1000の仕事がありますように
南和気さんからバトンを受け継ぎ、今回の記事をトピックスのリレー企画「新たな扉の前に立つチャレンジャーたちへ」のために書きました。
みなさんがご両親から贈られるキャリアのアドバイスは、みなさんにとっての祖父母や親自身が人生から学んだことが元になっているでしょう。
とはいえ親たちも模索している最中ですから、「人生のパターン」を理解しているわけではありません。
つまり、そのアドバイスはとても古いのです。
現在のキャリアの世界は2つの劇的かつ対照的な方法によってすっかり様変わりしています。
人類が最も進化した形で地球に誕生してから25万年になります。
歴史家が語るのは農業の出現や富の創造といったこの1万年の急速な変化です。そして機械による自動化や産業時代に移行したこの200年に人間の生活がいかに急激に変貌したか、というのは人々が語りたがるさらに人気のトピックです。
1823年に生まれた人たちは30代半ばまでしか生きられないと思われていて、これは野生のチンパンジーと同じ寿命でした。
その後はより清潔で安全な生活環境や労働環境、医学の発達など(特に病原菌説と抗生物質)により、みなさんの祖父母の世代は平均60-70代まで生きられるようになりました。
2000年前後に生まれて大学を卒業した多くの若者を震撼させたのは、この世代の人々の平均寿命は約100歳であるということです。
仕事やキャリアに起きた変化を見てみると、技術の進歩や市場の大幅な拡大により、企業、教育者、政府関係者は主要な役割や「成功」の定義を設計し直す必要に迫られています。
日々、新しいプロダクトは既存のプロダクトに取って代わり、新しい会社が古い会社を駆逐します。
1973年のアメリカのトップ20の企業のうち、大手の石油企業を除いて現在もそのリストに名を連ねている企業はなく、2023年のトップ20のほとんどは50年前には存在すらしていませんでした。
かつては20年だった電話や自動車のプロダクト・ライフサイクルは、いまや3年から5年です。
現在最も支配的な産業であるソフトウェアに至っては、顧客のニーズと作り手の能力に応じて連日絶え間なくアップデートが行われます。
このようなすべての変化を考えてみると、みなさんがご両親から受けるアドバイスはまるで、冷たく暗い別の惑星からやってきたようなものです。
親たちは50年前の電話会社や鉄鋼メーカーで有効だった助言でみなさんの成功を後押ししようとしています。
みなさんの祖父母の世代の人々にとって仕事をする期間は30〜40年で、電話や鉄鋼はその間に大きく変化することはなく、関連する業務は固定的だったのでそれでも構いませんでした。つまり雇用されたその日から定年まで、極めて特化した限定的なスキルセットによって生き残り、豊かになることができました。
しかし今では仕事をする期間はその2倍の60〜80年となり、80歳や90歳まで働かなければならない(もしくは、働きたいと自ら望みさえする)可能性が高くなります。何を作り、どのように働き、売るかが数年ごとに激変するキャリアの世界にみなさんは足を踏み入れたのです。
祖父母世代は一生涯で1つあるいは2つの仕事を、おそらくは1つか2つの地域でしていたことでしょう。
翻ってみなさんはこれから15や30のユニークな仕事を、複数の地域で(さらには国で)行うことになります。
そこでの成功と幸福の鍵は、会計や営業、エンジニアリングといった単なる個別のスキルではなく、市場の力学や文化に適応し、新しいスキルを直ちに習得する強靭な能力です。
どんなルールも長く生き残りはしないので、従うべき「一生モノ」の組織のルールもありません。
あなたが従うルールは、あなたの内側から、あなたの最高のスキルや最大の関心事を理解することから生まれるものでなければなりません。
ネットワークは階層的あるいは形式的なものではなく、水平的で柔軟なものになるでしょう。
あなたとあなたの実力を深く知る、信頼できる専門家のネットワークとチームを結成し、解散することを繰り返して行くのです。
あなたは「何を行うか」によって評価されるのではなく、「行うことをどれだけ早く変えることができるか」で評価されることになります。
これが長期に渡って成功する方法です。
これがわたしからみなさんにお伝えしたいメッセージです。
では、このリレーのバトンを鈴木大祐さんにお渡しします。
(翻訳:豊岡愛美)
(図版クレジット:Unsplash/Hadija)
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