【AI時代の保険】AI労働者の台頭による変化に備えよ

2024年2月13日
全体に公開

<目次>

1. 3種類の大きな変化

2.AI労働者の普及による変化

3.AI技術の活用によるリスク評価の変化

4. 読者特典とお知らせ

この記事では保険業界が直面しつつある危機と取るべき方向性の予測を見てみましょう。「大きな3つの変化」を切り口に未来予測を行います。

今回の記事では「AI労働者の普及による変化」と「AI技術の活用によるリスク評価の変化」を取り上げます。

筆者が、GPT4でプロンプトを生成し、にじジャーニーで画像を生成

1.3種類の大きな変化

保険業界の企業が注目すべき変化が3つあります。

それは次のような3種類です

保険業界の企業が注目すべき変化が3つあります。

変化①世の中の大きな変化(AI以外)

変化②AI労働者の普及による変化

変化③AI技術の活用によるリスク評価の変化

※変化1については、車の製造方法の大きな変化による全損事故のリスク上昇といった変化を下記の記事で解説しています。

AIとの関係性の有無に関わらず、社会の大きな流れの変化を掴み、現在持っている収益源の縮小や新たな収益源の獲得を早めに検討し、移行を始めなければ、変化に飲み込まれてしまう恐れがあります。

では、変化2から見ていきましょう。

2. 先進的なAIによる人間の優位性の変化

AIの進化で労働市場はどうなるのでしょうか?

ChatGPTが普及することでデスクワーカーがAI化し、労災保険の加入者が減少する、というのは誰しもがイメージしやすいですが、AIロボットが普及した場合、どのような影響があるでしょうか?

例えば、テスラが進めているOptimusにより、今まで人間にしかできなかった作業が数年内に置き換わり始めるでしょう。

次の動画の通り、Optimusは早くも第二世代になり、生卵のようなデリケートなものを壊れないように扱ったり、歩く速さも30%向上しました。

何より、第一世代のロボット感がずいぶんなくなり、「まるで人間が入っている感」が強くなりました。AIロボットと人間の境界線が曖昧になりつつあるのは、生成AIがまるで人間かのように受け答えしたり、絵を描いたりするのに似たような状況にあります。

また、次の動画では足に使われている動力装置は、500kgのピアノを持ち上げるほど強力なものが使われていることを見て取ることができます。かなりの力仕事も難なくこなすことができるポテンシャルを持ちそうです。

イーロンマスクは、このAIロボットを2万ドル(約300万円)での販売を目指すとしており、ひと一人の年収を考えても、「まず一台導入して試してみる」という企業がたくさん現れ、性能が認められれば急速に普及することが考えられます。

ご存知の方も多い、忍者のような動きをするロボット「アトラス」で有名なボストンダイナミクスがビジネス色を強めて、急激に普及する可能性もあるでしょう。

この手のロボットがもし職場に普及した場合、保険業界はどのような影響を受けるでしょうか?

まず、労災対象者となる労働者が減り、保険料収入が減ることが考えられる一方で、ロボットに搭載された電池や充電設備の発火による火災のリスクが高くなるため、事故が発生した場合の保険金(支出)が多くなることが考えられます。

ただし、悪いことばかりではありません。

AIによるオペレーションミスによる事故への保険という新たな保険領域がありえます。AIを導入するデメリットとして、100%、常に同じアウトプットが出るとは限らないという点はビジネス上の落とし穴になり得ます。

こういった特性により生じた社内外での損害をカバーする保険のニーズは今後高まってくる可能性があります。

さらに、視点を変えて、もっとしなやかな動きに特化したマーベルスタジオのアトラクションで使われているスパイダーマンのスタント用AIロボットを考えると、映画のスタントにもロボットが使われるようになると考えられます。

実はあまり知られていませんが、数億円単位の予算やスター俳優への出演料、興行収入が動く映画制作には大きなリスクを伴うため、次のような4つの補償を行う「映像保険」「撮影保険」というものがあります。

人的損失の補償:スタッフ・キャスト・エキストラを被保険者とした傷害保険
損害賠償の補償:撮影中に発生してしまう第三者への賠償事故を補償する保険、劇用車や製作車の運行に起因する賠償への保険
物的損失の補償:高価な機材やセットを対象とした補償
費用損失の補償(興行中止保険):監督や主演俳優に死亡・病気・けがなどが生じ、撮影が中止・延期・変更となった場合等の費用損失を補償する保険

しなやかな動きを得意とするロボットがスタントを行い、セットの制作をアトラスやOptimusが行うことで、映像作品作成時のリスクは減り、保険金の支出は減る可能性があります。

リスクが減るということで、保険会社が有償で貸し出すこともあり得るでしょう。

また、監督や副監督を専用チューニングがされたAIに置き換えることで、興行中止のリスクが下がることもあるかもしれません。

このようにAI労働者の台頭で、いくつかの保険に影響があります。海外も含めたロボットの進化と普及、それらの保険業界への影響、競合他社の動きをウォッチし、クリティカルなものにはすぐに対処していく姿勢が必要でしょう。

