次を決めずに退職:積極的サバティカルと新しい働き方

2023年10月2日
全体に公開

こんにちは、デライト・ベンチャーズ加古です。

ここ数年、ベンチャー・IT業界で活躍してきたシニアなプロフェッショナルの“組織に所属しない新しい働き方”が増えてきたなーとひしひしと感じます。これは、おそらく私が長らくいる、主に国内のITベンチャーに限った(外資系を除く)話ではないかなと思うのですが、もしかするともう少し広がっているのかもしれません。ただ、特定の条件を満たせば、この働き方は十分可能だなと思うので、今日はそのスタイルを具体的にご紹介したいと思います。

まずイメージが湧きやすいように、事例をご紹介しますね。

前からフリーランスが多かった受託仕事

元々、古くからカメラマン、ライター、デザイナーそれから10年ぐらい?前からエンジニアという仕事はフリーランスで働く人はいました。依頼事項が比較的明確で「とある取材の写真を撮る・記事を書く」とか「とあるプロダクトのデザインを担当する・コードを書く」といった業務の切り分けがし易い業務委託的・受託的な仕事です。

いわゆる先生業・コンサルタント

また他にも昔からフリーランスが多かった先生業、コンサル、弁護士、税理士といったお仕事です。こちらは、何をやってるんだか怪しい人も一部いる気はしますが、ともあれ「◯◯先生」と何かを教えてくれるアドバイザー的な役割です。月に1回とか2回とかクライアントを訪問して社長の相談に乗ったりと、コーチング的な役割もあるでしょう。

新しいフリーランス、シニアプロフェッショナル

ただ、最近増えたなーと私が感じるのは、このどちらにも属さない「シニアプロフェッショナル」の仕事で、広報、マーケ、編集、採用、人事、リサーチ、PdMといった、元々は内部の社員が担っていたような業務なのです。

実際にメルカリやDeNAのITベンチャーで活躍してきた30-40代のシニアなプロフェッショナルを、社員1人分を雇うほどの人件費はないような小さなチームが、その高い専門性と、(フルタイムでなくても構わないので)手伝ってほしいというようなニーズで雇うことが増えています。

コロナ禍で一般化したリモートワーク

なぜこのような専門人材のフリーランス化が進んだかというと、やはりコロナによって完全リモートワークが当たり前になったという社会的背景はあります。オンラインでの会議が一般化し、コロナ後も特別な機会以外はミーティングもオンラインを継続しているような会社がクライアントとなります。ただしGAFAのような大手外資系企業は、コロナ禍で働かない社員を抱えていたことに痺れを切らし、出社回帰の動きがかなり活発になっています。

リモートであれ何であれ、真面目に役割を果たす人と組織が対象

今回お話するようなプロフェッショナルとは、リモートワークでもバリバリ働いていたある意味真面目な専門家です。また受け入れ側も、ガチガチの管理を必要としない自律的な働き方をするシニアな組織と言えるでしょう。

こまめなコミュニケーションと信頼関係の構築は欠かせない

という意味でこの形態が成り立つのは、細かな指示を必要とせずとも、成果にコミットできる人材であること、一方でクライアントの社員側は社内にある情報を積極的に外部の専門人材に共有し、状況をキャッチアップしやすい環境を提供すること、この2点が必須です。このためにお互いの信頼関係があるからこそ成り立つといえます。

逆に言うと、成果を出せない人間が継続して雇われるのは難しいでしょうし、仕事をぶん投げてこまめな関係のメンテナンスを行わないクライアントも無理です。

次の転職先を決めずに辞めるプロフェッショナル

さらに、上記が成り立つようになってきたことで、最近増えたなと思うのが「次を決めない退職」です。

実力とコミュニケーション能力のあるシニアなら、次を決めずに一旦会社を辞める。そのことをSNSでシェアすると「あの人辞めたんだ!うち手伝ってくれないかな!」と声がかかります。「久しぶり、元気?」と始まり、具体的な業務の話になり、そのうちの2、3の仕事を手伝いながら、半年〜1年と働き続けます。ありがちなのは、その組織にはまだ若手の、未経験に近い人材しかいないために、その仕事のやり方や勘所を教えながら、プロジェクトをリードします。もしくは、広報など社内には全く担当がいないために、外部からその役割を担うこともあります。

外部プロフェッショナルはプライベートとも両立し楽しそう

そういうかたちで仕事を続けている人は、社員として所属していたときと同等もしくは場合によっては何倍もの収入を得ながら、時間的には自由が効き、自分の専門性で役割を果たし、求められ感謝され、楽しそうに仕事をしているように見えます。もちろん「いつ仕事が切れるかわからない」という不安もあるでしょうし、会社組織のような代えがいない厳しさもあり、また経理など会社経営を小さいながら自分で行う煩わしさも一部あるでしょうが、とはいえ能力のある人ならば十分にやっていけます。特に、子育てや介護、留学など、会社員として働くには制限されてしまうようなプライベートな事情とうまく両立されているパターンも多いように感じます。

そのまま専門家として自立していく場合も、会社員に戻る場合も

そのままその働き方が定着し、専門家としての仕事を確立していくパターンもありますが、実は1〜数年その働き方を続けた後に、いくつかのクライアントの中から「この会社にコミットしよう」という居場所を見つけて、また会社員に戻るパターンもあります。長めのお見合い期間を経て結婚、というパターンですね。いずれも幸せなパターンな気がします。

専門家が会社員に戻る理由

ちなみに、独立していれば、自由度が高く、給与もアップサイドがあり、プライベートとの両立もしやすいのに、なぜ会社員に戻るのか。その理由は1つは「スキルの仕入れ」もう1つは「事業成長をチームの一員として担いたい」ではないかと思っています。

会社員は、自由度が低い、給与も制限されるというデメリットがある一方で、やはり、社員の立場を活かして、新しい仕事にチャレンジする機会が多い、会社を通じて個人よりも大きな仕事をできるというメリットがあると思います。社内での信頼があれば、未経験の業務を任せられやすいメリットもありますし、予算もあってお金を使って大きな仕事をする機会があります。そのため、自分の新しい可能性を開拓できる余地があります。

また、外部の専門家は、あくまでもサポート役に近い場合が多いと思いますが、組織の中ではチームを作り、事業を動かしている手応えを感じやすいというのがある気がします。

組織の煩わしさを覚えている一方で、またチームでみんなでやりたいな、という楽しさを思い出して戻ってしまうのでしょう笑

全力で働いてきたプロフェッショナルのための、積極的サバティカル

ということで、どちらの働き方も魅力的だなと思いますが、十分な実績と信頼と実力を身に着けたプロフェッショナルには、もしかしたらサバティカルよりはもう少しアグレッシブな、積極的休養といった位置づけのフリー期間になるのかもしれません。(私の知人、友人も多いです笑)

チームにコミットして10年必死で走ってきました。実力は身についたけど、心も体もちょっと疲れました、という人は「次を決めない退職」もあるのでは。個人的には、そういう人は、少しの羽休め期間を経て、またチームに戻りたくなる気がしますが、そうやってキャリアに緩急をつけながら、実力をつける期間と、成果を回収する稼ぐ期間を作るような生き方もあるのかもしれません。

(ただし、念のためですが、今日書いたようなことは、十分な実力とそれを知って認めてくれている人脈があってこそ成り立つものです。力不足だなと感じる方は今いる場所で力をつけましょう!)

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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