【完全版】M1グランプリに見る「売れる人」の印象術
こんにちは!ファッションスタイリストの神崎裕介です。
クリスマスイブを迎えていよいよ年末感が出てきましたが、年末の風物詩のひとつと言えるのが「M1グランプリ」ではないでしょうか。
日本一の漫才師が決まる、人生が変わる一日という緊張感にドキドキしたり、現代の”スター誕生”として楽しんでいる方も多いのではと思います。個人的に学生時代からお笑いが大好きなので、第一回から欠かさず観ているのですが。
今年、見事栄冠に輝いたのは令和ロマンさんでした!おめでとうございます!!
トップバッターでの優勝は素晴らしいことではないかと。2本ともクオリティが高かったですね。
そんなお笑い好きが高じての縁なのか、3年前より爆笑問題さんや2022年のM1王者ウエストランドさん所属の事務所タイタンさん付属の養成所「タイタンの学校」で、スタイリングや見せ方を教えていて。(ちなみに一般の方も多数入所されています)
受講生の皆さんに印象の大事さを伝えているのですが、一般のビジネスにも通ずる要素はたくさんあります。今回は例を挙げつつ、売れる人のポイントにフォーカスしてみたいと思います。
一にも二にも「清潔感」
まず外せないのは「清潔感」があることです。これは基本と言ってもいいでしょう。
というのは、一番挽回するのが難しい印象ってなんだと思いますか?
それは「生理的に嫌」という評価です。
反射的、本能的にイヤということになると、見たくない会いたくないになってしまう。このマイナスを覆すのには相当のリカバリーが必要になります。
・髪の毛は手入れされているか(長さ、色味、髪型)
・ヒゲや鼻毛、顔の毛は整えられているか
・爪の長さは適切か、汚れていないか、マニキュアが落ちかけていないか
・服にシワは目立たないか、汚れていないか、丈やサイズはあっているか
ざっと挙げただけでも、最低限この位は意識していただきたいポイントです。
今回のM1王者、令和ロマンの松井さんもヒゲを生やしていますが綺麗に整えられていますよね。
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— M-1グランプリ (@M1GRANDPRIX) December 24, 2023
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ちなみにボケの髙比良さんも紫のスーツに薄紫のシャツ、紫のネクタイというグラデーションが上品で落ち着いた印象で良かったなと。
自分は気にならない基準でも、見る人が見たら気になるポイントだったりする。自分基準ではなく客観的な視点で、周りの人の意見を参考にしながらチェックしていくといいでしょう。
忙しかったりいつも同じメンバーで仕事をしていると、つい後回しにしたり気を付けなくなってしまいますよね。でも常に見られているという意識は忘れてはいけない。そして第一印象では特に気を付ける必要があります。
今は芸人を代表する活躍を見せている千鳥さんも、東京進出にあたってマネージャーさんが衣装を含めて印象をブラッシュアップしたという話が有名です。
大阪時代は「ちょっとヤンチャで気のいいニイちゃん」というキャラで売っていた千鳥さんですが、東京でそのままのキャラクターでは難しいだろうと考えたのでしょう。
大悟さんの衣装を見ても、明らかに清潔感を意識して変えたことが伺えます。まずは1発目で「この人ムリ」にならない印象作りはとても大事だと思います。
東京進出後、順風満帆とは行かずにしばし雌伏の時を過ごしますが、今のご活躍は誰もが知るところ。その後大悟さんはカジュアルな衣装に回帰していますが、それはキャラが浸透したから可能になったこと。そういう匙加減もタイミングが大事だということです。
最も大事なのは「期待感」を纏うこと
結局、これに尽きるのではないかなと。
例えば、それこそM1決勝メンバーの皆さんも間違いなく「面白そう」なオーラを纏っていますよね。きっと何かやってくれるのではないか、という。内容はもちろん、そんな雰囲気を持っているからこそ決勝に選ばれているはずです。
個人的に、ヤーレンズさんは特に面白そうな雰囲気を出すのに成功されているなと思います。
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ボケの楢原さんの丈の短いジャケットと首元のチーフという細かいこだわりが効いています。髪型も併せて「きっと面白いことをやりそう」な期待感がしてこないでしょうか。ツッコミの出井さんのカラースーツも上品で存在感があって良いですね。
ビジネスも、この期待感がないと上手く回りません。というのも、結果は終わってみないと=利用してみないと分からないわけで、選ぶ段階では「期待できそう」という印象が強い方をセレクトするからです。
自分事として考えてみて、皆さんも似たようなカフェがあればより雰囲気が良さそうな方、美味しそうな方を選ぶし、ビジネスでもより信頼できそうな方、実績から期待できそうな方、イメージが良い方を選ぶのではないでしょうか。
