【2/2】まもなくウクライナの大規模攻勢か/注視したい「戦闘機」と「交渉」
みなさま、こんばんは。いつも覗いていただき、ありがとうございます。
6月がはじまりましたね。前回の投稿から間が空いてしまっているのですが、今回もウクライナ戦争について考えてみたいと思います。
今回の記事では、主にロシア側の視点から停戦の可能性を考えます。そしてウクライナの大規模反転攻勢の行方について、注目すべき2つのニュースを取り上げようと思います。
ウクライナの視点
さて、今続いている戦争は早くも開戦から1年3ヶ月になりました。戦闘をやめて停戦することはできないのか?というのは世界中の関心事です。
前回の記事で触れているところですが、主にウクライナの視点で見ると現状の停戦は難しく、外国がそれを求めるのはあまりに酷な状況です。
というのも、ロシア軍は領土を占領するだけではなく、底にいる人達をかなり大規模に虐待・殺害・拉致する事案が相次いでいるからです。
ウクライナにとってみると「領土を明け渡すから人命を助ける」という選択肢が現実的ではないということになります。
改めて世論調査を見ると、ウクライナの人たちは核攻撃を受けても戦争を継続すべきという人が89%だったそうです。
そして停戦を受け入れる条件としては、2014年に占領されたクリミア半島も奪還することだという人が93%でした。(今年2月、ミュンヘン安保会議調べ)
これはつまり、耐え難いような大きな犠牲を払ってでもロシア軍を完全にウクライナ領土から追い出すまで戦争を続けるべきだという考えです。
そもそも、プーチンはなぜ戦争を?
ここまではウクライナの視点です。では、ロシアはどうか。
これを考えることはすごく重要で、実際のところこの戦争を終わらせる判断をできるのはプーチンしかおらず、プーチンが「もうやめよう」と思えばこの戦争は終わるからです。
ロシアもウクライナ同様、何万人もの人たちが命を落とし、第二次大戦に次ぐダメージを受けています。その対価としてこれまでに得たものはウクライナ国土の20%の実効支配です。
明らかに、犠牲に見合った結果は得られていません。
ではプーチンはこれを持って戦争をやめるか。あるいは、もう少し支配地域が増えれば「この辺でもう十分だから停戦しよう」となるか。
これまでを考えると、その可能性も低いのでしょう。
なぜそう言えるかというと、ヒントはプーチンの「論文」にあります。
プーチンは侵攻の前年・2021年に「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という論文を発表しました。
![](https://contents.newspicks.com/topics/29/posts/39/images/20230602124440845_Dnu2wp10.png?width=1200)
この中でプーチンが一貫して主張しているのは、題名の通り「ロシア人とウクライナはもともと一つの民族だった」というものです。
色々言っていますが、結論から言うとウクライナが今みたいに自分たちの意志を持った独立国家でいることは不快だと認識しているのが伺えます。
そしてその象徴でもある、西側にすり寄るゼレンスキー政権は打倒するべきと認識していると見られます。
ことをややこしくしているのは「表向き」の戦争目的で、プーチンはNATOが東に拡大してきたことなどを挙げています。
もちろん戦争と無関係ではないでしょうが、色々な演説を見ていると、やはりウクライナが真っ当な「主権国家」であることが許せないのでしょう。
ウクライナを完全に「支配下」にするまでやめない?
