新薬候補、ニッケルやリチウム、、、、深海に眠る無限の可能性とは?

2024年1月22日
全体に公開

 山あり谷ありながら宇宙開発への投資は続き、火星の表面はほぼ地図化されているものの、一方地球の海底のうち探査されている面積は全体の1/4以下と言われています。日本財団などの後援で昨年4月にロンドンで発足した"Ocean Census"は、今後10年間で10万種類の海洋生物を発見することを目指しています。モルヒネの1千倍の鎮痛効果を持つ化合物をつくりだす巻き貝・Conus magusなど、深海探査によって新しい化合物が発見されるかもしれないという期待も、この取組を後押ししています。

 より切実なところで、気候変動対策として深海探査を加速させる流れもあります。再生可能エネルギーの導入加速に伴ってバッテリー需要、その向こうにある各種鉱物への需要は急増しています。IEAの試算では、脱炭素化の目標を達成するためには2040年までに合計8千万トン、年間630万トンのニッケル生産が必要です。需要増加に対応してきたインドネシアは熱帯雨林を伐採して鉱物採掘を続けており、結果温暖化を加速させていると批判を受けている昨今の流れ。そこで、太平洋海底にある推定3.4億トン(!)とも言われる海底鉱脈に注目が集まっています。The Metal CompanyGlobal Sea Mineral Resourcesなどが海底探査のロボットを送り込んでいます。

https://metals.co/

 個別技術の開発も進みます。サンディエゴ拠点のスタートアップ・DeepWater Explorationは、推進400m以上でも歪みのない映像を提供できる小型カメラを開発しています。従来は研究者に向けて展開していたが、養殖場や海底鉱山探索企業、さらには窓や屋根の清掃を自動化するドローンメーカーなどにもプロダクトを提供しているとのこと。ロッキード・マーティンやGoogleも顧客ですって。すごい。

 日本でも、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的深海資源調査技術」の下で、南鳥島沖のレアアース泥開発に向けた海洋ロボティクス技術開発が進んでいます。コロナ禍をはさんだ5年間の成果が動画で発表されていますが、未来に向けて期待を持てる内容でした。ASVと衛星回線、複数の海中AUVが同時にコントロールされ、安定して資源を確保できる未来。

https://www.jamstec.go.jp/sip2/j/

 イーロン・マスクやジェフ・ベゾスが宇宙を目指すように、そろそろ深海・海底に目を向けるテクノロジー系大富豪が現れるかもしれません。海底にも夢が眠っていますから。

海底資源、大陸棚に照準 小笠原海台を追加レアメタルなど開発優先権 南硫黄島海域も狙う

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