ゴールデンウィークって必要なの?

2023年4月21日
全体に公開

こんにちは。前回までは東大合格者ランキングを元に日本の教育制度について考えてみました。

今回は少し趣を変えて、連休問題について考えようと思っています。

欧米の制度が必ずしも優れているわけではなく、また欧米と一口にいってもさまざまですが、とにもかくも欧米と比較して違和感を感じるのが日本の祝日制度です。米国の祝祭日は、州によっても異なりますが、日本の半分程度です。お正月もありません。観光シーズンもありますが、日本のようにぎゅうぎゅう詰めの新幹線で、わざわざ高い観光地に向かう風物詩(?)は見られないように思います。

GWをはじめとする大方連休について、家庭を持たれている方や経営者の中には、頭を抱えられている方も多いのではないか、と勝手に推測しています。「今年は大型連休」とニュースで聞くと、心弾ませる方がいらっしゃる一方、ため息もそれなりに聞こえてきそうです。実際、先日、サウナで、GWのニュースが聞こえてきた時、若い人たちからは笑みが、おじさんたちからは少し疲れた表情が、見えた気がしました。偏見かもしれませんが笑。

連休は自由を奪う?

自由は、個々人に選択肢がある状態を意味しますが、連休はこの自由を奪ってしまいます。

仕事をしようとしても職場が開いていない。家庭の雑務をこなそうにも銀行も役所も開いていない。くつろいだ時間を過ごそうにも、保育園や学校が閉まっている。仕方ないので旅行に行こうとすれば、混雑と浪費が待っている。

これが果たして自由と言えるのでしょうか?

保育園や学校が閉まってることは、特にサービス業に従事されている方々にとっては死活問題となります。連休はサービス業にとっては書き入れ時であるため、子供達を預ける先を探すのは大変だと思います。(ちなみに、「書き入れ時」とは、帳簿に数字を書き入れる様から来ているそうです。)

連休の定番といえば旅行ですが、感覚としては平日旅行の倍以上の出費が必要になります。数年前のGWでは、直前予約のため他に空きがなく、1泊5万円程度の旅館に泊まりました。平日同じ旅館に泊まったのであれば、 2万円も出したくないな、というレベルの旅館でした。

コンサルティングなどのB2B企業にとってみれば、ゴールデンウィークは1銭も売上が発生しないですが、一方で固定の人件費は流れ続けるので、零細企業にとってはかなりの負担になるように思えます。

もちろん連休によって潤う業界も地域もありますし、連休だからこそ家族が顔を合わせることができる方々も多いと思うので、連休制度が悪いものだとは一概には言えません。また企業勤めの方々にとってはさほど悪いものでもないのかもしれません。しかし、同じような不満は感じる方も少なくないのではないでしょうか?

そもそも、なぜ休日制度が始まったのか?

江戸時代には法定休日の概念はありませんでした。

産業としては農業が主体ですから、季節ごとの繁閑があり、また雨などでの実質的な休みもあったとも思います。祭りも村ごとによって決まっていたので、全国的に(あるいは藩単位でさえ)休日を統一することは難しかったのでしょう。

法定休日が始まったのは明治元年だと言われています。欧米に合わせる形で官公庁が土曜半休・日曜休日の制度を取り入れました。ちなみに、土曜半休のことを「半ドン」と呼ぶことがありますが、この「ドン」はオランダ語の「ゾンターク(休日)」から来ています。

祝日祭日が選定されたのは、明治6年のことです。昭和2年には年間11の祝祭日が休日と定められていました。これらのうち、7日は皇室の祭典にあわせておりました。

元始祭(1月3日)、春季皇霊祭(春分日)、神武天皇祭(4月3日)、秋季皇霊祭(秋分日)、神嘗祭(10月17日)、新嘗祭(11月23日)、大正天皇祭(12月25日)などですが、春分の日と新嘗祭(勤労感謝の日)以外は、現代では廃止されてますね。

これらに加えて、国民の祝日として新年宴会(1月5日)、紀元節(2月11日)、天⾧節(4月29日)、明治節(11月3日)がありました。紀元節や天長節は、戦前の文章を読むとよく出てきますね。新年宴会以外は、今では別の祭日になっています。この意味で、我々は「長い昭和」を未だに生きている、とも言えるのかもしれません。

「自由と平和を求めてやまない日本国民」?

我々が認識してるような形での国民の祝日は、昭和23年に選定されました。この中では、下記のように定義されています。

自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。
国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)

「自由と平和を求めてやまない日本国民」なんて、国民の祝日にはそんな高尚な目的があったのか!こんな高尚な「国民の祝日」と、それを実際に享受している現代人の感覚には、かなりのズレがあるような気もしなくはないです。

製造業にマッチしていた、日本のゴールデンウィーク

私見で語れば、日本にゴールデンウィークのような大型連休が根付いたのは、近代以降の産業構造の変化が理由だと思います。江戸時代のような農耕社会では、農業にとって重要な時期のゴールデンウィークやシルバーウィークは不可能です。

ことゴールデンウイークが重宝されたのは、近代日本が製造業中心であったことと大いに関係しているように思えます。昭和の工場の多くは、一度稼働を止めてしまうと再稼働までに時間がかかる代物でした。また、欧米のライン設計と異なり、日本の工場はすり合わせ型。工場員のあうんの呼吸による連携が不可欠でした。そのため、一人欠けても工場の稼働は難しいものでした。

