収まりの見えないフーシ派の襲撃、スエズの1ヶ月の動きを振り返る

2023年12月31日
全体に公開

このまま長引いてしまうのでしょうか。

Shippioの田中です。2023年12月31日。今年もあともう少しで終わろうとしています。2023年の締め括りにはなりますが、国際物流業界でどうしても気にせざるをえないのが表題の件です。

Shippioでは商船のETA(Estimated Time of Arrival)を自動的に取得し、荷主の方々へ自社の商品がいつ届くのかを可視化するプロダクトを提供しているのですが、フーシ派の動きが、直接的に国際物流に影響を及ぼしています。

今後も注視すべきこの動きについて、改めて時系列でこれまでの動きを整理していきます。

また、手前味噌にはなりますが、本件の日本語での情報発信・解説は、普段一緒に働いているShippio川嶋のXが比較的早く、情報も海外文献から収集しているのでおすすめです。ここ2週間で1000人程フォロワーも増えた様ですので、是非ご関心のある方は参考にされてみてください。(本記事の中でも多く引用しています)

11月20日:日本郵船の運航するギャラクシー・リーダーが拿捕される

日本の船会社が運航する船が拿捕されたということで、国内でも注目を集めるきっかけとなったニュースです。日経新聞がまとめている、フーシ派が公開したギャラクシー・リーダーが拿捕された瞬間の映像は、統率が取れていてある種衝撃的と言えるものでした。ここから徐々に紅海に関する情報が目に触れる機会が増えていきました。

12月3日:報道が増え始める

12/3(日)にアメリカ国防総省が、イエメンの反政府勢力であるフーシ派が紅海(Red sea)で複数の商船を攻撃したと発表しました。この時明らかになったのは、無人機による船への攻撃であったこと、また、フーシ派の動機としては、「イスラエル軍のガザ地区に対する侵略が止まるまで、イスラエル船舶の紅海とアラブ海航行を阻止し続ける」というものでした。これを受けてすぐさま船舶保険も値上がりをしています。

川嶋 章義 Xより引用 https://twitter.com/AkiyoshiKawash1/status/1731801226893783076

12月17~18日:船会社が運航経路を変更し始める

運航各社が航路変更の意思決定をし始め、その動きが明らかになってきます。この頃にはマースク、ハパックロイド、MSC、CMA-CGMといった主要なコンテナ船社は紅海での運航を停止する方針を発表しました。この頃からスエズ運河の運航に長期的な影響が及びそうだという論調が強くなっていきます。

川嶋 章義 Xより引用 https://twitter.com/AkiyoshiKawash1/status/1736312376583172315

Flexportのライアン・ピーターセンは12/18現在において、数十隻のコンテナ船が紅海を避けて喜望峰ルートを選択しているとしました。これにより、船のリードタイム(所用日数)は7-10日程長くなることが想定されています。実際に弊社で監視しているETAを見ても1週間から2週間程度伸びている実態があり、荷主企業からの注目度も急激に高まったタイミングでした。

Ryan Petersen Xより引用 https://twitter.com/typesfast/status/1736559090153980213

12月18~20日:米国主導で商船護衛の体制が組まれる

12月18日アメリカ国防総省は紅海の安全保障のためのイニシアチブである、Operation Prosperity Guardianの設立を発表します。このイニシアチブは米国主導の元、イギリス、オーストラリア、バーレーン、カナダ、デンマーク、ギリシャ、オランダ、ノルウェー、セーシェルといった国々が参加していますが、EUの一部国は新たな作戦ではなく既存の作戦の中で活動していると表明しています。

川嶋 章義 Xより引用 https://twitter.com/AkiyoshiKawash1/status/1737482676116820046

今週:マースクがスエズ運河利用再開の見通し、SCFIの大幅な上昇

Operation Prosperity Guardianの設立もあり、マースクはスエズ運河の利用を再開するという見通しを発表していましたが、つい先頃の報道で、「マースクのコンテナ船がミサイルと小型ボートで攻撃されたことを受け、同社は紅海を通るすべての航行を48時間停止することになったとマースクは日曜日に発表した」という報道がなされました。事態はやや落ち着くかのように見えましたが、今回の事象で簡単に警戒の温度は下がらないだろうと見込まれます。

川嶋 章義 Xより引用 https://twitter.com/AkiyoshiKawash1/status/1740658398470025642
REUTERSの記事より引用 https://www.reuters.com/world/middle-east/maersk-pauses-red-sea-sailings-after-houthi-attack-container-ship-2023-12-31/

また、松田先生のポストも地中海向け欧州向けを皮切りにコンテナ運賃指数が上昇していることに触れています。また、本件に加えて、パナマ運河の干ばつによる通行量減少の影響もあり、北米向けのコンテナ運賃も上がってきている様です。今回のコンテナを中心としたサプライチェーンの混乱は全世界に波及しており、徐々にスペース不足の懸念も運賃に織り込まれ始めています。

松田琢磨教授 Xより引用 https://twitter.com/matsud30_2/status/1740871253932868044

年明けの注目ポイント

恐らくこの調子で行けば年明け以後もこの混乱は続き、たちまち本件が落ち着くようなきっかけは見通せない様に思えます。しばらくは日本-欧州間や日本-北米間といった貿易のスケジュールは全体的に遅延傾向となり、原料や部品といったものの遅延が各所の生産に影響を及ぼし始めることになりそうです。業界によってはまだ在庫過多の影響が強く、影響が遅れる場合も想定されます。紅海の不安定化が長引くほどスペース不足やコンテナ運賃の高まりが徐々に影響度を大きくしていくことが見込まれるので、引き続き報道をウォッチしながら先々の見通しを立てていく必要があります。

ブルームバーグニュース Xより引用https://twitter.com/BloombergJapan/status/1740366446356558330

最後に

2023年は幸運にもNewsPicksで記事を書く機会をいただけて、自分にとっても大変学びの多い年でした。2024年はもっと発信を強めてより国際貿易に注目を集められるように頑張りたいと思っています。皆様良いお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

トップ画像:Canva/200mmブランド:Getty Images Signature

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