なぜ、日本は半導体供給体制の強化が重要なのか?

2024年6月25日
全体に公開

デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)の進展に伴い、世界全体で半導体や計算資源の需要が急速に増加しています。

経済産業省は2024年6月7日、「経済産業政策新機軸部会第3次中間整理」を公表。今回はこの中間整理の中から、半導体と計算資源の需要と供給の変化、日本の対応と課題についてとりあげたいと思います。

生成AIなどの進展で拡大する半導体・計算資源需要

半導体の需要は、短期的にはサイクルの影響を受けて変動するものの、DXやGXの影響で中長期的には需要が伸び続けると予想されます。特に、5G通信や電動自動車、再生可能エネルギー関連の技術進展に伴い、半導体の需要が増加しています。

また、生成AIの開発や利活用が急速に進んでおり、クラウドと同様に計算資源やデータ整備の重要性が増しています。例えば、自動運転技術やスマートシティの実現には、高度な計算能力と膨大なデータ処理による高性能な半導体と計算資源が必要となっています。

さらに、DXとGXの進展により、多くの製品に半導体が組み込まれており、情報処理量が爆発的に増加し、クラウド側での処理能力も向上させる必要があります。そして、エネルギー効率を改善させるために、高性能な半導体技術の開発競争が加速しています。

半導体の供給体制強化を

経済安全保障の観点からも半導体の供給体制強化がますます重要となっていくことが想定されます。日本は、国内での供給体制を強化するだけでなく、友好国・地域との連携を強化し、サプライチェーン全体の強靭化を図り、経済安全保障のリスクを最小化し、安定した供給を確保することが求められています。

AIやデータ通信に必要な先端ロジック半導体については、研究開発及び製造に係る設備投資が急増しており、高性能で低消費電力の半導体技術が求められています。また、データ記憶に使う先端メモリ半導体についても、継続的な設備投資と研究開発が行われ、大容量化や低消費電力化が進められています。

半導体製造装置や部素材についても市場が大きく成長しており、半導体の微細化技術や製造プロセスの高度化に対応するために、先進的な製造装置や高品質な部素材が必要とされています。

次世代半導体の開発においては、国内の高い技術力を活用し、研究開発を推進し、その中でエネルギー効率を改善し、高性能な半導体の開発に注力。これにより、日本は国際競争力を高め、世界市場でのシェアを拡大することを目指しています。

また、半導体分野における次世代の技術革新を担う人材の育成が急務となっており、中でも半導体の設計や研究開発を行うための高度な技術を持つ人材の育成が必要とされています。

今後の展望

生成AIなどデータの加速度的増加により、半導体や計算資源の需要は今後も拡大していくことが予想されます。日本は供給体制の強化や技術革新、人材育成を進めることで、世界市場における競争力を維持・強化していく必要があります。

特に、研究開発の強化や国際協力の推進を通じて、革新的な半導体技術の開発と実用化を加速させ、日本は半導体産業におけるリーダーシップを発揮し、持続的な成長を実現していくことが期待されています。

日本の半導体戦略は、これからの日本の産業競争力を占う上でも、中長期的かつ大局的なアプローチが求められています。

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