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1ドル160円突破に大慌てでも…日銀「2度の為替介入」は戦略的に凄かったと言えるワケ
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
記事の通り、円買い外貨売り介入は外貨準備の範囲内に限定されるとみるのが一般的ですし、日銀のHPに円買い介入は外貨準備を使って・・・と書いてあります。一方、神田財務官は「世の中で言われている『こういうところが限界ではないか』ということは全く間違っている」と発言しました。これはやせ我慢ではなく、恐らく主要中銀との間で締結している、ドルを無制限に調達することができるスワップ取極を念頭に置いた発言とみられます。実際に発動できるかは、状況次第であり、海外の理解も必須です。この為、ハードルはかなり高いと考えられますが、技術論で言えば介入に限界はないのでしょう。もっとも、神田財務官も今の発言のままですと単なる負け惜しみにしか聞こえません。本当に限界がないと考えるのであれば、その根拠を寧ろ対外的に示すべきだと思います。仮に無制限介入が可能との見方が広がれば、投機筋がドル円を買い上げていくのは容易ではなくなります。
日銀、円安で政策早期正常化も 物価上昇に上振れリスク
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
こうしてみると植田総裁の例の発言(円安は無視できる?⇒はい)はご本人にとっても咄嗟に口から出てしまっただけで、全体としては円安に警戒を抱いていることがうかがえます。日本経済は輸入に依存せざるを得ませんから国内物価に為替相場の影響は強く、当然と言えます。日本は景気が悪いから利上げは控えるべきで、円安の良い面を考えよう、との論調もみられますが、30数年ぶりの賃上げによる景気浮揚効果を水泡に帰しているのは輸入インフレでその主因は日銀の金融政策と円安にあります。円安は企業収益、インバウンドの観点から歓迎される動きですが、モノには何でも限度があります。2年間も実質賃金の前年割れが続いている状況下、そろそろ円安を止める必要性も高まっていると考えられます。因みに家計はネットすると1753兆円の金融資産超です(昨年末)。利上げが家計に対して、そこまでダメージを与えるわけではないでしょう。
4月末の外貨準備高、1.8兆円減 介入実施が原因か
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
2022年の為替介入の時も外国証券の残高が減少しており、米国債などを売却したようです。これは海外金利の上昇を通じて外国の経済にも影響しますから、大規模介入にはある程度の国際的なコンセンサスが必要と考えられます。その点、報道によればイエレン財務長官は5月4日、「介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と発言しており、まだそこまで握れていないのでしょう。一方、日銀はFRBやECBなど海外の5つの中銀と無制限のドルを中心としたスワップ網を整備しています。つまり究極的には介入に必要なドル売りの原資を他の中銀から調達することも可能と考えられ、為替介入の規模の観点で限界あり、とするのは早計と思われます。逆にその制度を介入に転用できるのであれば、財務省は早めに介入に上限がない旨、市場に対してアナウンスするべきでしょう。
日本経済強くして円高方向へ是正へ、150円超の円安は「安過ぎ」=経団連会長
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
日本経済の強弱と円相場は一致しないか寧ろ逆行します。デフレ局面(経済が落ち込んでいる時)では実質金利(=名目金利-インフレ率)が上昇し、円高気味になり、反対にインフレ局面では円安気味に推移する傾向がみられるからです。この為、円安が弱い日本ということではありませんが、問題なのは今のインフレが経済の好調さの表れではなく、単なる円安による輸入インフレという点です。この円安は企業収益への追い風となって株高を演出してきた一方、家計に実質賃金の目減りを招いています。今年も円安によって輸入物価の上昇が必至と言え、その結果、交易条件が悪化し、そこから生じる交易損失は2022年の15兆円を超えてくる公算が大きいでしょう。その分だけ国民の実質所得は目減りします。「景気の観点から金利は上げられない」との見方が根強いですが、今の日本は借入コストが安い反面、えらく高い輸入品を買わされているのが現状です。輸入抜きに日本経済は成り立ちませんから、その両方に目配せをする必要があり、総合的にみてやや円安に振れ過ぎている水準と考えられます。
「何も買えない」“歴史的円安”で海外旅行も物価高 夏休みの時期も続く?【ひるおび】
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
海外旅行であれば「何も買えない」場合、コンビニ弁当で済ます、自炊するといった代替手段がありますし、そもそも海外旅行に行かない選択肢があります。困るのは、こうした事態が海外旅行に限らず、既に起きていることです。日本は資源の殆どを輸入に依存しており、食料の自給率も高くありません。そんな日本人にとっての円建の値段は、ドル建の商品市況とドル円の掛け算です。今、我々はとんでもなく高い輸入品を買わされており、今年の交易損失は2022年の15兆円を超えてくる勢いです。これは、そのまま実質国内所得の下振れ要因です。円安には企業収益の改善、日本株の上昇、インバウンド消費の活性化といったメリットがありますが何でも物には限度があります。さすがに150円アッパーとなれば、デメリットにも目配せする必要があります。
【緊急解説】いま「超円安」が止まらない理由
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
