DARPAと合成生物学

2024年4月29日
全体に公開

1958年に設立されたDARPA(Defense Advanced Research Agency、国防高等研究計画局)は、米国の軍事研究関係の機関として、米国の国家安全保障に関わる研究だけでなく、地球全体に利益をもたらすイノベーションを推進および支援する機関として長い歴史があります。 インターネットやGPSもここから生まれました。最近では、DARPA がADEPTプログラム (2011年開始) で核酸ワクチン技術への初期投資を提供し、モデルナもその対象でした。

DARPAのBiotechnologies Office(BTO)は、過去10年間にわたって合成生物学の分野と非常に密接な関係を築いてきています。この4月から、長年にわたって合成生物学業界の中心的な人物であったMichael Koeris氏が、このBTOの局長に就任しました。

Michael Koeris氏は、これまで数社以上の企業を設立し、新型コロナウイルスのパンデミック中にNIHのRADxイニシアチブのポートフォリオ幹部を務めました。ケック大学院(カリフォルニア州クレアモント)の准教授として、更にベンチャーキャピタルでも活動してきました。

Michael Koeris博士は、2024年4月にBTO局長として DARPA に加わりました。彼の研究と教育は、化学、製造、マイクロバイオーム医薬品の制御のあらゆる側面に加え、高度な細胞および遺伝子治療アプローチに焦点を当てています。DARPA に来る前、Koeris博士はバイオプロセシングの教授を務め、ケック大学院の生物工学および管理学科のアムジェン バイオプロセシングセンターのメンバーとしても活躍しました。 同氏はまた、ポートフォリオエグゼクティブとしてNIHのRADxイニシアチブに助言し、パンデミック全体を通じてSars-CoV-2診断検査の迅速な開発、臨床検証、製造、配布を支援した。 2020 年に KGI に入社する前は、Koeris氏は、取締役会のメンバーであるだけでなく、創設者および上級リーダーとして、バイオテクノロジー スタートアップの立ち上げ、成長、撤退に積極的に取り組んできました。 彼は米国内および海外で十数件の特許を取得しています。 彼の起業家としてのキャリアは、Sample6 をスピンアウトすることで始まりました。Sample6 は、2017 年に Forbes によって最も注目されている AgTech スタートアップ企業 25 社の 1 つとして認められ、同年後半に買収されました。 Koeris氏は、世界的な非営利リポジトリである Addgene の取締役を務めており、過去には商業バイオテクノロジー企業の取締役を務めていました。Koeris氏は、ボストン大学で生物医工学の博士号を取得し、ドイツのベルリン自由大学で生化学と生物物理学の修士号と学士号を取得しています。

SynbioBetaにも、インタビュー記事が掲載されていました。

BTO での在任中に優先する予定の非常に重要なトピックがいくつかあります。それは、生物学と宇宙生物学に適用されるAIと機械学習です。
私たちが資金提供するプロジェクトの半分は失敗するかもしれませんが、そこには膨大な学びがあるでしょう。そして残りの半分は大成功を収め、GPS技術、インターネット、mRNAワクチンなどが手に入るでしょう。それが悪いトレードオフだとは思わない。

その上で、BTOによる企業の支援は、VCから受け取る支援よりも大幅に高額であること、資金提供コミュニティや産業コミュニティと確実に連携することが大切だとしています。2024年予算41億 2,000万ドルは、最近の円安で換算すると、6500億円でしょうか。合成生物学支援への期待が高まります。

合成生物学は新たな産業革命の鍵となるか?」担当:山形方人

【合成生物学ポータル】 https://synbio.hatenablog.jp

【Twitter】  https://twitter.com/yamagatm3

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