ソフトウェアエンジニアの勉強と習癖

2022年8月29日
全体に公開

ソフトウェアエンジニアは業務外でも勉強するべきか否かという話題が、たびたび世間を賑わせる。

業務外に業務のことをするのが当たり前だとなると、なかなか過重労働じゃないか、だからあまりそんなことを当然だとするのは健全ではないのではないかという意見もある。

その一方、最新技術を用いて開発するのがスキルだし、医者も弁護士だって、どんな職能を持った人だって自分の腕を磨くのは当たり前だなんという主張もあったりする。

個人的には、人がプライベートな時間に何をしてようと好きにすれば良いじゃないかと思うし、スキルアップがしたいひともいれば、趣味に興じたい人もいるし、だらだらと寝ていたい人もいる。プライベートな時間でなくても、うまく仕事を進めて学んでいけるひとはそれでも評価されるだろうし、プライベートな時間を勉強に費やしていても実際にスキルが伴わない人は評価されないというのがフラットなものの見方だろうとおもう。

なので、この話題自体に大した興味が無くて、他人にとやかくいうのはやめた方が良いだろうという一般的な回答しか持ち合わせていない。

しかし、それとは別におやと思うことがあったのでつれづれに書いてみる。

たとえば、「最新のフレームワークの使い方を勉強する」と他の(Twitterでみかけた)エンジニアがいうようなときに、自分はそれを「勉強」というくくりに入れてないなと思ったのだ。

自分にとって技術的な"勉強"とは、ある種の課題解決を目指した取り組みの一連をさしていたりする。少ない欠陥データから効率よく学習する必要があるとなれば、何かしらデータを拡張する手法はないか?と探して調べて実装や実験をしてみるとか、プロジェクトの成功と人数の関係についてどのような研究があるのか、それは何かに応用できないかなどテーマをもって論文や書籍などを探ってみるとか、ある種の「スタディ」としての取り組みを意味していることが多い。

それに対して、新しいフレームワークをさわってみる、新しい言語でJSON Parserを書いてみて、感触を確かめる、GCPのあたらしいマネージドサービスで使ってみるという「やってみる」という部類のことは、情報収集とか、新しいエンタメを見る感覚に近い。

MCU映画の最新作が出たら、とりあえず見てみようとか、ドラマシリーズも見てみたほうが次回の小ネタに反応できるかな?とかそういう感覚に近い。もうすこし、技術よりにすると新しいVRヘッドセットがでるたびに買ってしまうとか、そういう好奇心と遊びの延長戦にある技術とのふれあい。

大体の最新技術としてのライブラリやフレームワーク、サービスはこれまでむずかしかったことが簡単になったというダウンサイズ・民主化の発露である。だからこそ、「あのむずかしかったアレがここまで簡単になったのかー!」という感動というか面白みがある。情報収集をしないという危機感というよりも、手習い・習慣、ある種の習癖でしかない。

たとえば、僕世代のWebエンジニアは本物のプログラマは毎年一個ぐらいは新しい言語を触ってみるもんだみたいな習慣というか因習があって、それを毎年お盆に墓参りするのと同じようなテンションで取り組んでいる(人もいる。

だから、受験勉強をするぞ!とか、資格を取るぞ!とか他の職種がイメージする勉強とずいぶんとちがって、改まった感じはない。結構、この情報収集というか習癖はエンタメ性が高く、その結果夜遅くまで没頭してしまい、うまく睡眠管理ができていないときは、朝が弱くて仕方なかった。遅刻癖があるが、妙にできるエンジニアがいたりするのは、こういう夜中調べ物に没頭してしまうということに関連していると僕は見ている。これが、ウォーキングデッドを順番に見るのが止められなくて睡眠不足になる人がいるのと似ている。似ているのだが、ちょっと仕事にも役に立つのだから言い訳ができてしまうというのも罪なところだ。

エンタメ性の高い情報収集をしていて、人間生活に一定の支障がでると、これも勉強だからとかエンジニアは業務外でも勉強した方が良いという主張とともに認知的不協和を解消するのだろうなというのが僕の見立てだ。だから、家族や他の人に対しては、勉強しているというスタンスを持ちたいし、社会もそうあってほしいという、そういったムードを求めてしまう。これをあまりやり過ぎると他人に干渉してしまって迷惑になってしまう。

この習癖、新しいものには触れてみたくなることを「勉めて強いる」というような「勉強」と思ってしまったり、コスパの良い勉強をして収入を上げるぞ!と意気込んでみたりすると急につまらなくなってしまう。これは僕の悪癖だとは思うが、面白くないことはできないのだ。でも、来年で40だし、直そうとも思っていない。

だけど、初学者にとって「エンジニアは業務外でも勉強したほうがいい」という話になるってある種のプレッシャーになってしまうのは、こういうエンタメ性の高い情報収集癖をもったエンジニアにとって本意では無いはず。すくなくとも僕はそう。

なので、僕が夜中まで勉強してました!と言っていたらそれは、海外ドラマの新作を一気見したので寝不足になったぐらいのテンションで優しく受け止めてください。

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