【Midas List 2023】世界最高のVCが集まる招待制ディナーに行ってきた

2023年6月27日
全体に公開

米経済誌フォーブスが毎年発表しているトップ100のベンチャー投資家リスト、「マイダスリスト」。世界で最も業績をあげた100人が選ばれ、VC業界では最も権威があるグローバルなランキングと言われています。

3年前、弊社Sozo Venturesの中村幸一郎が日本人として初めてランクインしました。2021年に72位、2022年に63位、今年2023年は55位と3年連続での掲載です。

先日、今年のマイダスにノミネートされたVC限定のレセプションディナーに行ってきましたので、当日の様子をレポートします。おそらくこのレセプションの内容を日本向けにお届けできるのはこの記事が初めてのことになると思います。

マイダスリストとは

マイダスリストの選考において対象となる投資先企業は、過去5年間に少なくとも$200Mで株式公開または買収されている、もしくは、投資時から評価額が同期間に少なくとも2倍の以上になっていることが重要な選定の基準の一つとなっています。

本リストの作成には、有力なVCへの幅広いLP投資投資で知られるTrueBridge Capital Partnersが協力してデータの整合性チェックしていることも重要なポイントです。マイダスリストの詳細に関しては、平川凌さんのトピックス記事「世界最高のベンチャーキャピタリスト2023」をぜひご参照ください。

参加者の顔ぶれ

場所は、サンフランシスコ市内のレストラン。さぞ華々しい場所かと思いきや、シリコンバレーらしいとてもカジュアルな雰囲気に包まれた会場での開催となりました。

出席者には、Apple、Google、 Yahoo、Instagram、Zoom等名だたる企業を初期から支援したアメリカを代表する老舗VC、Sequoia CapitalからSequoiaの未来を担う投資家と言われているロエロフ・ボサやアルフレッド・リン、Pear VCのペジュマン・ノザド、マー・ハーシェンソンなどなどこの会以外では決して集うことがないであろう非常に豪華な投資家の面々に加えて、TrueBridge Capitalのメンバーやニューヨーク証券取引所、Bloombergのアナリスト等も多く参加していました。

今年のマイダスのトレンド

会場では、マイダスの作成を長年リードしているForbesのアレックス・コンラッドが今回ノミネートされた投資家達をせわしく出迎えており、私も彼から直接話を伺うことができました。

昨年のマイダスでは、NFTで領域で著名なDapper Labs、分散型取引としてリーディングプリジェクトのUniswap等に投資したことで知られるWeb3領域で著名な投資家のa16zのクリス・ディクソンが1位を飾るなどWeb3、クリプト関連企業での投資で成功を収めた投資家が上位にランクインされる傾向がありました。しかし、今年はその傾向が一転。直近のIPO市場が一時的に落ち着いていることもあり、去年ランクインした顔ぶれの多くが順位を下げたり、リストから外れています。

その一方で、AirbnbやフードデリバリーサービスのDoorDashのようなコンシューマー向け企業やSnowflakeなどのエンタープライズ向けソフトウェア等の投資でこれまでコンスタントに成功を収めてきたVC界のレジェンド達、トップティアの老舗VCの次世代を担っていくパートナー達が非常に良い結果を残しランクインしています。

また、トップティアの老舗VCと戦略的に差別化を計りながらこの10年ほど成長してきた新興VCのパートナーやバイトダンスを筆頭とした中国関連の投資で成功を収めた投資家がランクインしています。

(写真:会場にて筆者撮影)

アフリカ系ベンチャー投資家初の選出

今回出席した全ての投資家を代表して、アフリカ系のベンチャー投資家として初めてマイダスに選出されたBase10 Partnersのアデ・アジャオがスピーチで登壇しました。

彼は、スペインでスペイン語版Facebookとも言われたTuentiを含む2つのスタートアップを立ち上げ、売却した後、シリコンバレーに移住し自身のVCを6年前に設立しました。これまでに彼が初期に投資した配車サービスCabify、求人プラットフォームのJobandtalentは、既に両社とも$1B以上の評価額となっています。

最近のマイダスには、シリコンバレーの外でキャリアを開始した移民によって始められたVCのパートナーも多くラインクインしています。

シリコンバレーは、すでにスタートアップ、VCの聖地ではなくなっているのではないかという議論とは裏腹に、アデのようなアメリカの外で成功した起業家や投資家をシリコンバレーはいまだに強く惹きつけており、これも今回のリストから垣間見れる一つのトレンドかと思います。

(写真:会場にて筆者撮影。写真中央左がアデ・アジャオ、中央右がアレックス・コンラッド)

今最も注目したいエマージングVC、Pear VC

アデと同じくスペイン出身で一昨年のマイダスの中でも注目の投資家として取り上げられたPear VC。 同社は、カリフォルニア州メンローパークに拠点を置くプレシードおよびシードステージのVCでこれまでにDoordash等の有力スタートアップに支援しており、投資先の企業の総評価額は150億ドルに上ります。創業者のマー・ハーシェンソンはスペイン出身、ペジュマン・ノザドはイラン出身の元サッカー選手で非常にユニークな経歴をもつ二人によって始まった新興のファンドです。

今年のマイダスでは、二人とも20位台にランクインしており、2013年に最初のファンドを開始以降$100M前後のファンドサイズでトップティアのVC達と方を並べてこの順位に創業者2人ともラインクインしているのは驚異的な結果です。

彼らの特徴は、スタンフォード大学を始めとした米国のトップティアの大学を中心とした学生の起業家、アーリーステージの起業家を支援するための複数のプログラムで、このプログラムから多くの有力スタートアップを選出しています。投資先企業の50%が学生起業家で、アーリーステージの企業向けのブートキャンプであるPearXでは、Affinity、Xilis、Viz.ai、Cardlessを支援しています。

Pearに関しては別途今後記事にして皆さんにお伝えできればと思います。

まとめ:トップのVC投資家たちの現在のマーケット下での動き

昨今メディアでは、現状のマーケットを受けてVCファンドの活動の停滞やファンド規模の縮小等に関する報道が多々見受けられます。しかし、今回イベントに出席していたマイダスに選出されたファンドのパートナー達との会話からは、それとは逆行する活動が垣間見れました。

例えば、Sequoiaと並びアメリカを代表するVCの大手NEAは直近で数ビリオン規模のファンドをクローズさせる段階にあり、また上記のPearは、先日$432Mの第4号ファンドをクローズさせて、ファンドの規模をほぼ3倍にさせており、さらにチェックサイズ(一回あたりの投資額)を厚くしてシード投資を加速させています。

今年のマイダスにノミネートされた投資家達が今後どのような領域に注力して活動を進めていくのか、そして来年のマイダスにはどのような企業に投資をしたVCの面々がノミネートされていくのか、今回ランクインした投資家達と継続的にコミュニケーションして注視していきたいと思います。

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