ゴールデンウィークのようなまとまった休みは、社員に福利厚生をもたらす一方で、工場を完全に停止してしまうことができるので、製造業にとっては都合が良かったように思います。現代においても、ゴールデンウィークと夏休みに工場を止めてしまう製造業は少なくありません。

しかし、日本の産業構造を見れば必ずしも製造業を主体とは言い切れなくなっています。また、製造業にとっても、工場などの生産拠点は海外に移しているため、あるいはコンサルティングなどのサービスに変容しているため、国内の工場生産における稼働をそこまで重視する必要もなくなってきています。そうすると産業の実態としても大型連休がそぐわないため、(今でないにせよ)制度疲労の問題は出てくるような気がします。

日本人は本当に有給消化が少ないのか?

大型連休が産業構造にマッチしていたかどうかはともかくとして、現代において不思議なのは、祝日日数が年々増えていることです。

もともと昭和23年の戦後祝日制度の発足時には、祝日は9日しかありませんでした。 しかし、2023年現在では16日もあります。また、ゴールデンウィークなど、祝日が飛び飛びとなっている場合は(あるいは年末年始の土日との関係次第では)、実質的に祝日のような平日があるので、実感としては祝日がかなり多いように感じます。

日本の祝日は17日間ですが、香港は13日、米国・韓国・オーストリアは10日、フランスは9日、インドは6日となっています。

日本と文化・制度的に近いと言われている韓国ですら10日なので、やはり日本の祝日は多いと言わざるを得ないのではないでしょうか?

なぜこのように日本が祝日を増やしているのかについては諸説ありますが、よく言われるのは、日本人は有給休暇を取りづらい、というものです。

ただし、この点については欧米でもかなりの差があります。

休暇日数合計(法定祝祭日に平均消化有給休暇を加えたもの)としては日本の 27に対して、フランスでは39、アメリカでは24となっています。ほかに香港27、韓国17なので、日本が他国に対して有給消化が際立って低いというわけではなさそうです。

もっとも先述のように、ゴールデンウイークがあるからこそ有給消化が可能となっているという側面もあるので、断定的なことは言えませんが。

(各国の祝日・消化有給日数については下記のサイトを参考としました)

どのように連休を活かせばいいのか?

不満だけを言っていても仕方ないので、少し連休活用の示唆を出してみたいと思います。

かくいう私も日本の会社に勤めていたころは、連休が楽しみでしょうがありませんでした。公然と長い期間休めるのはゴールデンウィークぐらいだったので(そう考えると、やはり有給消化は、日本の会社ではなかなか難しいですね)、連休ほど胸をときめかせるものはなかったように思います(日本の会社は、ボーナスの増減幅も大したものではないですし)。

振り返ってみれば、ゴールデンウィークは同期と海外旅行に行ったり、河川敷きのバーベキューで朝から晩まで酒を飲んだことなどそれなりに楽しい思い出もあります。ここから考えれば、特に違う会社の友人と時間を合わせやすいのは、祝日ぐらいなので、連休に一緒の時間を過ごすことにはメリットがありそうですね。

しかし、コストパフォーマンスの観点で言えば、連休中に外出することは絶対に避けた方が良いと思います。あくまでコスパの観点だけですが、高くて混んでいるところにわざわざ出かけることにはほとんどメリットがありません。逆に言えば、コスパよく連休を過ごすには、引きこもるしかありません笑。

その意味では、中毒性もあり、見終えるまでに長い時間を要するコンテンツなどは理想的ですね。私が連休中に見ようかなと思っているのは次のとおりです。

①『ラストエンペラー(全長版)』

 この映画だけで4時間近くあります。『シェルタリング・スカイ』『リトル・ブッダ』の三部作見れば、丸一日ぐらいはつぶれそうです。お亡くなりになられた坂本龍一の偉、大さを感じるためにもよいのではないでしょうか。

②『東京裁判』

こちらも5時間近くあるので、「自由と平和を求めてやまない日本国民」であることを自覚するにも、祝日にうってつけのドキュメンタリーかもしれません。

③『映像の世紀』

音楽、映像、構成のどれをとっても素晴らしい『映像の世紀』は、全て見ると50時間近くあります。ゴールデンウィークをまるまる潰せます。

④ネットフリックス

①②③は少し重いタイトルが並びますが、楽しめて中毒性があって、しかも時間が潰せるものとしてはネットフリックスのドラマが良いかもしれませんね。

⑤『フレンズ』

英語学習の要素も加えたいのならば、定番のシットコムとしては、やっぱり『フレンズ』がいいですね(人によると思いますが)。下記のスクリプトは良くできていますので、シーズン5だけを見ても面白そうですね。

もし、一人で、コスパ最高のゴールデンウィークを送るのであれば、勉強も悪くありません。一週間通しで勉強すれば終わった頃には、少し賢くなれるかも?

一冊の問題集ですら、1週間では終わらないので、数千円で1週間すごせると思えばコスパはいいのではないでしょうか?実務的なものとしては、プログラミング言語など1週間あればマスターできるものもあるので、いろいろと選択肢があると思います。

では良いGWを!

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