米国のお買い物アプリ「Ibotta」の上場で億万長者が150人以上誕生

2024年4月24日
全体に公開

4月18日にキャッシュバック・サービスを展開する、米スタートアップのIbotta(アイボッタ)がニューヨーク証券取引所に上場しました。

当初の公開価格は1株74ドルから、84ドルにまで引き上げられたIPOは、初日から一時33%の上昇。時価総額は約27億ドル(約4,174億円)となりました。

これにより、株式(ストックオプション)を保有している150人以上の社員が、実質的な億万長者となりました。今回は、そんなIbottaの成長ストーリーを振り返っていきます。

サムネイル画像:©︎ Unsplash/Nomadic Julien

☕️coffee break

IbottaのCEO、ブライアン・リーチ氏は、国際仲裁と紛争解決業務を専門とする法律事務所で勤務しており、飛行機で世界各地を飛び回っていました。

あるとき、別の乗客が国際線の機内で経費申請のために、領収書をアップロードしている光景を目にしました。

「領収書・レシートの情報をさらに有効活用することはできないのだろうか」

これが、2011年のIbotta創業につながります。

Ibottaは消費財ブランドが、「Ibotta Performance Network (IPN)」 と呼ばれるネットワークを通じて、2億人以上の消費者に広告配信ができるプラットフォームを運営しています。

Ibottaのアプリやサイトを利用する消費者は、買い物後にレシートをアップロードすると、対象商品に対して、(現金もしくはギフトカードで)キャッシュバックされるという仕組み。消費財ブランドがIbottaでの広告配信に支払った広告費の一部が、消費者に還元されています。

これまでは消費財ブランドが、新聞やチラシにクーポン広告を出稿し、消費者はそれを店舗に持参する必要がありました。

それがIbottaの利用に置き換わることで、消費者はクーポンを持ち運ぶ必要がなく、消費財ブランドはデータを活用して、より効率的に商品を宣伝することができます。

「Ibottaが生み出す2つのフライホイール効果」

*フライホイール効果:一度そのサイクルが回転し始めると、徐々にその勢いが加速して、規模の経済により、顧客価値の向上につなげられる(AmazonやGoogleが代表的事例)

Ibotta S-1資料より

①消費財ブランド(コカ・コーラなど)のフライホイール:

消費者が増える→消費財ブランド(Ibotta顧客)が増える→キャッシュバック・オファーが増える→購買に影響を与える→個人の購買データが増えてパーソナライズ化→消費者が増える

②小売店(ウォルマートなど)のフライホイール:

Ibottaを導入する小売業者が増える→消費者が利用しやすくなる→キャッシュバック商品が増える→購入量が増える→頻繁に店舗を訪れたくなる→小売業者が増える

→Ibottaのプラットフォーム全体で、消費者・消費財ブランド・取り扱い小売業者が増加し、生み出す価値の増加につながる

2023年12月末時点で、Ibottaプラットフォームには850社・2,400以上のブランドが参画しており、ウォルマート・クローガーなど85の小売店での買い物で活用できるようになっています。

Ibotta Form S-1資料より

🍪もっとくわしく

IbottaはIPOの直前で公開価格を1株74ドル→84ドルに修正、売出株数を560万株→650万株に拡大しています。

にも関わらず、初日に株価は一時33%上昇し、終値ベースの時価総額は約27億ドル(約4,174億円)となりました。現在も株価はそれほど落ち込んでおらず、一定の評価を得ていることがわかります。

CEOによると、今回のIPOにより、株式(ストックオプション)を保有している150人以上の社員が、実質的な億万長者となったようです。

現在、米国ではインフレが長引いていることから、キャッシュバック・サービスに追い風が吹き、魅力的な市場となっています。

この市場を狙うのは、PayPalが40億ドルで買収したHoney、ビジョンファンド投資先のFetch Rewardsをはじめ、大手ではGroupon、楽天まで、非常に競争が激しくなっています。

とはいえ、Ibottaは設立12年間は黒字化ができず、2022年初頭には現金だけが燃焼し、ほとんど事業成長をしていない状況に陥っていました。

Ibotta Form S-1資料より

Ibottaは個人向けだけでは限界があると考え、新たな打ち手を講じて、2021年にウォルマートと戦略的提携を締結。大手小売業者が自社サービスにIbottaのキャッシュバック機能を組み込めるサービスをリリースしたのです。

現在、この事業が成長の柱となっており、急速に事業成長を遂げていることが下図からわかります。

Ibotta Form S-1資料より

その結果、2023年度の収益は3億2000万ドル(YoY+52%)、純利益は-5490万ドル→3810万ドルと、初の黒字化を達成しながら、高い売上成長を記録しました。

🍫ちなみに

メルカリは従業員の6割以上にストックオプション(SO)を付与した状態で、上場しました(上場初日の終値時価総額は7,173億円)。

上場日の終値5,300円をもとに保有株式を掛けると、実に35名が6億円以上の株式価値を保有していたのです(SOの条件などは考慮していない)。

「35名が6億円以上の資産、メルカリが証明したスタートアップドリーム」

その結果、現在ではメルカリ・マフィアというワードが広がるほど、多くの人材輩出につながっています。

今後、Ibotta出身者から、著名なtoCサービスを構築する人材が生まれるかもしれませんね。

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・米国IPO企業の目論見書「Form S-1」の読み方(初心者向け)

・Ibotta Form S-1:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1538379/000162828024012708/ibottas-1.htm

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