実際満足するかどうかは、利用してみないと分からない。故に価格に大きな差がなければ期待が持てそうな方を選ぶしかないわけで。そうなると印象面での期待感がとても大きなウェイトを占めます。
その顕著な例として挙げたいのは、2021年にM1王者に輝いた錦鯉のおふたりです。
以前、おふたりはアロハシャツとTシャツが漫才衣装でした。
その後両者ともスーツに衣装を変えると評価が一変、ついにM1王者に登り詰めます。
その流れについて、ご本人たちがこんな事を語っているのです。
渡辺:錦鯉を始めたての時は「THE MANZAI」でも1回戦で落ちたりしてたんですけど、そこからネタをすごく作るようにして、2015年のM-1で準々決勝まで行ったときに、「あれ、行けるんじゃないか?」と思ったときですかね。その前くらいにスーツを作って、ライブをやりだして。
長谷川:自分も変わりますけど、何より周りの目が違う気がしますね。漫才を見ようという。だからスーツじゃなくてもいいんですけど、ガワも大きい気がしますね。今思えば。
明らかにスーツを衣装にしてから、芸人人生が変わり始めた。
スタイリスト的な視点で言うと、以前の衣装では観客に「緊張感」や「期待感」を与えられていないんです。気さくなおじさんが出てきた、気楽に見るか、みたいな空気感。だから会場の集中力が高まらない。
一方でスーツで出てくると、観客も「これはちゃんとした漫才をやるのでは?」という意識で、ギュッと錦鯉さんに対する集中力が高まる。これが期待感の正体です。
内容もブラッシュアップされたと思いますが、例え同じネタをやったとしても、アロハシャツとスーツではお客さんの意識に大きな違いがある。それが長谷川さんの「周りの目が違う、漫才を見ようという」という言葉に繋がっているのだと思います。
今回ファイナリストのモグライダーさんも、ボケのともしげさんの衣装が以前は色味こそ変わらないものの、赤いTシャツに短パン、裸足という格好でした。
やはりジャケットに変えたことで決勝に行けるようになっていて、観客の見方がイロモノでなくなったことがポイントになっているんです。
前述したように、今芸人養成所で講師をしているので彼らのライブを観に行くのですが、衣装や立ち姿が決まっているコンビは絶対にウケます。逆にシワシワのスーツで出てきた人は出オチでウケただけで本編では全くウケなかった。
見栄えやクオリティを意識している芸人に対しては会場の視線がフッと集まる空気を感じるし、そういう意識を持てている芸人はネタの完成度にもこだわっている。これが揃ってこそ爆発が起こるんですよね。
ビジネスシーンにも「期待感」を
自分のスキルには、やっていることには、会社のサービスには自信を持っている。もっと評価されても、結果に繋がっても、、と考えている方は少なくないのではと思います。
もしかしたら、自分の良さ、会社の良さ、商品の良さを期待感を持って伝えきれていないのかも知れません。
例えば、髪の毛が無造作、靴が汚れていてスーツのサイズ感が合っていなくて、”だらしない”と思われているのかも知れない。
例えば、服の色が地味でデザインが古くて、”垢抜けない”と思われているのかも知れない。
例えば、会社のイメージや商品のデザインが”他と一緒で特に選ぶ理由がない”と思われているのかも知れない。
もし何か不安や不満、危機感があるのなら、まずそこから見直してみてはどうでしょうか。
結局、どれも「期待感がない」ことに繋がっている。選ぶ人をワクワクさせられていない。パッと見て期待が感じられる、相手の視線が、会場の空気がギュッと集中する。そんな装いをすることができれば、評価は必ず変わります。
見せ方と見え方を変えただけで好転する可能性があることは、今日挙げてきた例でも明らかではないかと思うのです。
M1は王者を掛けた戦いですが、ビジネスの現場もやはり戦いからは切り離せません。
競合の人・会社と比較されて、どちらかは涙を飲む。その決め手は、最終的には期待を持てるかどうかです。中身に自信があるなら尚更印象に力を入れない理由はありません。
そして、それを突き詰めてしっかりキャラやブランドを確立できれば戦うことなくご指名で仕事ができるようになる。最終的にはここを目指すべきでしょう。
人はちょっとした意識で、印象をガラッと変えることができます。そして、M1のようにそれで人生が開けることもある。2024年は、ぜひ期待感の持てる印象を纏うことを真剣に考えてみてはいかがでしょうか?
約7時間ぶっ通しで漫才を観ましたが、大変楽しませていただきました。令和ロマンさんは内容ももちろんのこと、清潔感や緊張感をしっかり纏っていたと思います。皆さん本当にお疲れ様でした!
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神崎裕介
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