生成AIの導入で、CEOの意思決定と従業員への影響はどう変化するか?  〜IBM CEOスタディ 2023から

2023年8月28日
全体に公開

生成AIの企業への導入が進むと、企業のCEOの意思決定や、従業員への影響も大きな影響が出ていくことが予想されます。

生成AIの導入により、データ分析などを活用して、複雑な問題を素早く解決するといったことができるようになり、CEOの意思決定はより迅速かつ効率的になることが期待されます。

また、従業員への影響も大きく、日々の業務の自動化が進展することで、より創造的な業務に集中できるといったメリットも期待されます。

しかし、一方で、AIの導入による職の変化やスキルの必要性の変動など、新たな課題も生じる可能性があります。

生成AIの導入は経営戦略と従業員の働き方の両方に多岐にわたる影響を及ぼすことが想定されます。

企業の競争優位性は最も先進的な生成AIを持てるかどうか

日本IBMは2023年8月9日、CEOスタディ 2023「AI時代の到来で変わるCEOの意思決定」日本語版を公開しました。

本レポートでは、30カ国以上の約3,000人のCEOを対象に実施したCEOの意思決定に関する調査に加え、生成AIの対応に関する調査として、米国の200人のCEOを対象とした調査、および米国、英国、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、インドの369人の経営層を対象に実施した調査結果をまとめています。

レポートの中では、CEOは、生成AIといった新たなテクノロジーを導入してモダナイゼーションを進める上で、重大な障壁に直面する可能性があることを認識する必要性も挙げています。

調査によると、米国のCEOの4分の3が、「企業の競争優位性は最も先進的な生成AIを持てるかどうかにかかっている」と考えています。

しかし、バイアスや倫理、セキュリティーなど、テクノロジーの潜在的なリスクや障壁も考慮しています。実際に、半数以上(57%)がデータ・セキュリティーを、48%がバイアスやデータの正確性を懸念しています。

米国のCEOの43%は戦略的意思決定に生成AIを活用

AIへの対応に関しては、CEOとチームとの間にもギャップが見られます。米国のCEOの半数(50%)は、生成AIをすでに製品やサービスに組み込んでいる、43%は戦略的意思決定に生成AIを活用していると回答しています。

しかし、生成AIを導入するための専門知識が社内に備わっていると回答した経営幹部はわずか29%にとどまります。また、CEO以外の経営幹部の中で、責任をもって生成AIを導入する準備が整っていると回答したのはわずか30%となっています。

おそらく、日本においては、この数値はさらに低い数値となっていることが想定されます。

CEOは生成AIを導入する準備ができていると回答しているが、他の経営幹部は難色を示している

生成AIの導入によってCEOと経営幹部との意識や考え方などにも差が出てきています。

・米国のCEOの4人に3人(75%)は、最も先進的な生成AIを導入した組織が競争優位に立つと考えている

・半数(50%)のCEOが生成AIを製品やサービスにすでに組み込んでいる、43%が戦略的な意思決定に生成AIを活用している、36%が業務上の意思決定に生成AIを活用していると回答

・米国のCEOの69%は、組織全体で生成AIの広範なメリットを見出していると回

・一方で、CEO以外の経営幹部のうち、社内に生成AIを導入するための専門知識があると回答したのはわずか29%、また、責任を持って生成AIを導入する準備ができていると回答したのはわずか30%

日米のChatGPTの利用率の比較の資料などから、日本のCEO以外の経営幹部の生成AIへの意識や準備はさらに低いということが想定されます。

生成AIは従業員の変化に拍車をかけているが、従業員への影響に関する広範な評価は遅れている

生成AIによる従業員への影響も出てきています。

・米国のCEOの約43%は生成AIの導入を理由に従業員を削減または再配置した、28%は今後1年以内に予定していると回答

・米国のCEOの46%は生成AIの導入を理由に従業員を追加採用しており、26%は今後さらに採用する計画があると回答

・生成AIが自社の従業員に与える潜在的な影響を評価したことがあると回答したCEOは3人に1人未満(28%)で、36%は今後12カ月以内に評価する予定があると回答

今後の展望

生成AIによってAI導入の障壁が軽減し、今回調査したCEOの半数は、業界全体で生産性、効率性、サービス品質の新たな波を推進するために生成AIを積極的に検討しています。

その一方で、本レポートでは、CEOは、生成AIの新たなユースケースを大規模に展開する計画を立てるために、データ・プライバシー、知的財産保護、セキュリティー、アルゴリズムによる説明責任、ガバナンスに関する自社の要件を評価する必要があるとも指摘しています。

日本においては、生成AIの導入やCEOの意思決定、従業員への影響は、米国と比べるとまだまだ遅れている状況にはみえており、本レポートも参考に企業の経営としての生成AIへの対応を急いでいく必要があるのかもしれません。

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