【脱コピペ】続・AIと向き合うためのプロンプト思考術

2023年8月20日
全体に公開

本記事は、以下の記事の続編となっております。まだの方は、以下の記事からお読みください。

プロンプトコピペの罠

前回の記事、たくさんの方に読んでいただけました。ありがとうございます。コメントでもプロンプトをコピペすることへの問題意識について共感の声もいただきました。

ChatGPTは、検索エンジンではなく、生成エンジンです。都度都度、応答も異なりますし、答えを求める態度ではなく、「サポーターとして付き合ってもらう」スタンスが重要です。

思考の型は自分なりに構築していくことが重要です。例えば、ビジネスでよく使われるフレームワーク、例えば、ビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバス、5フォースなどは、一般的に重要と考えられている経営的思考の要素が入っていますが、業界や事業の状態などにより、優先すべき要素は異なるはずです。フレームワークを提示すると、思考のプロセスは確かに分かりやすくなります。一方で、全部の穴を埋めることに集中しすぎて、今何を検討することが重要なのかを自分なりに捉えることができなるケースもあります。

プロンプトのコピペも同じような副作用が考えられます。あるタイミングでうまくいった成功事例を抽出したものであり、例えばAI側の仕様が変わったり、求めている成果物の方向性が異なると、コピペでは正しいアウトプットは獲得できません。プロンプトコピパは、具体的には以下のような副作用が想定されてます。

・AIの仕様変更で意味がなくなってしまう。例えば、GPT3.5では有効だった手法は、GPT4では特に意味がないものもあります。そして、AI側としては、これからもそうした対応をどんどん続けるでしょう。

・特定の誰かのビジネスシーンに特化しており、利用者の状況には必ずしもフィットしない。特定のケースでしか活用できないと思い込んでしまう。

・コピペが流通すると、皆が同じ入力をすることになり、そこに情報収集・加工の優位性がなくなる

やはりコピペから入りつつ、自分なりにAIと応答する思考術を鍛えることが重要でしょう。

インプット・アウトプットをどうデザインするか?

前回、記載した通り、コンピュータは、入力を受け、情報処理をし、結果を出力する機械です。コンピュータと対話する場合は、このインプット・プロセス・アウトプットのどの領域で、何をしてほしいのかを明確にすることが必要だとお伝えしました。

この時に重要な考え方の一つが「5W1H」の明確化です。

「5W1H」は、情報収集や問題解決、記事の執筆、計画立案などの際に情報を網羅的かつ具体的に整理するためのフレームワークや方法論の1つです。5W1Hは以下の6つの質問要素から成り立っています。

  1. Who(誰が): どの人物や組織が関与しているのか、または行動の主体は誰か。
  2. What(何を): 何が行われたのか、または何が必要なのか、具体的な事象やアクションについて。
  3. When(いつ): 事象や行動がいつ起こったのか、またはいつ必要なのか、時間や日付に関する情報。
  4. Where(どこで): どこでその事象や行動が発生したのか、またはどこでそれが必要なのか、場所や位置に関する情報。
  5. Why(なぜ): その事象や行動の理由や背景、動機など。
  6. How(どのようにして): 方法や手段、過程に関する情報。

そしてこれらの様子は、以下の項目と対応します。

インプット:Who(誰が)When(いつ)Where(どこで)

プロセス:How(どのようにして)

アウトプット:Why(なぜ)What(何を)

プロンプトテクニックの一つに、「役割の指定」があります。

例えば、「#あなたは教師です」と入力することで、この5W1Hはある程度特定されるので、精度があがります。しかし、注意するべきはあくまで、グローバルな膨大な文章から「一般化された教師」の5W1Hであり、文化的差異や状況に応じて、当てはまらないこともあるでしょう。そして、それが何なのかは分からないというのが最大の問題です。

アウトプットから設計しよう

では自らアウトプットの設計をしてみましょう。前回お話しした通り、アウトプットから逆算的に設計した方が、成果を得られやすいです。それは、アウトプットが、Why(なぜ)What(何を)であることからもわかると思います。サイモン・シネックの「Whyからはじめよう(Start with why)」という作品がありますが、まさにwhyからはじめよ!です。

サイモン・シネック「Start with why」

アウトプットの定義で重要なのは、「成果物」を明確に定義することです。ここで、WhyとWhatの2重構造が大きな意味を持ちます。ChatGPTにはなるべく小さな単位で成果物を定義してあげたいのですが、意識せず成果物を書くと大きくなりすぎてしまいます。

