10月もAIに資金が集中。海外調達額トップ5

2023年11月1日
全体に公開

10月は5社中、3社がAI分野での大型調達でした。

特に大規模言語モデルを開発するスタートアップに多額の資金が集まっており、足元ではフランスのMistral AIが設立約半年ながら、評価額10億ドルで資金調達に動いています

その他にも次世代エネルギーや、ヘルステック業界をリードするとして、期待されているスタートアップが大型調達を発表しました。

☕️coffee break

1. 🇺🇸Anthropic(アンスロピック):AIチャットボット「Claude」など、安全なAIシステムの構築

  • シリーズC
  • 資金調達額:20億ドル(約3023億円)
  • 投資家:Google

ここに注目👉Googleは5月にも5億ドルを投資しましたが、追加で5億ドルを投資し、中期的に15億ドルを投資することで合意しました。今期の売上見通しは1億ドルですが、評価額は約200倍の200億ドル以上になったことがわかりました。

対して、OpenAIは今期売上見通しが13億ドルで、評価額は800-900億ドルでセカンダリー取引(従業員による株式売却)に動いています。

Googleは、今回の投資契約の前にGoogle Cloudが、Anthropicと複数年で30億ドル以上の契約を結んでいます。その大型契約を獲得したことから、OpenAIの対抗馬として、さらなる拡大を目指すAnthropicにさらなる支援を行うことを決めたのではないでしょうか。

参考:5月に書いた記事

2. 🇺🇸Metropolis(メトロポリス):AI活用の駐車場運営サービス

  • 資金調達額:17億ドル(うち、融資6億5,000万ドル)
  • リード投資家:Eldridge Capital、3L Capitalなど

ここに注目👉CEOは、駐車場の検索・予約、モバイル決済に対応するスマートパーキング事業を展開していたParkMe(2015年にInrixが買収)の創業者で、駐車場領域での連続起業家。

Metropolisでは、コンピュータビジョン(AIカメラ)などを活用することで、駐車場を利用するドライバーはオンラインで決済ができるように、管理者はオンラインで駐車場の管理や価格設定を完結させることができるようになります。

今回の資金調達はナスダックに上場する駐車場管理企業「SP Plus」を15億ドルで買収するため。規制当局からの承認が下りると、米国で200万台以上の駐車場・空港シャトルバス事業などを手に入れるため、さらなる事業拡大を狙っています。

3. 🇺🇸Electric Hydrogen(エレクトリック・ハイドロジェン):電解装置システムの開発

  • シリーズC
  • 資金調達額:3億8000万ドル(約574億円)
  • 評価額:10億ドル
  • リード投資家:Fortescue Metals Group(鉄工業企業)、Fifth Wall(不動産特化VCが運営する脱炭素ファンド)、Energy Impact Partners(エネルギー特化VC)

ここに注目👉再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力で水を電気分解して、グリーン水素をせいぜいする際に必要な電解装置システムを開発しています。

グリーン水素は製造時にCO2を排出することがない、クリーンな製造手法ではあるものの、製造コストが高いことが課題になっています。ゆえに、投資家はこの分野への大型投資では、政府の補助金確保の動きを伺う、慎重な姿勢を見せていました。

Electric Hydrogenはグリーン水素を製造する企業の黒子で、市場に出回っている電解装置よりも安価でありながら、高効率のものを開発しています。

現在、2024年の稼働予定の大規模工場の建設に取り組んでおり、この工場が本格稼働すると、天然ガスから水素を製造した場合と同じくらいのコストでグリーン水素が製造できるようになる見込みです。

詳しくは『三菱重工、鹿島が出資するElectric Hydrogenが業界初のユニコーンに』

4. 🇨🇳智譜AI(Zhipu AI):大規模言語モデルの開発

  • シリーズB
  • 資金調達額:3億4000万ドル(約514億円)
  • 評価額:10億ドル(約1500億円円)
  • リード投資家: Tencent、Alibaba

ここに注目👉中国トップVCであるSequoia Capital China(HongShan)に加え、Tencent・Alibaba・Ant Group・Xiaomi・Meituanなど、大手テック企業がこぞって出資したことから、中国のOpenAIとして注目を集めています。

2019年にコンピュータサイエンスで世界トップレベルの清華大学の研究室から設立されました。

【超解説】MIT、スタンフォードを超えた「清華大学」のすべて

同社のAIチャットボット「ChatGLM」は、8月下旬に中国政府が初めて一般公開を承認したサービスです。また、大規模言語モデルの開発プラットフォームも提供していることから、今回出資したTencentや、Alibabaだけでなく、ByteDanceや、Baiduなどとも協業しています。

5. 🇺🇸Main Street Health(メイン・ストリート・ヘルス):米国農村地域向けのヘルスケアサービス

  • シリーズB
  • 資金調達額:3億1500万ドル(約476億円)
  • 投資家:Oak HC/FT(リード投資家)、ユナイテッド・ヘルスケア、CVSヘルスなど8社

ここに注目👉ヘルステック業界の資金調達が不振な状況での大型調達です。

Main Street Healthは、米国農村地域の小規模な個人診療所などと連携して、高齢者のプライマリケア(一次医療)をサポートしています。同社が雇用するヘルスナビゲーターを各診療所に常駐してもらい、そこから各患者を訪問して、予防検査の受診・処方箋の受け取り/処方などを、促します。

この仕組みは患者と深い信頼関係を構築し、治療効果を最大化することに焦点を当て、その成果に報酬が支払われるバリューベース・ケアと呼ばれています。

今回の調達資金をもとに現在サービス展開している18州から、26州へと事業拡大し、低所得(メディケイド)で田舎に住む高齢者でも気軽に医療サービスが受けられる世界を目指しています。

サムネイル画像:DALL·E 3による画像生成

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