AI、テスラ、宇宙まで。イーロン・マスクのビジョンが分かる必聴ポッドキャスト

2024年4月12日
全体に公開

トピックスオーナーの前田謙一郎です。

今週、イーロンはx.comのスペースでノルウェーのヘッジファンドマネージャー、ニコライ・タンゲン氏とポッドキャストを行い、AIからテスラ、火星、ゲームやマネジメント、後世に残すものについてまで様々なことを話しています。

特に今回のニコライ・タンゲン氏とのポッドキャストは質問も的確でイーロンも色々なトピックについて澱みなく話しており、素晴らしいエピソードだったという評価が多く、このように多岐に渡った彼のビジョンや哲学を聞ける事はあまりありません。AIへの注力、火星への移住、x.comのビジョンなど地球や人類全体に対する哲学には心を動かされます。

ちなみに、先週もアメリカのMSM(メインストリームメディア)ではイーロンのツイートの言葉尻を取ってネガティブに仕立て上げた記事がたくさん出ていました笑。フィルターが掛かった二次情報でなく、実際のインタビューなど一次情報から状況を理解することはとても有益です。

ニコライ・タンゲン氏とは?

ニコライ・タンゲンはノルウェーのヘッジファンドマネージャーで、ロンドンに拠点を置く投資会社AKOキャピタルのファウンダーでした。2020年以降はノルウェー中央銀行の一部である、ノルゲス銀行投資管理(NBIM)のCEOの役職についています。

アートコレクションに囲まれるタンゲン氏 画像:https://www.nbim.no

個人の純資産もThe Sunday Timesのリストにランクインし、アートや教育への投資も行いながら、近代北欧アートのコレクションも世界一の数を所有していると言われています。

以前からテクノロジーや持続可能なエネルギーといった分野で最も先駆的な起業家の一人であるイーロンからインサイトを得るべくポッドキャストへのオファーを2年以上出していました。基金の投資決定や戦略を形成するのには非常に重要であり、今回それが実現しました。早速ですが、以下がポッドキャストのハイライトです。

AIの進化と今後について

イーロンはAIの進化を「これまでに見たどの技術よりも速く進化している」と述べています。AI専用のハードウェアが急速に増え、ソフトウェアのブレークスルーが重なり合うと、年に10倍以上のペースで成長する驚くべき成長曲線になるとのこと。イーロンの予測では、来年末までにはどんな人間よりも賢くスマートなAIが現れ、5年以内には、AIが全ての人類ができる計算能力を超えると予測しています。

 テスラが開発する人型ロボット Optimus 画像:x.com@_milankovac_

そのAIの進化に向けて、現在のAI競争は、アルゴリズムの革新、高度な計算能力、優秀な人材の獲得、そしてチップなどのハードウェア供給に関する問題が主なフォーカスだと述べています。特にチップ供給の問題は昨年より続いています。

さらに、AIに必要なトレーニングデータの量には限界があり、全ての書籍・本やビデオ、ポッドキャストなどを含めてもまだ不足しているとも言及しています。例として、地球にある全ての本(それもすべての言語で人類によって書かれた)を考えると、すごく膨大な量に聞こえますが、実際にはトレーニングトークンとしては少ない数!このコメントを聞くとAIが自動学習で実際に人間の知を越えていくのはすぐのように感じます。

これらのデータ不足に対処するためには、合成データやリアルなビデオデータが必要になるのですが、ここで、テスラの車両から送られてくるリアルワールドのデータが、大きなアドバンテージをもたらしていると言っており、イーロンの全ての事業が密接につながっていることがわかります。

そして最後にはx.comでのトピックにも関係してきますが、AIの規制についても触れています。イーロンはAIの安全を監視するために規制機関が必要だと述べています。ご存じのとおり、飛行機や車、薬品など規制機関は多くあります。

そしてAIをできる限り事実に基づいたものにする訓練が重要であり、政治的に正しいプログラミングが将来的に危険を引き起こす可能性があると警鐘を鳴らしています(GoogleのGeminiのジョージ・ワシントンを白人として描く画像を生成することを拒否したことを例として挙げていました)

テスラ、中国EVメーカー、インドについて

ニコライ・タンゲンがノルウェーの出身ということもあり、ノルウェーのEVのシェアの高さにはイーロンから感謝の言葉がありました。(2024年1月時点で、ノルウェーのEVの市場シェアは82%で、2024年には95%に達する可能性があると予測されている)

