本当のデータの時代が来て、全てが人工物になる

2023年8月12日
全体に公開

ChatGPTをはじめとした生成AIが急速に普及している。NewsPicksでも生成AIを活用したスタートアップの話題や生成AIが大企業のプロダクトどう組み込まれたかのニュースが毎日流れている。

生成AIの登場は私達の生活に様々な影響を与えるだろう。教育にどのように活用していくべきなのか(教育学)、国家間でどのように生成AIの利用を制限すべきなのか(政治学・地政学)、生成AIが私達の仕事や企業経営どう影響するのか(経済学・経営学)….というように挙げればきりがない。

生成AIは現時点では一般的な学習データで学習されたモデルが利用されるのがほとんどである。しかし、将来的にはパーソナライズされたモデルが利用されるだろう。たとえば、社内のデータをすべて読み込み、自社の業務に関する質問にすばやく答えたり、情報を整理してくれる社内専用GPTが利用されるだろう。スマホからクラウドに保存した自分の過去のデータを読み込み、自分よりも自分を知る自分GPTもできるかもしれない。

A42枚の性格診断テストの結果をChatGPTに読み込ませ、デジタル人格アキラを創ったことがある。私の性格特性に対応した質問応答をしてもったのだが、私の性格が”良すぎて”非常に嫌悪感がすごかった。こんなにめんどくさい人物に関わってくれる友人や同僚、仕事関係の方々に感謝の気持ちを更に強くしたので結果的には良かったかもしれない。

私が嫌悪感を感じたのは、作り上げた人格があまりにも私の性格特性を反映していたからだ。読み込ませた性格診断テストは有料の専門的なものだったとはいえ、本人が嫌悪感を感じるほどのクオリティだった。おそらく、私のラップトップやクラウドに保存されている過去のデータやメールの履歴を読み込ませれば私よりも私らしいデジタル人格ができるに違いない。そうして作り上げた人格は簡単にコピーできるので、無限に増やすことができる。

もし、そんな風に大量に作られたクローン人格がインターネットに放たれたとき、いったい何が起こるのだろうか?たとえば、インターネット掲示板の書き込みが人工知能によるものか、人間によるものか見分けがつかなくなるだろう。その”人工”の書き込みをみた人間の反応(書き込み)は、純粋に人間だけによってもたらされたものでない。つまり、生成AIが普及するとは、インターネットにあるものすべてが純粋に人間によるものではななくなるということなのだ。そう、全てが人工物になる世界がやってくるのだ。これを危険と取られる向きもあれば、好意的に捉える人達もいるだろう。ただ、武器として利用すれば非常に強力であり、危機的な状況を起こせるモノになるだろう。

私は、コンピューターサイエンスと社会科学を組み合わせた計算社会科学という分野をメインに研究を行っている研究者だ。博士号は米国のコンピューターサイエンス学部で取得したので半分はコンピューターサイエンスの学者のようなものなのだが、博士課程の同期達のように機械学習の理論的な分析をするわけでない。どちらかというと、生成AIに関してはユーザー側である。

現段階では特に生成AI関連の研究を始めているわけではないが、ChatGPTの爆発的普及に関して私が学者として最初に思ったのは「本当のデータの時代が来たな」という感想だった。そしてこの生成AIの登場が、今後のデジタルプラットフォーマーの運営を大きく規定していくと考えている。次回はその内容を説明したい。

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