「ポスト2022年」にピンとくる農業者&不動産関係者
2023年度も終わりです。2023年はつまりポスト2022年でした。
「2022年問題」というのをご存じでしょうか?
どの世界にもその手のワードは人気です。運送業の2024問題、過去を振り返れば2000年にいろんなシステムが20世紀と21世紀を混同して大変なことが起こる!ということが話題になりました。
それと同様に農業界もしくは不動産業界における「2022年問題」というのがあったのです。
地下崩壊!?と話題になった2022年問題
東京都にある「生産緑地」(固定資産税が大幅に減免された都市農地)が2022年に一斉解除になると東京だけで東京ドーム701個分の農地が宅地となって地下崩壊をもたらすかもしれない・・・という文脈で東洋経済に詳しく特集されたりしました。
荒く説明するならば
「都市農地は本来であれば宅地並みの固定資産税や相続税が発生するのだが、農家が農業を営むうちはそれが大幅に減免あるいは猶予されている。しかし2022年にそのタイムリミットが切れるため膨大な都市農地が不動産市場に乗ってくる可能性がある。これは不動産業界にとってピンチかチャンスか⁉」(小野の解釈)
ということです。
結果として行政は生産緑地制度を10年延長できる「特別生産緑地法」を整え、日本全国の9割ほどの生産緑地が解除を延長されたので、不動産市場を揺るがすような事態にはなりませんでした。
そして今月発刊されたのが、
「ポスト2022年の都市農地」という冊子です。
これは一般財団法人「都市農地活用支援センター」という団体発行の事例集なのですが、この団体は国交省、農水省、東京都、大阪府、愛知県、そしてURという日本の国土に関するメインプレイヤーが設立した由緒正しい団体です。
都市農地等の計画的な利用・保全による良好な居住環境を有する宅地の形成、優良な賃貸住宅建設及び都市農地等と宅地が調和したまちづくりを促進するための調査研究、事業支援、居住環境の維持改善、普及啓発等を行い、もって国民の生活の向上に寄与することを目的とする。
つまり都市開発と都市農地活用の間を取り持つ立場にあり、時々発行するマニアックだが注目度の高い事例集第4弾が「ポスト2022年の都市農地」でした。
コミュニティ農園「くにたちはたけんぼ」の独自路線
ちなみに、その表紙の写真は、私が設立した東京都国立市のコミュニティ農園「くにたちはたけんぼ」です。
事例としては特異でありながらトップバッターにて取り上げていただいています。(すみませんドヤりました)。
公的研究なので冊子はフリーにて閲覧できます
「ポスト2022年の都市農地」PDFダウンロード
(うちの紹介16pからなのでぜひご一読ください)
内容としては、実際に都市農地を活用してどのような事業が展開されているかという事例が多いのですが、
いわゆる高付加価値の市民農園、体験農園サービスではなく、
地域コミュニティや社会課題解決という非営利組織的運用をしながらも、農体験や宿泊業といった収益事業に取り組むことで行政や大企業に頼らず自立経営で10年持続いう点で私たちの「くにたちはたけんぼ」が評価いただいたのだと思います。
都市の持続性を保つグリーンインフラとして
取り上げられている事例はいずれも、
農地を食料生産の場ではなく「都市のグリーンインフラ」として活用しておりそれゆえに、これからの不動産開発のなかでも無視できない取り組みであることが強調されています。
この連載の初回「世界的にユニークな東京農業、そのわけは?」に記したように
東京をはじめ日本の都市はなぜか、歴史文化のある農地を内包しながら拡大し、ついにはその存在を消し去ることなく、これから縮小の一途をたどろうとしています。
このユニークな現象にもっと多くの方に注目いただき
都市生活のなかでいかに農的空間や農的活動を日常化していくのかという先進的なテーマに取り組むプレイヤーがさらに増えていくことを期待しています。
そして、その先頭に、私も立ち続けられるように精進します。
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