これは「プーチンがそう思っている」という範囲にとどまらず、ロシア軍の実際の行動にも現れています。
今でこそウクライナの戦線は国の東側(ロシアとウクライナの国境の方)に寄っていますが、最初は首都キーウを3方面から包囲して首都陥落(≒ウクライナという国家の崩壊)を目指していました。
そしてゼレンスキーへの暗殺未遂は数回あったとされます。(ウクライナ高官は「十数回、暗殺未遂があったと思う」と話しています)
プーチン、ロシアの論理からすると、民族的にロシアの一部であるウクライナにあって、ロシアに従順ではないリーダーは排除しなければいけない。
わかりやすく言うなら、ウクライナを今のベラルーシのような国にするまでは気が済まないということなのです。
さて、前の記事とこの記事で書いてきたことを一回、まとめてみたいと思います。この戦争の行方をそれぞれの立場から見通してみると、
ロシア→ウクライナの政権崩壊・全土占領が本来の戦争目的である
ウクライナ→現状、領土を占領されての停戦は選択肢になり得ない
ということになります。今後もウクライナ軍は国内にいるロシア軍の一掃、ロシアは支配地域の拡大を目指すことになるでしょう。
大事な2つのニュース:「戦闘機」と「交渉」
足元の戦況に目を移すと、これからすぐにウクライナの反転攻勢が始まるとされています。
ロシアが占領する南部のザポリージャへの攻撃が本命視されていますが、実際にどうなるかはウクライナの最高レベルの高官しか分からないです。こればかりはつぶさに戦況を見ていかざるを得ません。
前述の通り、全土からのロシア軍の一掃を目指したいウクライナ軍ですが、今回の反転攻勢でそれを実現することはありえません。
戦果を挙げられたとしてもロシア軍の反撃が想定されますし、その後の戦いが続いていくことになります。
そこで、今後の長く続くであろう戦争を見ていく上で個人的に気になっているニュースを2つほ、紹介できればと思います。
一つはウクライナへの戦闘機の供与です。
広島サミットに足を運んだゼレンスキーでしたが、最大の成果はバイデン政権がアメリカ製戦闘機F-16の供与を事実上、認めたことでしょう。
ファイティング・ファルコンの別名でも知られるこの戦闘機は最新鋭ではありませんが、価格の割に高性能なことで知られ、歴史的に見ても稀なベストセラー戦闘機です。この記事のバナー画像がF-16です。
対戦闘機での格闘能力はもちろん定評がある上、ウクライナが欲しがっている対レーダーミサイルを装備することもできます。
こうした兵装がつけられた状態でF-16がウクライナに渡れば、ウクライナ軍はいま以上に地上と空をセットにして戦うことができます。供与される数によっては、戦況が大きく変わる可能性もあります。
![](https://contents.newspicks.com/topics/29/posts/39/images/20230602125720229_xkfRpG2u.jpg?width=1200)
パイロットの養成には最低4ヶ月かかるので、まもなく始まる大規模攻勢には間に合いませんが、いつどんな内容で供与されるかに注目です。
そして2つ目のニュースは、交渉の可能性に関するものです。
最近、ちらほら欧米メディアでは交渉での解決を指摘する記事も出始めています。
たとえば、WSJによると欧州とアメリカの当局者は、今年の年末にもロシアを交渉に引きずり出せるのではないかと見ているとのことです。
実際、今年春になってからのゼレンスキーの外遊ぶりは凄まじいです。
G7サミット中の日本に来たのは記憶に新しいですが、その前にもサウジアラビアやフィンランド、後にはモルドバにも行っています。侵略を受けている国の指導者としては異例とも言えます。
この中で交渉の可能性を議論していてもおかしくはないでしょう。
![](https://contents.newspicks.com/topics/29/posts/39/images/20230602125918001_dr0DaD7F.jpg?width=1200)
ただ、前述の通りプーチンが戦争を始めた理由はウクライナの政権転覆と考えられます。また、ウクライナはロシア軍の完全除去を目指している。
だから、プーチンを交渉の関に引きずり出すのは容易ではありません。このため、ポイントはやはりウクライナの攻勢がうまくいくかどうかです。
ここでプーチンが「これ以上続けるより停戦したほうがいいかも」と思うくらいまでウクライナ軍が突破できるか。視点を変えるなら、本当は全土の奪還を目指すウクライナが一旦納得できるほどの領土が戻ってくるのか。
戦場の様子が交渉を左右する展開が、今後も続きます。
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