筆者が、GPT4でプロンプトを生成し、にじジャーニーで画像を生成

次にAI技術の活用によるリスク評価の変化を見ていきましょう。

3.AI技術の活用によるリスク評価の変化

AIの進化により、生体情報を従来よりも正確に把握し、適正な保険料を設定することができるようになることが期待されます。

1つ目が、Canada Klick Labsの研究で、人間の発話をAIが聞き、二型糖尿病を診断可能になる技術です。精度は女性で89%、男性で86%と、比較的高い精度があります。

二型糖尿病は心臓病や脳卒中、動脈硬化を引き起こすリスクが高くなるため、保険申込時に申込者の血液を採取しなくても発話から診断することで、より適正な保険料をセットすることができるようになります。

2つ目が、AlphaGoで一躍有名になったGoogleのDeep Mind社が、ヒトの遺伝子の小さな変異(ミスセンス変異)から病気になる可能性を予測するAIによるものです。

DeepMindが開発した「AlphaMissense」は、遺伝子のミスセンス変異を分析し、疾患発生の確率を90%の精度で予測するAI技術です。

ミスセンス変異とは、遺伝子の一部が変わり、結果としてタンパク質の構成アミノ酸が変化する現象。これが病気にどう影響するかを、AlphaMissenseは高精度で予測します。この技術は、AlphaFoldに基づき、タンパク質のアミノ酸配列を解析する新しいアプローチを採用。

病気の早期発見や新しい治療法の開発に向けた研究に大きな貢献が期待されており、特に希少疾患の研究に革命をもたらす可能性があります。

これにより、今までよりも的確に保険申請者のリスクを把握し、保険料をセットすることができるようになります。

今までよりもメッシュが細かくなることで保険に入れなくなる人が誕生してしまうケースも発生することが予想されますが、逆に、今まで保険に入れなかった方が遺伝子レベルで問診を受けることで、入れるようになるケースも発生するあり得るでしょう。

また、MITの研究チームが咳の音からコロナを見分ける(聞き分ける)AIを研究しています。この方法であれば、高額な検査キットを薬局で購入して唾液を採取しなくてもスマホさえあれば、どんな僻地でも診断することができます。

この研究では、4000件の学習データを使ってAIのモデルを作り、1000件の新規データでテストを行ったところ、98.5%の感度で感染者を検出し、そのうち無症状患者については100%を検出できたといいます。

コロナを早期発見できれば、入院治療による保険金請求の低減や、パンデミックによる旅行保険の保険料収入の減少も最小限に抑えることができるようになります。

このように、人間には診断できないレベルで、AIが発達しつつあり、保険企業はこれらを適切に使うことで、リスクに見合った適正な保険料をセットできるようになります。

是非、保険業界の方や、保険業界に就職や転職をしようと考えている方は参考にしていただき、今後も今回分析した3つの観点を参考に世の中のニュースを見聞きして、未来を予測し、行動に移していただければ幸いです。

4.購読者特典やお知らせ

①Udemyのお得なクーポンを6コース分ご提供(「生成AI」や「テスラに学ぶマーケティング戦略」など)

②ChatGPT研修の実施

『AI時代のキャリア生存戦略』が好評販売中

①Udemyのお得なクーポン情報(「生成AI」や「LifeVisionの作り方」など)

Udemy主催のトピックチャレンジという動画講座の企画コンテストで2案採択頂き、ChatGPTとLifeVisionの作り方のコースが公開されました!

本トピックの購読特典として、ChatGPTの速習コースやLifeVisionの作り方、広告無しで市場を切り開いたTeslaの戦略など、今月末まで引き換え可能なクーポンを発行しましたので、気になる方は下記のリンクより入り、是非ご活用ください!

②ChatGPT研修や講演の実施

ChatGPTを速習するための講演や研修で、2023年だけでも約2.5万人ほどを対象に提供しました。

<研修のコンテンツ例>

・ChatGPTの落とし穴と性能を最大限引き出すためのコツとは?

・すぐに使いこなすためにどのように活用するか、オリジナルのフレームワーク4H(増やす・減らす・掘り下げる・変化させる)を実演

・研修対象企業の生成AIの利活用リサーチ

・研修対象企業用にチューニングしたプロンプトのテンプレート提供など

基礎〜応用まで解説し、短期間でキャッチアップする研修プログラムを提供しており、下記のような企業様にもご提供し、ご好評を頂いております。

・東京海上様(全社員向け)

・Panasonic様(特定の部門向け)

・実教出版様(有志向け)他多数

現在のスキルレベルは問わず、参加者の大半がまだChatGPTに触ったことがないという企業様も含め、ご好評を頂いておりますので、ご検討されたい方は、ぜひお気軽に下記よりご連絡ください。

お問い合わせ先:yosuke@focuson-inc.co.jp

③『AI時代のキャリア生存戦略』が好評販売中

NewsPicksのNewSchool「次世代ビジネス書著者発掘プロジェクト」で最優秀賞を頂いた書籍が好評発売中で、AI時代を生き残る3種類の戦略について解説していますので、是非参考にしてみてください!

筆者が撮影

トップ画像:筆者が、GPT4でプロンプトを生成し、Midjournyで画像を生成

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