FinTech不況でも2社が400億円超えの調達(12月海外調達トップ5)
12月の海外資金調達額トップ5には5カ国からスタートアップがランクインしました。
注目すべき点は2社のFinTech企業が400億円超の大型調達を発表したことです。
Carta・Monzo・Airwallexなどに著名FinTech企業に投資をしてきたFinTech投資家、Vetamer Capitalは未投資資金をLPに返金して閉鎖するなど、FinTech分野は金利上昇などマクロ環境の影響を強く受けている中で大型調達を完了させたのです。
*上場企業の子会社の資金調達、株主がPCファンドのみの場合の資金調達は原則対象外としています。
☕️coffee break
1. 🇫🇷Mistral AI(ミストラルAI):オープンソースのAIモデル開発
- シリーズA
- 資金調達額:4億1500万ドル(約600億円)
- 投資家:Andreessen Horowitz(リード)、Lightspeed Venture Partners、Salesforce、NVIDIAなど
ここに注目👉2023年5月に創業し、翌月のシードラウンドで1億1300万ドルを調達。そして半年後にシリーズAで大型調達と、欧州NO.1の生成AI企業に向けて、急拡大しています。
GoogleのDeepMindとMeta出身者が創業したMistral AIの特徴は、誰でも使用できるオープンソースのAIモデルを開発していることです。
現時点で、OpenAIのGPT3.5、MetaのLlama 2をやや上回るAIモデルを開発しており、2024年初頭に正式リリースをする予定です。
EUのAI法に関する議論でも中心となっており、データ管理やプライバシー・セキュリティに重きを置くことで、欧州を代表する“AI as a Service”企業を目指しています。
2.🇸🇦Nakhla IT Systems(ナクラ・アイティー・システムズ):消費者向け後払いサービスの展開
- シリーズC
- 資金調達額:3億4000万ドル(約489億円)
- 評価額:10億ドル(約1448億円)
- リード投資家:SNB Capital、Sanabil Investments(サウジの政府系ファンド)
ここに注目👉サウジアラビア・GCC地域(中東・アラビア湾沿岸の6カ国)で、BNPL(後払い・分割払い)プラットフォーム「tamara(タマラ)」を展開しており、サウジ初のFinTechユニコーンとなりました。
2年でユーザーは1,000万人超、SHEIN・IKEA・Farfetchをはじめとするパートナー企業数も30,000超となり、年間ランレート(想定)収益は6倍ペースの急成長を遂げています。
中東では11月にもBNPLサービスを展開する「Tabby」がユニコーンとなるなど、BNPLサービスを展開するスタートアップが台頭しています。
それもそのはず、サウジアラビアだけでも2020年時点では7万6000人だったBNPLユーザーが、2022年には1000万人まで増加して、人口の約30%がBNPLを利用するようになっているのです。
サウジアラビア政府は「ビジョン2030」で、金融サービス・小売企業を全面的に支援することで、業界の活発化を掲げています。その支援を受ける代表的な1社として、中東でトップのBNPLプラットフォームを目指しています。
2. 🇮🇳Hiveloop Technology(ハイブループ・テクノロジー):B2B卸売プラットフォームの提供
- シリーズE
- 資金調達額:3億4000万ドル(約489億円)
- 投資家:M&G Plc(リード)、既存株主のLightspeed Venture Partners、DST Global
ここに注目👉300万超の小売業者が販売業者からあらゆる商品を直接仕入れることができるインド最大級のB2Bマーケットプレイス「Udaan(ウダーン)」を運営しています。
しかし、財閥系のリライアンス・インダストリーズやウォルマート傘下のフリップカートとの競争が激化していることなどから、業績不振に直面しており、2023年度の総収益は562億インド・ルピー(約974億円)と前年比-43%、損失も前年比33%縮小したものの、207億ルピ(約358億円)となっています。
評価額も非公開ではあるものの、資金調達交渉時にはピーク時の32億ドル→20億ドル未満と、約37%以上のダウンラウンドになると報道されていました。
今後12~18か月以内のIPO・黒字化を必達の目標に掲げており、異例の資金調達直後に全従業員の10%に相当する約150人を解雇するなど、コスト削減・収益性向上に注力しています。
4. 🇬🇧SumUp(サムアップ):POSシステム・カードリーダーの開発・提供
- 資金調達額:3億700万ドル(約441億円)
- 投資家:Sixth Street Growth(リード)、 既存株主のBain Capital Tech Opportunities、Fin Capital、Liquidity Group
ここに注目👉ヨーロッパ、南/北アメリカ、オーストラリアなど、36地域で店舗・中小企業向けにPOSシステム・決済サービスなどを提供しています。
売上は前年比30%超の成長、EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)ベースでは黒字化していることから、正確な評価額は非公開ではあるものの、2022年の評価額85億ドル(約1.2兆円)から上昇したと公表しました。
一方、顧客数は2年前の400社から増加しておらず、今後の成長可能性には課題を抱えています。調達資金をもとに新規サービスの立ち上げ、M&Aの他、ラテンアメリカ・アジア・アフリカへと進出することを計画しています。
5. 🇺🇸Shield AI(シールドAI):AI軍事パイロットの開発
- シリーズF
- 資金調達額:3億ドル(約431億円)
- 評価額:28億ドル
- 投資家:Hercules Capital(融資)、非公開投資家
ここに注目👉11月のシリーズFで2億ドルを調達しており、同ラウンドの追加調達として、エクイティ(新株発行)で1億ドル、デット(融資)で2億ドルを調達しました。
米国の防衛テックを代表するスタートアップ6社からなるSHARP(各社の頭文字)の1社です。
予備知識のトレーニングがなくても人間の戦術を完全自律型で実行することができるAIパイロット「Hivemind」を航空機・ドローン・船舶・衛星・潜水艦など、あらゆる軍事資産に搭載することを目指しています。
すでに米軍や米国の同盟国を顧客に抱えており、今年は米空軍の無人戦闘機「XQ-58」にAIパイロットを搭載させて飛行実証を行う予定です。
サムネイル画像:DALL·E 3での生成
参考:12月国内大型調達:トップ5社には海外投資家がこぞって出資
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