SXSW探訪記②スタートアップピッチ編〜Enterprise/Smart Dataカテゴリ〜

2024年5月15日
全体に公開

前回記事に引き続きSXSWのスタートアップピッチに出ていた企業をご紹介できればと思います。SXSWとは?みたいな方はぜひ前回記事をご覧ください。

おさらいになりますが、SXSWではいくつかのカテゴリに分けてピッチコンテストが行われています。今回はEnterprise & Smart Dataに出ていたスタートアップを備忘がてらまとめておきます。。このセッションではB2Bソリューションやデータビジネスに関する色々なスタートアップがプレゼンしていましたが、実際のプレゼンを聞いてみると事前に受けていた印象とは異なるものでした。

1. AI, Voice & Robotics ← 前回記事でご紹介
2. Enterprise & Smart Data ← 今回ご紹介
3. Extended Reality and Web3
4. Food, Nutrition & Health
5. Future of Work
6. Innovative World Technologies
7. Smart Cities, Transportaion & Sustainability
8. Student Startup

Aiki

学校における生徒の安全を守るためのクライシス管理用ソリューション。プレゼンの冒頭に「学校における銃乱射事件から生徒を守る」みたいな話があり、日本的な感覚からするとかなり度肝を抜かれてしまいました。悲しいことに学校における乱射事件のニュースは定期的に発生してしまいますが、そういったところにもテクノロジーが貢献できると素晴らしいことだと思います。

少し別の着眼点で見ると、共同創業者のお二人がいずれも15年以上消防署やパブリックセーフティドメインでの勤務経験があるというのも興味深いポイントです。アメリカならではのスタートアップエコシステムの裾野の広さを感じるサービスでした

Diagon

https://www.diagon.ai/

グローバル調達網を支援するプラットフォーム

製造業向けの部品調達を解決するプラットフォーム。まだ一部の大手企業向けのみのサービス公開のようですが、アメリカ国内において、CNC加工や3Dプリンター品など各種部材の調達元を探し購買管理まで行えるサービスのようです。

プレゼンのなかで紹介されていましたが、実際製造工場の拠点はアメリカ国内だけでなくアジア圏に広がっているので、日本においてもパートナーを探しているとのことでした。ご興味ある方はリーチアウトしてみると良いのではないでしょうか。

Revent NV

ベルギーのスタートアップがリリースしている、eコマースにおける広告最適化をAIを用いて行うサービス。一般的にeコマースの広告パフォーマンスはROAS : Return On Advertising Spendによって図られますが、RevendはAIをつかった24/7の監視によってROASの最適化をリアルタイムに支援してくれます。少しサービスの様子も拝見しましたが、リアルタイムに最も効率がよい広告を見つけて広告費用配分の最適化をサジェストしてくれるようでした。

Revendのプレゼンの様子。リアルタイムROAS最適化AIが一番の特徴とのこと。

質疑応答の中で「AmazonやShopifyなどのプラットフォームから提供される情報では足りないのか?」という話が出ていましたが、欧州ではアメリカと異なりD2Cブランドが少なくマーケットプレイスでのECが中心となるため、いかにマーケットプレイスにおける露出を増やすかが重要になるとのことでした。

Swif.ai (⭐️Category Winner!)

生成AIを使った高度なデバイスマネジメントツール。日本で言えばジョーシスにChatGPTがついた様なサービスでしょうか。ITチームやHRチーム向けに、社内のITデバイスの管理・セキュリティアセスメント・ITコンプライアンス管理を、優れたUIで統合的に提供することができるとのことでした。

プレゼンによれば引き続き非常に大きなマーケット成長が期待できる領域で、現状はSMB向けまでのプロダクト展開に限られているものの、今後はエンタープライズ領域への拡大も目指していくとのこと。

デバイスマネジメント市場のTAM/SAM/SOM。

個人的にはプロダクトへのChatGPTの統合がすごく上手だなと感じました。管理対象端末が増えれば増えるほど実際のデバイス管理は非常に煩雑になり、個別の端末ごとのセキュリティリスクの把握などは大変になってしまいます。

彼らのサービス説明によれば、SwifのデータをChatGPTに処理させることでチャット形式で個別端末ごとの状態を簡単に吸い上げたレポート作成の指示ができ、その内容に応じて端末保有者へのガイダンスメールまで一気に作ってくれるようです。膨大なデータ量の処理をさせるためのUIとしてはかなり有益なGPT活用だと感じましたし、何より技術公開から3ヶ月程度で新しい技術をプロダクトに取り入れるスピード感も素晴らしいと思います。

Unified API

HR・採用管理・財務管理など、企業活動に必要となる様々なサービスのAPIを統合したサービス。Unified APIを使うことで、その名の通り彼らの提供する単一のAPI経由で様々なサービスを統合することができるようです。まさにSaaSの潤滑油のようなサービス。

業務インフラとして社員データベースなどの共通基盤に各種SaaSを都度統合する手間を考えると、開発者においては開発工数も管理工数も下がるかなり便利なサービスだと思います。創業チームもエンジニア出身で、複数のサービスを都度組み込む手間を感じたので開発したとのことでした。

Unified APIが対応しているサービス分類。

サービスそのものはあまり目新しさはない様な気もしますがかなりのサービス数をすでにカバーしているようで、目算で200以上の業務SaaSがUnified経由で利用できるようです。

さらに彼らのウェブサイトを見ると、未追加のサービスについても誰でもリクエストがあげられる様になっており、Changelogをみると毎週どころか3日に一回くらい(タイミングによっては1日1回!)は何かしらサービス改善が続いていて、壮絶な勢いでカバレッジを日夜広げ続けているようです。

新しい技術でも解くべき課題の着眼点でもなく、とにかくカバレッジとスピードで勝ち切るんだ!みたいな(力押しの?)プロダクト戦略が見て取れて、日本ではあまり見ないタイプのスタートアップな気がします。個人的には愚直にモノづくりを突き詰めている姿勢は結構好き。

まとめ&雑感

こうして並べてみると、あんまり"Enterprise & Smart Data"というカテゴリのイメージにはないスタートアップが選ばれていた様な気がします。むしろAikiのような重要度の高い社会課題への対応サービスからUnified APIのようなエンジニアリングゴリゴリのサービスまで、スタートアップの裾野の広さを感じるセッションでした。

別の視点として、Category Winnerに選ばれたSwif.aiやRevendのように、大量のデータを人間がtangibleに使えるように咀嚼するインターフェースとして生成AIを活かすサービスが多かった印象です。LINEやMessengerなどのメッセージサービスが市民権を得ているなかでチャットベースのUIを取り入れることは生成AIをうまくプロダクトに活かすいい着眼点なのかもしれません。

ちなみに、このセッションの合間でファシリテーターの方が言っていたコメントにすごく感動したのでご紹介します。たった一言ですが起業家に対するリスペクトに溢れていて、会場の雰囲気もあいまってすごく暖かい気持ちになりました。

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