暑さで荷主と物流会社の関係崩壊!? 費用内訳のオープン化が進む

2023年8月10日
全体に公開

物流業界でもリクルート旋風が!?

電気代の高騰は物流センター運営ビジネスにも大きな影響を与えている。元々薄利のビジネス故、多くの物流会社はコストアップを自社で吸収出来ず、クライアントである荷主に転嫁する動きが出てきているが、荷主の立場からすると「いやいや、それなら全コストの内訳を開示してよ。」という反応。

リクルートさんが様々な産業で『情報の非対称性』に目をつけ、新しいビジネスを生んできたのと同様のことが物流業界でも起きるか。しかし、そこには『データの整備』という大きなハードルが存在する。

コストプラスフィー形式の契約が主流になるか

3PL(Third Party Logistics)というコンセプトが現れ、物流業務のアウトソースが進んだこの20年間。荷主と物流会社の契約形態は「業務委託契約」が主流。具体的には、ピッキングや梱包といった作業単位ごとに1pc幾ら、1ケース幾らといった作業単価を設定するわけだが、作業原価(人件費)に加え、設備関連費用、電気代や間接部門などの販管費を各作業単価に案分し、更に粗利分を積み上げて単価を決めることになる。通常、物流会社は自助努力(改善活動)でコストアップを吸収しながら利益を捻出するわけだが、電気代などの大幅なコストアップについては、自助努力では吸収出来ずに荷主に転嫁する動きになる。

他方、荷主の立場に立てば、電気代や人件費が上がるのは不可避であり、理解出来る。唯、値上の根拠を示して欲しい。全コストをオープンブックにしてコストプラスフィー形式の契約形態にするのがフェア。2024年問題に端を発する政府の通達もあり、今や払うべきものは払わないといけない世の中。これまでのコスト削減一辺倒ではなく、良いサービスには適正なフィーを支払うという空気が醸成されつつある。

UnsplashのCarlos Muzaが撮影した写真     

データドリブンな現場運用を

『情報の非対称性』を利用して儲けていた物流企業。物流会社の代替は幾らでも存在し、コンペを定期的に実施してコストを叩いておけば良かった荷主。このビジネス慣習が通じなくなっています。

作業原価に加え、電気代や間接部門などの販管費を各作業単価に案分

引用部分、さらっと書きました。つまり、コスト構成をデータに基づいてロジカルに説明し、コストプラスフィーの契約内容を詰めることが当たり前のように。。。

頭と身体が裏腹とはこのことでしょうか。実は、そもそもデータを正しく取得出来ている現場は皆無といって良い業界です。「誰が」「何を」「幾つ」「どれだけの時間」をかけて作業したか。このデータが取れていないのです。

コストコンシャスな業界故に、データを取得するためのコスト(投資)が勿体ないという考えが強かったわけですが、荷主に選ばれ、荷主と一緒に成長し、人件費/電気代高騰や人材不足という社会課題を解決するためには、まずはデータ取得が必要です。そこには荷主の理解協力も必要。

ポーター先生もIoTの文脈で「可視化⇒制御⇒最適化⇒自律化」と主張しています。言わずもがなですが、可視化するためにはデータの取得/集積が必要です。

マイケル・ポーターが語る「スマートコネクテッドプロダクト」

自律化(物流現場でのロボット活用の課題等)については別の機会に。

トップ画像:UnsplashのChromatographが撮影した写真     

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