可視化の先に データ活用で広がる新規事業の世界③

2024年2月27日
全体に公開

Logistics Todayさん主催のWebinarにスピーカーとして参加しました。私自身、物流DXについて考える良い機会になりました。

物流業界地位向上に、現場のDX改革で挑む住友商事

物流DXを直ちに停止せよ

名ばかりDXに警鐘、今こそ必要なデータ基盤のDX

20年前から変わっていない物流現場。私が若い時にSCMやERPといった黒船コンセプトと合わせて「最後の暗黒大陸」と騒がれ、未だに暗黒大陸であり続けている物流業界。

昨今、AIによる自動シフト作成、作業ロボット、バース管理システム・・・データ取得、生成AI、DX・・・等々の新しいツールやコンセプトが怒涛の勢いで入り込みつつありますが、それそのものが目的のように語られることが散見されます。SCM/ERPブームの時のように・・・。あくまで目的を達成するためのツールであり、手段にもかかわらず。本質的に何を実現したいのか?をしっかりと理解しないまま、新しい技術を導入することが目的化する事例が多いのではないかと危惧しています。

では、目的は何か。何から始めたら良いのか。

目的は何か。

⇒ 間接部門含めた生産性の向上。労働集約的な仕事からの脱却。

何から始めたら良いか。

⇒ 全体最適を意識した条件整備、アーキテクチャーの設計。

これに尽きると思いますし、打ち手に迷ったら原点に戻るのが肝要。

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条件整備とは?

トヨタ式には「平準化」「同期化」「標準化」のコンセプトがあります。

平準化:工程跨ぎ、更に会社跨ぎでモノと情報の流れを平準化する。そのために工程やサプライチェーンを「整流化(Not混流の意味)」 のコンセプトで設計し直す。
同期化:工程間の遅れ進みを同期化する。どうしても難しい場合は工程間にバッファー在庫を持つ。(トヨタ生産方式は「在庫ゼロを目指す」と言う人がいますが、間違いです。)
標準化:工程間を同期化するために工程内作業(作業内容、順序、手持ち在庫数量)や工程間のモノの移動ルール(定時不定量 or 定量不定時)を規定する。

結局、新しい技術を導入しても条件整備が疎かでは効果を期待出来ません。ロボットを導入してもバース管理システムを使っても部分最適で終わり、効果を刈り取り出来ていないケースが多いのではないでしょうか。私が知る限り、ほとんどの現場は新しいツールを活用しきれていません。

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アーキテクチャー設計とは?

私が若い時は「モノと情報の流れ図」で平準化や同期化の観点の問題を顕在化し、現場で管理者や作業者の皆さんとその内容を共有し(時には缶コーヒーを奢りながら!)、コツコツと条件整備に取り組みました。現場の一体感や納得感の醸成がベースにあって、現場の改善が進む感じでした。

話は少し変わりますが、最近、自分のチームでHubSpotというCRMツールを導入しました。使ってみて良く分かるのが、欧米のようにjob hoppingが当たり前の文化だと、こういうツールを使わないと営業活動を持続的に管理出来ないだろうなと思います。良く出来たツール(シクミ)だと思います。

日本は古来より社会のアーキテクチャーが変わっておらず(明治維新が唯一の変化でしょうか)、単一民族で阿吽の呼吸が良しとされる社会。会社のシクミや上司と部下の関係も属人的/職人的。組織や仕事の仕方が増築を続けている温泉旅館のようなイメージでしょうか。常連や「通」と言われる人だけが力を発揮出来て、それが評価/リスペクトされる。

団塊Jr.世代の引退が間近に迫り、転職が当たり前、外国人労働者の受け入れが当たり前になる時代、ひと昔前のように現場リードの改善だけでは物事が進まなくなりつつあります。「あの頃は良かった。」とセンチになっても仕方ありません。現場へのリスペクトを持ちつつ、本社主導でシクミを作ること(=アーキテクチャー設計)が極めて重要になってきていると感じます。

トップ画像:gettyimages

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