コペンハーゲンの観光戦略から学ぶ、持続可能なマーケティング

2023年7月31日
全体に公開

コペンハーゲンを訪れて不思議だった感覚が、街(首都)の中心で過ごしている人が、観光客なのか地元の人なのかわからない…ということ。

6月にデンマークを訪れたときに撮った写真です。

デンマークで撮ったお気に入りの写真

観光コンセプト「THE END of TOURISM 観光の終わり」

THE END of TOURISM(観光の終わり)のコンセプトを知って、納得しました。

「観光を優先して、地域に住む人の生活の質が下がってしまうと、コペンハーゲンは観光客の犠牲になってしまう」という考えから、観光客でなく、「一時的な住人となり地域文化を体験」する人を増やすコンセプト
THE END of TOURISMのコンセプトを要約

Visit Denmark(国の観光組織)のプロモーションコンセプトは「Don't be a Tourist in Denmark,be an Explorist」=「観光客にならず、探検家になろう」です。

観光の宣伝なのに、観光客にならず…

とても芯のあるコンセプトです。

コペンハーゲンの観光ビジョンは、「LOCALHOOD FOR EVERYONE」=「地元体験を全ての人に」

と掲げられています。

Wonderful Copenhagenのサイトより画像引用
自分も自転車にたくさん乗って、地元の人たちとの一体感を味わってきました。

コペンハーゲンの観光戦略は、外国人がたくさんお金を落としてくれればOK

ではないわけです。

この1枚目で地域のコペンハーゲンの観光戦略がまとまっています。

上段:ビジョン、ミッション
中段:戦略方針
下段:成功指標

THE END of TOURISMの戦略資料より引用

重要なポイントを抜き出してみます。

ポイント1. 人間中心の持続的な成長を掲げる

戦略方針の一つに下記のように出されています。

人間中心の成長
観光を住民と訪問者の双方にとってウィンウィンの状況にする。
コペンハーゲンの戦略方針の一つ

ポイント2. 市民の関わりを観光KPI(指標)に入れる

また、観光戦略の主要指標には市民の関わりについても触れられています。

指標の例1. 観光により生み出されたコペンハーゲン市民の雇用数
指標の例2. 訪問者の増加に対する市民の支持率

観光=外から関わる人の満足度、ではなく地域に関わる人が住みやすいと感じることが重要視されています。

ポイント3. 観光の前段階の市民が住みやすい街のコンセプト+指標定義

コペンハーゲンの街のコンセプトは「Livable City 」(住みやすい街)です。

コペンハーゲンの行政が発行する都市戦略資料Co-create Copenhagenより画像引用

Livable Cityを実現するための目標指標も明確に定められていました。

Livable Cityを実現するための2025年目標
・コペンハーゲン市民の都市空間での滞在時間が20%増加。
・コペンハーゲン市民の90%が、自分の住んでいる地域は活気があり、変化に富んでいると考えている。
・コペンハーゲン市民の3分の2が街を清潔だと感じている。
・コペンハーゲンでは、通勤・通学の50%が自転車である。
・コペンハーゲン市民の70%が駐輪場に満足している。
・コペンハーゲン市民の75%がコペンハーゲンを緑豊かな都市と考えている。
Co-create Copenhagenの資料より引用と翻訳

「THE END of TOURISM 観光の終わり」や「LOCALHOOD FOR EVERYONE 地元体験を全ての人に」が宣言・コンセプト・プロモーションだけで終わらず、KPI(目標指標)に落とし込まれ、実行まで繋ぎ込まれていることがわかります。

外国からの訪問者の成長だけが目標ではなく、地域に関わる人全員にとっての価値を高めることを目標として置かれていることがわかります。

持続可能なマーケティングの根底には「誇り」がある

コペンハーゲンの観光戦略からの学びをマーケティングとつないで整理していきます。

考えていきたいテーマ
=短期的な売上や利益追求ではなく、持続的に発展ができるマーケティングとは何か?

この、持続的なマーケティングのヒントをコペンハーゲンのまちづくり・観光戦略から学びました。

ポイントをまとめます。

1. 外の人と中の人の両方がウィン・ウィンになる仕組みをつくる
2. 中の人が自分たちの文化を誇れる仕組みをつくる
3. コンセプトを綺麗事で終わらせずに、戦略方針と指標に落とし込む

最近はマーケティングミックス(価値の届け方)4Pにもう1つPを加えています。

Product商品
Price価格
Place場所
Promotion広告

Pride誇り

中の人が誇りをもっているから、良い商品、良い体験、良いコミュニケーションが生まれるのだと思っています。

コペンハーゲンのマーケティング5P

コペンハーゲン市内を案内してもらった方からは、この中心地は地元の人にとっても重要な場所だと案内されました。

コペンハーゲンの中心にある川沿い 地域の人も観光客も、ごっちゃ混ぜになって寛いでいます

マーケティング戦略を綺麗につくるだけではなく、中の人が誇りをもって仕事ができる仕組みも一緒につくっていくことが何より大切だと考えています。

今回のマーケティングの「外」から学ぶマーケティングは、
コペンハーゲンの観光戦略から学ぶマーケティングをテーマに書いてみました。

デンマークのフィールドワークは3ヶ月に1回を予定しているので、ご興味ある方がいたらぜひ教えてください!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

※オススメ書籍

「オーバーツーリズム:観光に消費されないまちのつくり方」の本は、持続可能なマーケティングとは何か?を考える上でもたくさんのヒントをもらいました。

応援ありがとうございます!
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