関西物流展で感じたフィジカルインターネットの兆し

2024年4月21日
全体に公開

去る4月10日~12日にインテックス大阪に於いて関西物流展が開催されました。その中で私の目に留まった展示はデベロッパーである霞ケ関キャピタル。「冷凍冷蔵倉庫のネットワーク化」という耳慣れないコンセプトを打ち出していました。

テナントとの契約形態をこれまでの固定の料金体系から従量課金に変更。テナントは物理的にどの倉庫に保管されているかに関係なくパレット単位やケース単位で入出荷/保管料を支払う。霞ケ関キャピタルは、複数倉庫の稼働状況や保管率といったデータをモニタリングしながら(=ソフト面でネットワーク化しながら)、最適なロケーションに商品を保管し、稼働率と売上を最大化する。まさにAWSの世界観。フィジカルインターネットの世界観。

AWSと違い、物理的な商品の移動は荷姿の標準化や品質劣化リスクなど多くのハードルがあると思いますが、3PLやConventionalなデベロッパーではなく、物流領域ではNew comerな霞ケ関キャピタルがフィジカルインターネットの世界観に挑戦していることに注目です。

霞ケ関キャピタルの挑戦

同社代表は学生時代の友人ですが、断りなく勝手に想像で書いています笑。お許しあれ。

そもそもデベロッパーとテナントの契約形態は、単価xスペースx期間で握るのが一般的。例えば、5,000円/月・坪x3,000坪x60か月間という感じに。テナントからすると保管量や繁閑の差にかかわらず9億円のポジションを持つことになります。異物混入を嫌がる冷凍冷蔵倉庫は特にこの傾向(一定スペースを専有)が強い。

霞ケ関キャピタルの取り組みが面白いのは、過酷な労働環境の冷凍冷蔵倉庫に自動倉庫などの設備やロボットをプリセットして省人化。入出荷と保管サービスを『従量課金』という新しい契約形態で打ち出していること。季節波動が大きい冷凍冷蔵食品の保管ニーズにターゲットを絞り、デベロッパーの枠組みを超えて物流業務の受託に取り組み始めたと言えます。これは私のコラム「装置産業化する物流 勝ち組の行方は?」で触れた内容に通じるものがあります。

装置産業化する物流 勝ち組の行方は?

更に積極果敢に複数物件の開発に着手しており、各倉庫の稼働状況を見える化するツールを導入しています。残念ながら私が販売しているスマイルボードコネクトではないのですが、目指すコンセプトは同じ。どの倉庫にも標準の可視化ツールを導入することで、統一基準で各倉庫の稼働状況や余力が可視化されます。物理的に商品を移動することはコストも発生し品質リスク含めてAWSのように簡単ではないですが、在庫配置の最適化やダイナミックプライシング(満床倉庫の単価を上げる)が理論上は可能になるわけで、業界慣習を変える可能性を秘めています。同社の挑戦を応援したい。

Unsplashのfrank mckennaが撮影した写真     

プロダクトアウトではなく、マーケットインの発想からも

「戦争とロジスティクス/日本経済新聞出版/石津朋之」を読みました。「ロジスティクスは決してグラマラス(魅惑的)な領域ではない。それにもかかわらず戦争に勝利するには必要不可欠な領域である。」等々、物流業界で働く私にとって大変示唆に富む表現/内容が多くあったのですが、何より目に留まったのは以下の一行。

テロやゲリラとの戦いに象徴される「新しい戦争」の時代の要請に応じた、新たなロジスティクスの在り方が求められる。

その一例として『シー・ベイシング』のコンセプトが紹介されていました。翻って、ビジネスの世界はどうか。小売り業界はもはや10年前の常識は通じない世界。戦争と同じく、誰も予想出来ないゲリラ的な流行に対応するロジスティクス/サプライチェーンが求められています。

私は、それこそフィジカルインターネットのシクミだと考えます。どちらかと言うと人手不足やコスト低減の観点で語られるフィジカルインターネットですが、時代の要請としてその必要性が増していることを感じています。

トップ画像:Unsplashbert bが撮影した写真

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