すべての車が最終的に電気自動車になることは「避けられない運命」と位置づけ、それが早ければ早いほど良いと述べています。

中国メーカーとの競争については、これまで述べていたように、「中国の会社は世界で最も競争力がある」と感じているようです。イーロン自身は最近、中国車をアメリカで乗ることはできないので、乗ってはいないがテスラチームからのレポートでは非常に高品質だと理解していると述べています。

さらに、つい一昨日もイーロンが月末にもインドのモディ首相を訪問するというニュースがありましたが、インドへの進出については期待を持っているようです。「インドは現在世界で最も人口が多い国であり、他の国々と同様に電気自動車が必要、そのためインドに電気自動車を提供するのは自然な流れ」とのこと。

昨年のインド訪問 画像: x.com/Narendra Modi

今回のポッドキャストではあまり車については言及されてませんでしたね。

話題は変わって宇宙や火星への移住について

「もし恐竜が宇宙船を持っていたら、彼らは今でも生き残っていたかもしれない」このように、人類も多惑星種「マルチプラネタリー」となることで、知性の寿命を最大限に伸ばすことができると考えているようです。

火星に自給自足の植民地を作るには約100万トンから1000万トンの資材が必要。そして、その達成には約1万回の宇宙飛行が必要だと説明しています。資材を全て送るの20年以内、最初のスターシップが火星に着陸するのは約5年以内!に行われると述べています。

宇宙の話になると私もちょっと想像がつき難いのですが、彼のビジョンにはただ驚きです。最後に、地球で長期的に住み続けても、太陽が膨張し、最終的に地球上のすべての生命を絶つ。地球上でどんな注意深い行動をとっても、地球上の生命は必ず滅びる、のような破滅的世界観の話になり、ニコライ・タンゲンがそろそろ明るい話にしようと話題を変えます笑

Xについてのビジョン

宇宙や火星からXの話題に。イーロンのXについてのビジョンは彼も色々なところで述べているように以下のように話していました。

私たちの目標は、インターネット上で最も信頼できる情報源となること。「Everything app/何でもアプリ」と呼んでいて、Xプラットフォームであればテキスト、オーディオ、ビデオ、支払いや決済、あらゆる種類の通信など、何でもできるようにすること。また、公に流されるニュースや情報としては、最も信頼できる情報源であると述べています。

そして、イーロンが強調していたのは「多くの人々は依然として古い新聞が真実を伝えているという幻想に囚われています」ということでした。

私も毎日アメリカの大手メディアのニュースを見ていると、この「インターネット上で最も信頼できる情報源」であることは非常に共感するミッションです。たとえ悪意あるポストであってもコミュニティーノートや返信で真実を伝える。イーロンもXの役割については以下のような哲学的なコメントで説明しています。

私たちは地球の人々に奉仕し、地球の集団意識のようなものを目指す、つまり人が地球の集合的な脳に寄与するニューロンのようなもので、人類の集合的意志であり、より大きな善を目指すことが私たちの目標です。
Overall, we are trying to serve the people of Earth, each person is like a neuron contributing to collective brain of Earth, This is what is the collective will of humanity and serve the greater good that's our goal.

個人的には、このようなイーロンのビジョン聞くとテスラとエナジーで持続可能なエネルギー社会の実現に貢献し、Xでは人類の集合体意志により大きな善を目指す、地球や人類への貢献を本気で考えていることに共感しかありません。

画像:Getty Images 

最後に「自分が後世に残すもの」を聞かれる

最後に、「What do you want your legacy to be?」として、自分の成果や後世に残すものについて聞かれます。それについてイーロンは「Future of Consciousness」という表現を使っており、人間の意識の未来ために正しいことをしたと感じて死にたい、宇宙やシミュレーションの本質についてもっと理解したい、私の哲学は好奇心に基づいている、というようなことを述べていました。

Future of Consciousness、つまり、イーロンがテクノロジーやAIの発達、ニューロサイエンスなどが意識の理解と概念をどう変えうるか、そしてそれらが人類の未来にどのような影響をもたらすかということに多大な興味があることだと思います。先日もNeuralinkでBCI(Brain-Computer Interface)埋め込み手術の最初の治験者へのインタビュー動画が公開されていましたね。

今回のポッドキャストはアメリカのXで大変盛り上がっていたので、聞いてみましたが本当に素晴らしいエピソードでした。それではまた次の記事でお会いしましょう!

TOP画像:www.youtube.com/@norgesbankinvestmentmanagement

トピックスオーナー:前田謙一郎 マーケティングコンサルタント&自動車業界アドバイザリー。テスラ・ポルシェなどの外資系自動車メーカーで執行役員等を経験後、2023年Undertones Consultingを設立。

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