風を可視化するスタートアップがおもしろい
今回、紹介するのは京大発スタートアップのメトロウェザー。
これからの時代、ドローンや空飛ぶクルマの普及加速が想定される中、このメトロウェザーが重要な役割を担うかもしれません。
キーワードは「風」です。
☕️coffee break
メトロウェザーが開発するのは、「ドップラー・ライダー」と呼ばれる装置。リアルタイムで風況を予測する、LIDAR(ライダー)の一種です。
突風や乱気流の情報を、リアルタイムに取得するのはとても難しい。
それをクリアしたのがドップラーライダーで、簡単にいうと、赤外線レーザーを照射して、大気中の微細な塵に当たった散乱光を受信することで、風の動きを予測することができるようになったんです。
ドップラーライダーを開発する企業は多くありませんが、三菱電機などが開発するドップラーライダーが国内外の主要空港で導入されるなど、徐々に普及し始めています。
しかし、その多くはコンテナのような大きさで、1台あたり数億円に上ります。高性能を維持しつつ、小型・低価格化することには、世界中のプレイヤーが苦戦しているんですね。
そんな中、ドローンや空飛ぶクルマなど、次世代空モビリティの開発が急速に進んでいます。日本でも2022年12月から、ドローンが補助者なしで目視外飛行するレベル4の解禁や、2025年の空飛ぶクルマ実用化に向けた計画が進展しています。
特に地上付近で吹く風は、ビルや建物の影響を受けるため、突風が吹いたり、風向が突然変わったりします。それが街中でのドローン墜落などにつながったりする。
つまり、小型・低価格化されたドップラー・ライダーは、ドローン社会の実現には不可欠なんです。
🍪もっとくわしく
そうした中、ちょうど4月12日に、メトロウェザーが「第一号機の設置が完了した」と発表したばかり。
なぜ、メトロウェザーは小型・低価格化をうまくこなしているのでしょうか。
それは、京都大学内で約30年間研究されてきた、大型レーダー研究がコア技術となっているからです。
現CEOの古本淳一氏は自身の研究室で、気象レーダーを用いた乱気流の検出・予測技術の研究開発を進めており、同研究室のポスドクだった東邦昭氏とともに共同創業して、培った技術を事業化しました。
メトロウェザーは2016年から3年間、米海軍研究所から基礎研究予算を獲得していたほか、2021年には米TruWeatherと共同でNASAの研究開発プロジェクトも実施するなど、お墨付きの技術となっています。
🍫ちなみに
今回、第一号機が設置されたのは、大阪南港のアジア太平洋トレードセンター(ATC)。
ここは、大阪湾周辺ということもあり、地上周辺の風が非常に強いことで有名です。
そして、注目すべき点は、日本で空飛ぶクルマが実用化される2025年大阪・関西万博の会場(夢洲)からすぐ近くであること。
メトロウェザーのドップラー・ライダーは、半径10〜15km圏内の風向・風速を三次元で測定できます。
そのため、万博会場の上空を含めた、大阪ベイエリア地域全体の風をリアルタイムに計測・可視化できるようになるんです。
同社にとって、一号機の設置が大きなマイルストーンの到達であり、今後の事業拡大にも期待できそうです。
サムネイル画像:Unsplash/Jon Tang
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