プロテオフォームの自動イメージング

2023年11月16日
全体に公開

プロテオフォーム(Proteoform)とは、ゲノムの指令を受けて作られるタンパク質の異なる形態のことで、様々な配列変異、スプライスアイソフォーム、翻訳後修飾(糖鎖、リン酸化など)を考慮したものです。このようなタンパク質の複雑性をもたらす原因は400以上あるとも言われています。特定のプロテオフォームは特定の生物学的な機能と関係しているため、プロテオフォームレベルでのタンパク質の解析は、生物学的プロセスの完全な理解のために非常に重要です。

現在、ヒト組織内のタンパク質を画像化するためにいくつかの技術が使用されていますが、プロテオフォームを画像化できる技術はほとんどありません。

2022年、シカゴのノースウェスタン大学のチームが、ナノスプレー脱離エレクトロスプレーイオン化とイオン質量分析を使用したイオン検出を組み合わせることにより、80μm未満の空間分解能でプロテオフォームの組織局在を明らかにするPiMS(proteoform imaging mass spectrometry、プロテオフォーム イメージング質量分析法)という技術を発表しました。

このほど、同じチームが、この方法を発展、自動化させたAutoPiMSを開発し、ヒト卵巣がん切片に適用しました[1]。

McGee, J.P. et al. (2023) Automated imaging and identification of proteoforms directly from ovarian cancer tissue. Nat Commun 14, 6478. https://doi.org/10.1038/s41467-023-42208-3

PiMSは、組織からプロテオフォームをサンプリングし、抽出されたプロテオフォームを「計量」して特定のサイズまでのプロテオフォームを識別し、このデータを使用してスキャンされた組織のプロテオフォーム画像を構築していきます。AutoPiMS は、計算エンジンを利用して、がん組織の薄い切片内のプロテオフォームを自動的に識別していきます。

このAutoPiMSを用いて、ヒト卵巣がん組織サンプル内の300以上のプロテオフォームを特定して特徴付けることができ、プロテオフォームあたり1分の速度でサンプル内の特定のがん関連タンパク質が存在する場所をマッピングしました。同じ患者からの癌組織と非癌組織を識別することもできました。

https://doi.org/10.1038/s41467-023-42208-3

チームでは、この技術をシングルセルレベルにまで解像度を上げたいとしています

「単細胞プロテオフォームに関する情報が得られれば、空間、時間、組成に関してタンパク質に関する最も正確な情報が得られるでしょう。

タンパク質だけでなく、シングルセルでプロテオフォームもわかる時代が来るのでしょうか。

[1] McGee, J.P. et al. (2023) Automated imaging and identification of proteoforms directly from ovarian cancer tissue. Nat Commun14, 6478. https://doi.org/10.1038/s41467-023-42208-3

合成生物学は新たな産業革命の鍵となるか?」担当:山形方人

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