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ギリアド株上昇、レムデシビルの有効性示すコロナ治験結果の報道で
Bloomberg
後藤 聡歯科医師 医学博士
レムデシビルの有効性に関するこの報道は、現在のところ査読された論文とはなっておらず、単なる“レポート”の段階です。これをもってレムデシビルの有効性を論じるのは、いささか早計です。 一方アビガンでは、中国・深圳からの論文が一時的に取り下げられましたが、改訂の上、査読済み論文が再掲載されました。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095809920300631 この論文を改訂前後で詳細に比較しましたが、アビガン群では中央値4日でウイルスが消失し、14日後には91.4%で胸部画像が改善したといった主要部分に変更はなく、要旨や考察などで表現を控えめにした程度の変更(例:アビガンが有意に良好な治療効果を示した→アビガンがより良い治療レスポンスを示した)でした。また、非ランダム化比較試験という表現を消し、前後比較試験(アビガン採用前後の比較)であることを明記した上で、それでも「この予備的な臨床の結果は新型コロナウイルス感染症に有益な治療情報を与える」と結論付けています。 この論文に対しては、二重盲検ランダム化比較試験(D-B RCT)が行われていないことが指摘されています。通常、薬の評価には、D-B RCTが必要なのは言うまでもありません。しかし、ここで私見を述べさせていただくと、今、このような状況でD-B RCTを行うのは倫理的にいかがかと感じます。一般的に、抗ウイルス薬は発症直後のウイルス量が少ないときにのみ効果を出すものであり、感染細胞が増えてしまえば、その効果はほとんどないのが通例です。D-B RCTでもし偽薬に当たり、その患者が急激に悪化(本疾患の恐ろしさはそこにあります)したとしたら、そこでレスキューを出しても、もう手遅れなのです。にもかかわらずD-B RCTを求めるのは、鬼の所業としか思えません。本論文の著者も、これを指摘し「非人道的でありD-B RCTを採用できなかった」旨を考察で述べています。さらに背景因子が異なることを除外するため、ロジスティック回帰分析やCox回帰分析を行い、それでも薬剤の違いには有意差があった(それぞれP = 0.046, P = 0.026)としています。 現時点で報告されているデータからは、むしろアビガンの方が、有効性についての科学的根拠は高いと考えられます。
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「アビガン有効」中国論文取り下げ 国内研究は続行
日本経済新聞
後藤 聡歯科医師 医学博士
この取り下げはおそらく、二重盲検ランダム化比較試験(D-B RCT)が行われていないという外部からの指摘により、編集者側が掲載を差し止めたということであると思います。通常の査読者であれば、D-B RCTが無いことを見逃すはずはないので、それでもこの論文を通したのにはそれなりの理由があるはずです。査読者の反論を聞きたいものです。 ここで私見を述べさせていただくと、今、このような状況でD-B RCTを行うのは倫理的にいかがかと感じます。通常、抗ウイルス薬は発症直後のウイルス量が少ないときにのみ効果を出すものであり、感染細胞が増えてしまえば、その効果はほとんどないのが通例です。D-B RCTでもし偽薬に当たり、その患者が急激に悪化(本疾患の恐ろしさはそこにあります)したとしたら、そこでレスキューを出しても、もう手遅れなのです。にもかかわらずD-B RCTを求めるのは、鬼の所業としか思えません。本論文の著者も、これを指摘し「非人道的でありD-B RCTを採用できなかった」旨を考察で述べています。さらに背景因子が異なることを除外するため、ロジスティック回帰分析を行い、それでも薬剤の違いには有意差があった(P = 0.046)としています。 この取り下げが前述の様に外部からの指摘にあるとすれば、そこにPoliticalな、あるいはCommercial な臭いを感じるのは私だけでしょうか・・・。 なお、一時的に取り下げられたこの論文は、改訂の上、査読済み論文として再掲載されました。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095809920300631
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