらの排出量も削減する技術を持つ、Sublime Systems社に投資しています。他にも、発生してしまう二酸化炭素を回収するCCSの技術に着目したり、または一般的なセメントではなく、代替材料でコンクリートを作る技術に投資をする会社も出てきています。

もう一つ重要な要素は、セメントを使う需要家の動きです。今までの多排出のセメントではなく、グリーンセメントを使用した建物で今後の自社ビルを建設したい、などの要望がすでに出てきています。まだこの建材の分野での脱炭素商品は少ないですが、こうした需要家の声が大きな渦となって、今後も新しい技術やイノベーションが生まれるだけでなく、政策なども変えていってもらえるといいなと思います。

具体的には、Microsoft社のデータセンターはサステナブルな建材を使っていくと言われています。また、以前の発信でもご紹介した、First Movers Coalitionでもグリーンセメントを積極的に購買すると7つの企業が手を挙げています。日本からもそのような企業が出てきていてもおかしくないですね。

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