安倍元首相銃撃事件/警備は「現場」の責任なのか

2022年7月20日
全体に公開

みなさん、こんにちは。キアラシです。

まず、更新が長らく止まってしまい、たいへん申し訳ございません。

安倍元首相が銃撃され死亡するという事件を受け、NewsPicksでは先週まで緊急で「政治と暴力」という特集を展開してきました。

この間も世界では色々な動きがある中で、フォロしてくださっている皆さんに記事をお届けできず、すみませんでした。

さて、今回はその安倍元首相の特集の「編集後記」的なものをお届けできたらと思います。

山口県下関市で感じたこと。

今回の事件、いくつかの論点があると思いますが、そのうちの1つが警備の責任です。

怪しげな挙動の人物が、わずか7メートルのところまで首相に近づけてしまった点、そしてSPも含め、誰も後ろの方を警戒していなかった点も批判されています。

「現場の警察官の能力」といった点もかなり問題視されています。

後方の警備を担当した警察官が自転車に気を取られ、発砲まで山上容疑者に気づかなかったという記事も出ていました。

ただ私は、警備の問題については思うところがあります。問題を個人のレベルに落とし込んではいけないと感じているのです。

というのも、私は山口県下関市で2年ほど記者をしていた経験があります。当時、安倍氏は首相でしたが、地元入りする時は一兵卒の記者として取材をしていました。

中でも安倍さんは、お盆の時期に地元に入り「関門花火大会」という大きなお祭りに毎年訪れていました。ここでひとこと挨拶するのがお決まりなんですが、下関での「安倍人気」というのはすごいものがあります。

安倍さんの入退場の時は何百人という人が安倍さんとハイタッチしに行き、たちまち安倍さんは囲まれて、大量の人の中を練り歩くことになります。

当然、その時の安倍さんと地元の人達の距離はほぼ、ゼロです。

「信頼」をベースにした政治活動

私もその距離に近づいたことがありますが、はっきり言ってあの状況で首相を完璧に警護することなど、不可能です。

そしてその後の行程、どこでご飯を食べ、どこで寝るかなども(詳細は省きますが)毎年ほぼ決まっていました。

繰り返しになりますが、当時の安倍さんは首相です。最もハイレベルの警戒をすべき要人でも、こうした状況だったわけです。

何が言いたいかというと、今回の警備をめぐる問題は現場の警察官と言うよりも、やはり日本の政治家警護、要人警護体制全体の問題なのだろうと思います。

とても嫌な言い方になりますが、日本では今まで事件がなかっただけで、政治家が狙われやすい機会はいくらでもあったということです。

「平和ボケ」と言えばそれまでなのでしょうが、日本の選挙運動や政治活動は、市民がまさか政治家の殺害という蛮行に及ばないという、ある種の「信頼関係」の上に成り立っていたのだと思います。

今後、当然、警備体制を根本的に見直す動きは出てくるでしょう。

ただ、心に留めないといけないのは、その「見直し」次第ではこれまで通りの有権者と政治家の触れ合いみたいなものは、大幅に制限されるようになるかもしれないという点です。

改めてこの問題は、現場の警官の問題などとせずに、日本社会という「信頼」の上に成り立っている政治活動のあり方そのものを考えるきっかけにしないといけないと思いました。

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投稿が大幅に遅くなった上、当初の予定と代わってしまいましたが、今回は思ったことを書いてみました。

なかなかコメントも難しいようなショッキングな案件だと思いますが、最後まで読んでくださった方も、そうでない方も、いつもお付き合い頂き、心より感謝申し上げます。

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