Microsoftのスポーツイノベーションの非営利組織が設立された背景
スペインリーグの試合で目にするMicrosoftの社名
サッカーがお好きな方はご覧になられたかもしれませんが、先週10月28日(土)にスペインリーグに所属する有名チームであるレアルマドリードVSバルセロナの試合(通称:エル・クラシコ)が行われ、イングランド代表のベリンガム選手のスーパーミドルシュートが決まり、多くのサッカーファンがSNS上で興奮の声をあげていました。
以下のリンクは、サッカー・スペインリーグ(通称:ラ・リーガ)英語版のX公式ページによるゴールシーンです。
10 G⚽ALS@BellinghamJude is the top goal scorer in #LALIGAEASPORTS! 💯
— LALIGA English (@LaLigaEN) November 2, 2023
📊 Immerse yourself in the game with @Microsoft and LALIGA.#LALIGABeyondStats
リンク先ではベリンガム選手がシュートする直前に『6.3%』という数字が表示されますが、これはGoal probability(ゴール可能性)を指します。
同時に『powerer by Microsoft』のロゴが掲出され、Microsoft社によるデータ分析によってゴール可能性の表示機能が提供されていることが分かります。(英プレミアリーグではオラクル社が似た機能を提供しています。)
今回はテクノロジー企業とスポーツの融合の一例として、ラ・リーガとの協働から設立されたMicrosoftの非営利組織GSIC(Global Sports Innovation Center)について書きます。
Microsoftのスポーツイノベーション組織GSICとは?
GSICは、主にスポーツ組織や関連企業に対してサービスを提供するMicrosoftの非営利組織として2015年に設立されました。
本社はスペイン・マドリードにあり、アジア拠点としてGSIC APACがシンガポールにもオフィスを持っています。(今後はアメリカにも拠点を設立する予定)
筆者はマドリードにあるGSICのオフィスを訪問し、同組織のイノベーション・サービス・ダイレクターにお話を聞く機会に恵まれました。
本社がマドリードにある理由は後述しますが、シンガポールにAPAC拠点を設けた理由は「アジアのスポーツ市場をリサーチしたかったため」「プロジェクトを共同するパートナー企業が多く存在するため」「Microsoft本体と連携しやすいため」です。
GSICはMicrosoft社のサービスを提供するだけではなく、イノベーションハブ機能として、スポーツ領域の大手企業、テクノロジー企業、ベンチャー企業、大学などのメンバーのネットワーク形成及び共同プロジェクトの立上げを支援しています。
プロジェクトはサッカー(プロジェクト全体の20%)に限らず、クリケットやeスポーツの共同プロジェクトも展開しており、多方面のパートナー企業連携を目指しています。
GSICオフィス内ではパートナー企業との多くの共同プロジェクトが展示・紹介されており、来訪者は自ら試作機を体験することができます。
例えば、現在多くのサッカークラブでも採用されているチケット購入時の「座席からの3D映像技術(購入予定座席からの景色が事前に分かる技術)」が展示されていたり、MicrosoftのHoloLensを技術を活用したスタジアム内のVR映像の試作機も体験可能です。
GSICが設立された背景はクライアントのニーズに応えるため
GSICに訪問した際、過去のプロジェクト事例や最新のスポーツテクノロジーもご紹介いただきましたが、個人的には「何に取り組んでいるのか?」よりも「なぜ取り組んでいるのか?」に関心がありました。
印象的だったのは、GSICが設立された背景がMicrosoftのクライアントであるラ・リーガとレアルマドリードのニーズに応えるためだった、という点です。
GSICが設立された2015年頃はスペインサッカーが好成績を残していたタイミングだったと記憶しています。
当時のラ・リーガとレアルマドリードはサッカー界で大きな影響を持っており、Microsoft社に対して既存のITサービスだけではなく、よりスポーツに特化したデジタル面での支援を要望していました。
Microsoftもスポーツのマーケットが将来に渡って拡大することを見据えて、ラ・リーガとレアルマドリードとの関係を強化することでスポーツ領域におけるネットワーク構築が加速すると考え、GSICの構想が生まれました。
つまり、拡大が見込まれる市場があり、その市場内で競争力のあるパートナー企業と組むことができ、Microsoftのサービスやリソースを活かすことができると考え、同組織は設立されました。
結果として、GSICの本社はマドリードに設立されましたが、それはその場所にマーケット内で影響力を持つ「お客さん兼ビジネスパートナー」が拠点を構えていたからです。
尚、現在のGSICはMicrosoftのエコシステムから独立しても黒字化できるそうですが、イノベーションに集中するために非営利組織として活動を続けています。
成長するグローバルなスポーツ市場の中で、新たなイノベーション創出にフォーカスするGSICの求められる役割は今後さらに大きくなるかもしれません。
おわり
サムネイル画像: Unsplash / Turag Photography
Reference
The Business Research Company (2023). Sports Global Market Report 2023 [online]. Available at: https://www.thebusinessresearchcompany.com/report/sports-global-market-report (Accessed 3th November 2023).
GSIC (No date) GSIC Sports Scenarios [online]. Available at: https://sport-gsic.com (Accessed 3th November 2023).
UEFA (2023). UEFA Champions League Most titles [online]. Available at: https://www.uefa.com/uefachampionsleague/history/winners (Accessed 3th November 2023).
FIFA (2023). FIFA World Cup™[online]. Available at: https://www.fifa.com/tournaments/mens/worldcup (Accessed 5th November 2023).
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