装置産業化する物流 勝ち組の行方は?

2023年9月6日
全体に公開

物流はサービス業。3PL(Third Party Logistics)の差別化要素は提案力。お客様の様々な(時には無理な!)要望に労働集約的に応えられるかどうかが決め手。

物流業界、そんな風潮が続いてきました。しかし、潮目が変わりつつあります。

物流センターの大型化、後継者やドライバー/作業者不足に起因する約6万社の運送事業者の合従連衡、倉庫内の機械化/ロボット化(従業員の能力で差別化が困難)、データを収集/活用することによる(AIや量子コンによる)最適化の実現などなど。

これらの環境変化が、物流事業者に変化を迫ります。「データを活用した最適化」が現実化することは、GAFAMよろしく、データを収集/活用出来るプレーヤーだけが勝ち組になる時代の到来を予見させます。物流センターの大型化や機械化といったハード面の装置産業化が進むだけでなく、今後、ソフト面でもWinner takes allの装置産業化が進む。当然、物流業のValue propositionも変化するでしょう。

UnsplashのManuelが撮影した写真     

物流センターの大型化の背景

最近、高速道路を走っていると驚くくらいの大型倉庫を目にすることが増えたのではないでしょうか。ECの伸びで需要サイドのニーズが高まっていることは理由の一つですが、供給サイドの理由もあります。元々、物流を効率化する手段としてハブ&スポークの輸配送ネットワークや固定費比率低減のための拠点集約という考え方はありました。これに加えて、直近10年は不動産金融マーケット(REITや私募ファンド)が形成され、更に低金利の時代が長く続いたので安定した利回りを期待出来る物流不動産に投資マネーが流入し、供給能力が増加しました。

物流センターが大型化することで、何が起きるのか?

・ 拠点が集約されるため、設備投資/ロボット投資をしやすくなる。

・ 一拠点あたりの作業員数が増え、人員の管理工数が増える/難しくなる。

・ 複数案件を一拠点で運営することになる。複数システムが運用される。

  複数のKPIが運用される。

・ 物理的に管理者から見えないエリア/オペレーションが増える。

複数フロアや複数センターに跨る複数案件を、ロボットや設備と作業者が混在する体制で運用し、全体最適を実現しなければならない時代になるのです。その難易度に目が眩みそうです。言い換えると、物流の装置産業化が進み、物流業の差別化ポイントが変化する。

UnsplashのTonikが撮影した写真     

物流DX視点での国際物流総合展の見所

来る9月13日から15日の3日間、東京ビッグサイトで物流業界としては最大級の展示会が開催されます。どうしても最新鋭のロボットや大型設備の展示に目を引かれますが、私のポイントは「物流の効率化はロボット投資だけではない。」です。

国際物流総合展2023 第3回 INNOVATION EXPO 公式サイト

ここまでお付き合い頂いた方には私の言いたいことが分かって頂けるのではないかと思います。そうなんです。ロボットや設備そのものを否定するわけではないのですが、それだけでは全体最適は実現しません。WES(Warehouse Execution System)と言われる領域が注目されていますが、私の関心もそこにあります。その観点で展示会でのMust-visitのブースを三つ紹介します。

1.住友商事 Smile Board Connect

物流センターの作業計画作成~進捗モニタリングをするソフトウェアです。特徴は、量子アニーリングの技術を活用した物流センター内の要員配置最適化機能を持つこと。量子コンの実装という観点で画期的ですし、既に複数のユーザーが商用利用している点も評価。何よりもデータを活用した全体最適の思想があるところが素晴らしい(手前味噌ですが・・・笑)。

スマイルボードコネクト

2.ゼネテック FlexSim

3Dシミュレーションのソフトウェアです。製造業では設備投資をする際に一般的に行われている3D環境でのシミュレーションですが、物流業界ではこれまで大型設備投資の機会が少なかったこともあり、活用されることは稀でした。しかし、これからは違います。この手のツールが必須になるでしょう。そしてデジタルツイン活用の橋頭保になるはずです。

FlexSim

3.Hacobu MOVO

元々注目度の高いトラックバースの管理ツールです。2024年問題で更に注目されています。唯、トラックバースだけが効率化されても嬉しいのは待ち時間がなくなるドライバーだけ(もしかすると休憩時間が減って喜んでいないかも・・・)。同社はTMSと言われる輸配送管理やSmile Board Connectのような倉庫内管理ツールとの連携で全体最適の実現を志向しています。

MOVO Berth(ムーボ・バース) 

私のコラムを見られて物流業界にご興味を持って頂いた方には是非会場へお越し頂ければと思います。私も3日間、住友商事のブースでお待ちしております!

トップ画像:UnsplashMarcin Jozwiakが撮影した写真

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