働き方改革は、目的である学校改革を為すための手段にすぎない

2023年9月26日
全体に公開

横浜創英中学・高等学校副校長の本間朋弘です。第1回目の工藤校長の投稿につづいて,2回目は私が担当します。よろしくお願い致します。少しだけ自己紹介をさせていただくと,29年間神奈川の県立高校に在職し,最後の9年間は柏陽高校・横浜翠嵐高校の学力向上進学重点校で進学体制の構築に励んできました。今から11年前に「進学実績の向上」をミッションに横浜創英に移り,その点では一定の成果を上げてきたと自負をしています。

ところが3年半前,工藤校長と出会ったことで今までの私の教育観に変化が生じたのです。今までの私は,大学受験に勝つことだけをゴールに進学体制を築き,日本史に関する参考書も数多く執筆してきました。でもどこかで違和感を持つようになり,その原因を辿っていくと,私の中で生徒と社会が繋がっていないのです。18歳の頂点学力の先を見ていたかというと見てこなかったようにも思います。生徒を大学に入れたら終わりで,自分が教えた生徒が大学に入ってどうなっているのか,社会で活躍しているのか,そういったことにほとんど関心を持ってこなかったことに反省せざるをえなかった。

多くの教員の協力があって,現在の横浜創英の進学体制があります。でも,社会を見据えてこなかった自省が消えることはなく,昨年度10月の職員会議で私は職員にこう伝えました。「18歳の頂点学力の先を見ながら,教育活動に新しい価値を生み,生徒と社会を繋げていく。そういった学校を皆で築いていきましょう」。横浜創英が新しい学校像の組み立てに向けて,新たなスタートを切る契機にもなりました。

これからの学校は社会で活躍する準備の場所に変わっていかなくてはなりません。社会で必要な経験の場を学校がどれだけ提供できるか,このことが学校のこれからの大きな役割になってきます。大人はすでに気づきはじめています。今の画一的な学校教育では社会に通用しないのではないか。もっとリアルな学びをして生徒と社会を繋いでいかなければ,子どもたちの未来図を描くことは難しいのではないか。

みんな気づきはじめているのに,学校の動きはなぜかゆっくりです。社会が流動的になっているのに,学校だけが時間の流れが遅い。教師はどこかで変化を躊躇しています。横浜創英では,2025年度をめざして,最上位目標に「生徒の当事者意識を育てながら,学びを生徒主体に移譲し,実学的な学びを展開して社会に貢献できる人材を育てる」ことを置き,それに沿った新しいカリキュラムの構築に着手をしています。

横浜創英と同様に,子どもたちの未来のために, 本気で学校を変えていこうとする人たちがいます。近いうちに,この人たちがつながることで,日本の教育に大きなイノベーションが起こり, 社会を意識した新しい機軸の学校が生まれる予感がします。そして,その機運が全国の学校や教師へと繋がっていくことを願ってやみません。

本校では学校改革に先行して,2年前から組織的な「働き方改革」を進めました。私たちの「働き方改革」は,労働時間や業務負担の削減等,そのこと自体が目的ではありませんでした。「新しい学校像」への転換こそが本来の目的であり,その学校改革を達成するためには,どうしても「教師の時間のゆとり」を生むことが不可欠だったのです。つまり,「働き方改革」は,「新しい学校像」を作るための手段であって目的ではありませんでした。

時間は人のためにあるはずなのに,なぜか教師は,時間と遠く離れたところにいます。その結果,長時間労働の課題は野放しにされ,教師の健康問題までクローズアップされるようになると,学生たちは教職に魅力を失って学校から離れていきました。それは,私たちが終点のない特急電車の中で困憊し,ホームにいた学生が電車に乗ることすらやめて,駅から離れていく様のよう。

学校が未来に向けて生徒と社会を繋げる場所であるならば,教師の仕事も未来に向けて希望のある労働環境に変わっていかなくてはなりません。教師は働き甲斐を作ることはとても上手だと思うのですが,自身も含めて,生き甲斐を作ることが少し不得手。働くことのやり甲斐と,ゆとりから生まれる人生の豊かさが同居するような環境を築いていく。このことは,これからの学校現場の大きな課題です。

本校の「働き方改革」が,必ずしも正解とは考えていません。公立には公立のあり方があるし,できないこともあります。長時間労働という課題を解決する糸口もそれぞれ違うかも知れません。それでも,教師の未来への希望に向けて,多くの先生方がつながる一助になればと思っています。

最近の私は,寝る前,もしかしたら夢の中でも,「学校改革」と攻防を繰り広げているかもしれません。まずは,「働き方改革」について,本校の具体な情報を交えつつ綴っていきたいと考えております。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
樋口 真章さん、他584人がフォローしています