例えば、業務の報告書を書きたいとします。

まず、Whyの定義からはじめましょう。作業の出口を考えるためにWhyの定義は重要です。しかし、現時点ではWhyはCHatGPTへの入力としては使いづらいと考えています。Whyは主観的な情報が強く出るため、コンピュータは解釈を誤る可能性があります。Whyは定義するが、いったん自分の心の中に止めておきましょう。

次に、Whatです。そこでいきなり、「〇〇業務の報告書を書くこと」を成果物としてしまうと、この指令は、ChatGPTに対して成果物がおおきすぎます。そこでWhatに関しては二重構造で考えます。

Why:何のために報告書を書くか 自分なりに整理する (プロンプトには使わない)                                       What1: 〇〇業務の報告書を書くこと                             What2:報告書の目次を書くこと

こうして、常に2段構えでアウトプットを定義、What2で指示をだしてあげると、ChatGPTが動作しやすい単位の「成果物」を定義しやすくなります。

(追記 コメントで、「Whyに関しては、何のために報告書を書くのかがWhyではないでしょうか?誰が読み、どんなアクションを期待するか、あるいはどんな評価を得たいのか、それがWhyだと思います。」といただきました。Whyに関しては、まさにおっしゃる通りで少し誤解のある書き方だったため、一部修正しました。)

インプットを考える

次にインプットです。以下を考えるにあたって、Who(誰が)When(いつ)Where(どこで)を考えることと整理しやすくなります。

- 事前知識として理解しておくべきことは何か?

- プロセスを進めるにあたって、具体的にどのような情報が必要か?

先ほど、定義したアウトプット「〇〇業務の報告書」は、いつ、どこで、誰が読むのか?あるいは、いつ、どこで、誰が必要とするのか?を考えましょう。そうすると、グッと具体性が増します。特に、「誰が」は一番重要です。「いつ・どこで」は組み合わせて状況を表現するのもいいでしょう。

誰が:会社の同僚が、上司が、顧客が、市民が、小学生が

いつ:業務の確認をするときに、最新の研究を知りたい時に

どこで:会社で、図書館で、日本で、都心部で

ChatGPTの応答を最も左右するのはこのインプット部分です。ここを丁寧に設計すると求める応答が得られやすいです。

しかし、敢えてズラすこともお勧めします。

「 詳細すぎるプロンプトは時として、対応内容をシンプルにさせすぎるという問題」や「 情報収集・加工の優位性がなくなる問題」などを指摘しましたが、インプットでは、自分にフィットした状況で応答を獲得しつつ、少しずらして遊んでみるのも面白いです。一種の思考シミュレーションです。

例えば、

誰が:会社の同僚向け→小学生向け、行政向け           

いつ:江戸時代の、未来の

どこで:アメリカで、山間地帯で

思考のバリエーションを増やすための「三間(人間・時間・空間)の転換」と呼んでいる思考法です。(詳細は以下書籍)

こうした転換したインプットから出てくる応答は直接使えなくても、新しいアイデアにつながったり、見過ごしていた論点の発見につながったりします。

プロセスは一旦無視でもOK

プロセスのところは、詳細に定義する場合、一番テクニカルな要素が多くなります。情報をどのような手順で処理するのか、例外的な処理をどうするのか、修正をどうするかなど、このあたりは「プロンプトテクニック」と呼ばれるもので様々な規定がされています。

しかし、プロセス自体はそこまで詳細に定義する必要はないでしょう。機械学習の特徴の一つは、プロセス定義の煩雑さを減少させたことにあります。

例えば、顔認証の仕組みについて考えてみます。

これまで:顔写真の入力→顔から特徴を抽出するプロセスを定義し、実装→結果の獲得

でしたが、

機械学習:顔写真と名前の入力→写真から個体識別するプロセスを自動的に学習→結果の獲得

と変化しました。

機械学習の大きな特徴は、一定の入力から結果を得るプロセスを自動化したことにあり、機械学習の塊であるChatGPTも、インプットからアウトプットを得るプロセスをすでに獲得しています。

プロセス部分は、一旦無視し、既存のコピペなどを使う範囲で十分かと思います。

AIとの対話を通じて、思考をすすめる

重要度は、インプット>アプトプット>プロセスとなると思います。とに「インプット」に関して試行錯誤をしてみてください。5W1Hを意識し、多様なインプットに挑戦しつつ、求めているアウトプットに少しずつ近づいていきましょう。こうしたプロセスを通じて、自分自身の問題意識や問いがクリアになり、さらに良い問いを投げることができるようになります。

誰でもAIが使える時代になったので、コピペに頼らず、自分なりにAIと対話をすすめてくだされば幸いです。

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