円相場の特徴は実質金利(=名目金利-インフレ率)の影響が強い点です。従って、日本がデフレやディスインフレの時、いくら日銀が名目金利を低く抑えても、実質金利が高止まりし、円高圧力が加わります。一方、インフレ傾向になると実質金利が下がり円安に向かいやすくなります。これが日本の景況感と円の方向性が逆行する大きな理由です。もう一つは日本の為替市場が発達しており、海外投資家にとってヘッジ手段が豊富である点です。例えば、新興国の経済成長が見込まれる際、資本流入が活発化しますが、為替市場におけるヘッジ手段が限られることから、投資家はその国の通貨も合わせて買わざるを得ません。従って株価と通貨の動きが一致します。これに対し、日本株を買う海外の投資家は為替ヘッジ付きで日本株を買うことができる為、株を買う際、必ずしも円まで買う必要はありません。ポイントは日本の景気や国力と円相場の動きは異なることの方が寧ろ多いということです。仮に「悪い円安」が生じているとすれば株安、債券安(=長期金利上昇)を伴うケースで、今の円安を国力低下とみる必要性は低いと言えます。もっとも、国際収支の構造が変化しており、円相場の水準が切り下がった可能性には大いに留意する必要があります。
「悲観は1ドル=230円、楽観は120円」歴史的な円安からの乱高下…今後のシナリオを専門家はどうみる
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
いくつかポイントをまとめました。①日本は資源、食料とも輸入に頼らざるを得ません。その際の国内物価はドル建の輸入品とドル円の掛け算に概ね連動しますから日本の物価に為替は強く影響します。物価の番人たる日銀は表面的には否定しつつ為替相場を無視できないはずです。②インフレ自体は問題ではありません。問題なのは賃上げが追いつかず実質賃金が目減りする場合です。日本ではそれが約2年も続いており、景気回復実感が沸かない最大の要因と言えます。輸入インフレを上回る賃上げがなければ家計にとって円安は逆風です。③一方、円安は企業収益には総じて追い風です。またインフレは株価の押し上げ要因でもあります。従って家計の株式保有比率が米国並みの4割台まであがれば株高による資産効果により、実質賃金の目減りをいくらかカバーできます。但し今のところ日本の家計の金融資産に占める株式保有比率は1割台です。➃円安は日本の製造業に追い風ですが、2011年の75円台から円安に振れた後も日本製が世界を席巻したわけではありません。輸出競争力には為替以外の要因も影響していると考えられます。因みに為替アナリスト時代、多くの製造業とディスカッションを行いましたが、80年代~90年代の日米貿易摩擦を通じ、「円安+輸出増」といった発想を持っていない点が印象的でした。米議会を刺激するだけでろくな結果にならないと悟っているからです。⑤円安を招く低金利は債務者への追い風ですが、日本の場合、民間部門(家計と非金融法人部門)が抱えるネットの債務(金融資産-金融負債)は計1079兆円です。従って1%金利が上昇した場合の利払い負担の増加額は約11兆円です。一方、円安による輸入物価の上昇によって日本の交易条件(=輸出物価÷輸入物価)は悪化しており、そこから巨額の交易損失が生まれます。2022年はこれが約16兆円、昨年が約11兆円でした。今年はこの円安が続くと最近の資源高と相まって恐らく2022年を超えるでしょう。つまり、低金利メリット以上に高い輸入品を「買わされている」のが現状です。⑥円安は世界に対する日本のバーゲンセールを意味します。マンション価格が高騰していますが、買っているのは誰でしょうか。以上を踏まえると円安もどこかの水準からデメリットがメリットを上回り始めると考えられます。介入するということは政府も今がその水準とみているのでしょう。
【3分解説】円安は158円台に。それでも日銀が「動かない」理由
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
日銀が動か(け)ないとすれば、理由はデフレ脱却に向け、政府と一体となって取り組むことを謳った2013年の共同声明およびその政府がデフレ脱却を認めていないことでしょう。2006年に内閣府が国会に提出した資料によればデフレ脱却の定義は「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがなくなること」。これではいつまでたっても逆戻りする可能性があるとの解釈が成り立ち、日銀は動けません。さて、金利を上げると日本経済がもたない、だから低金利と円安を受け入れるしかない、との論調もみられますが、円安が度を過ぎるとかえってマイナスが大きくなります。例えばこの調子で160円が定着し、資源価格も今の水準が続くとした場合、交易条件の悪化により、今年の交易損失は2022年並みの15兆円程度となりそうです(昨年は約11兆円)。この分だけ日本の実質国民総所得GDIはGDPから下押しされます。一方、日本の家計が抱える債務は昨年末時点で388兆円ですから1%の金利上昇で増える利払い負担は約3.9兆円です。ただ金融資産も2141兆円ありますから家計にとっては金利上昇によるメリットもあり、負担はいくらか軽減されます。これに対し、企業はネットで金融資産よりも債務が多いのですが、それでも差し引き674兆円。1%の金利上昇による利払い負担増は約6.7兆円です。企業からみれば120円や130円でも本来は十分な水準。これでもまだ「低金利+超円安」の方がいいでしょうか。日本は食品、エネルギーの自給率が低く、輸入抜きに生活が成り立ちません。従って物価や経済の安定にとって本来、為替の安定は極めて重要なファクターと考えられます。
日銀の植田和男総裁、円安で影響あれば今後「金融政策の判断材料に」 追加利上げは見送り
内田 稔高千穂大学 教授・国際金融論
日銀は物価の番人。そして日本は食品、エネルギーの自給率が低く輸入依存度が高い為、物価は為替と国際的な商品市況の影響をまともに受けます。後者は日本でコントロールできませんから、日銀は表だっては言えないにせよ、物価の安定に本来は為替への目配せも欠かせません。為替介入だけでは円安は止まらないでしょうから夏場にかけて輸入インフレの再燃は必至です。六本木のビルが海外勢の買いで軽く10億を超える状況下、これ以上の円安が日本にメリットがあるとは到底考えにくく、今年の交易損失は軽く10兆円を超えてくるでしょう。30数年ぶりの賃上げでも一向に実質賃金は上がらず、世界に向けて日本のバーゲンセール開催中。しばらく日本(人)は通貨安の意味を体感していくことになると考えられます。
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