求められる「グリーンオーシャン戦略」への転換

2023年7月30日
全体に公開

これまでビジネス戦略として「ブルーオーシャン戦略」「レッドオーシャン戦略」が広く展開されてきました。

しかし、現代のビジネス環境では、これらのアプローチに加えて、新たな視点が求められています。それが「グリーンオーシャン戦略」です。

ブルーオーシャン戦略とレッドオーシャン戦略とは

ブルーオーシャン戦略は、競争が存在しない新たな市場を開拓することを目指す戦略です。新しい価値を創造し、競争を避けることで利益を最大化することを目指します。

ブルーオーシャンは、まだ誰も進出していない、競争のない市場を指しています。この戦略を採用する企業は、新しいニーズを見つけ出し、それを満たすための製品やサービスを開発します。これにより、競争から解放され、大きな利益を得ることが可能となります。

しかし、昨今の激化する競争環境の中では、新たなブルーオーシャンを見つけ出すことは困難な状況にはなっています。

一方、レッドオーシャン戦略は、既存の市場で競争することを指します。ここでは、競争者との差別化やコストリーダーシップにより市場シェアを獲得しようとします。レッドオーシャンは、競争が激しく、企業間で顧客を奪い合っている市場環境で競争環境は激化します。

この戦略を採用する企業は、競争優位を獲得するために、価格、品質、サービスなどで競争者と差別化を図る必要があります。

グリーンオーシャン戦略とは

「グリーンオーシャン戦略」は、ブルーオーシャン戦略やレッドオーシャン戦略と並ぶ、新たなビジネス戦略の一つとして、注目が集まりつつあります。

「グリーンオーシャン戦略」とは、社会的な課題解決をビジネスのチャンスと捉え、その解決を通じて新たな市場を創出する戦略を指します。

具体的には、環境問題や社会問題など、社会全体が直面している課題を解決することで、新たな価値を創造し、それをビジネスの成長につなげることです。これにより、企業は社会的な価値と経済的な価値を同時に追求することにつながります。

この戦略は、企業の社会的責任(CSR)や持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与するため、現代のビジネス環境において、特に重要性が増しています。

今回、「グリーンオーシャン戦略」について書いたきっかけは、日経ビジネスの「官民共創を成功に導く「グリーンオーシャン」という考え方」という記事からです。

この記事では、グリーンオーシャンとは、

公益性と事業性を両立して初めてビジネスとして成り立つ領域
官民共創を成功に導く「グリーンオーシャン」という考え方 日経ビジネス 2023.7 

と定義し、

グリーンオーシャンの領域は顧客となる市民を含む社会や地域が得られるメリットと企業にとってのメリット、行政が得られるメリットの3つをそろえる必要がある。このため、必然的に収益化するまでに時間がかかる。
官民共創を成功に導く「グリーンオーシャン」という考え方 日経ビジネス 2023.7 

と書いています。

つまり、収益化するまでには時間を要し、社会と企業、そして行政がメリットを得るための中長期的な視点で事業をとられ、最終的に持続可能な収益モデルへとしていくというアプローチが重要となっています。

まとめ

約3年前に、ビジネス+ITに、『サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは何か? なぜ「DXよりはるかに重要」なのか』という記事を書きました。

この記事では、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」とは、

不確実性が高まる環境下で、企業が「持続可能性」を重視し、企業の稼ぐ力とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との対話の在り方を変革するための戦略指針
ビジネス+IT 2023.9

と書いています。

つまり、稼ぐ力ESGの両立を図りながら、ステークホルダーとの対話も通じて、持続的な事業モデルを展開していくことが重要になります。

日経ビジネスの記事にもあるように、グリーンオーシャンを進めるには、官民共創の取組も重要となるでしょう。

そして、深刻化する環境問題への対応は、グリーンオーシャン戦略の観点で取り組んでいくことが重要となるでしょう。

国連のグテーレス事務総長は2023年7月27日、記者会見の席で

地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した

と危機感を示しています。

来年、そして10年後、世界の気温、そして日本の気温はどうなっているか、想像するのが怖くなります。

いま、求められているのは、官民共創によるグリーンオーシャンの推進による社会課題の解決、そして、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」という稼ぐ力とESGの両立を図りながら、社会や企業において、持続可能な事業モデルの視点がますます求められていくでしょう。

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