過熱するLNG投資、貿易と船から今後を見通す(貿易編)

2023年4月7日
全体に公開

Shippioの田中です。今回からは個別テーマを取り扱っていきたいと思います。本記事では年を追うごとに注目度の高まるLNGの動向を見ていきましょう。

複数の記事に分けてLNGに関する以下のトピックスを扱っていきます。

  • LNGトレードや国毎の取引等の全体概要(本記事)
  • LNG液化プラントの今と今後の計画を見てわかること(次回)
  • LNG船隊の今と今後の計画を見てわかること(次々回)

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情報ソースとして利用するのはInternational Gas Unionが発行するWorld LNG Report2022です。毎年春先に発行されるので2023年版もそろそろな気はしていますが、こういったリソースがあることも是非知っていただければと思い、昨年7月発行データを元にお伝えできればと思います。

最近のLNGトピックス

まずはLNGに関する直近のトピックスを見ていきましょう。日本でも国や主要企業もLNG投資を加速していく構えです。昨今の世界情勢の変化で動きが加速したといえるでしょう。

西村経済産業相は先日ブルームバーグのインタビューで、札幌で開催予定ののG7の気候・エネルギー・環境大臣会合で、LNGの開発、生産といった上流投資の必要性を訴えていく考えを示しています。

同じくブルームバーグの記事より、ロシアによるウクライナ侵攻後激しさを増すLNG争奪戦の渦中で、INPEXやJERAといった民間企業も続々と確保に動いています。

NewsPicksには、まさにこのLNG争奪戦の背景を記した記事がありますので、ご覧いただければより解像度を上げていただけると思います。

LNGのトレードを知る

LNGトレードの実態を掴んでいきます。上図は2021年におけるLNG輸出国と輸入国のトップ4です。LNG輸出に関してはオーストラリア、カタール、アメリカで57%を占めており、逆に輸入に関しては中国、日本、韓国で53.9%を占めています。エネルギーの需要地はやはりアジアです。

なお、国毎のランキングにしたため入ってはいませんが、ヨーロッパという括りにすると、75.1MTとなりランキングでは2位に入ってきます。

輸出において2020対2021で伸びが大きいのはアメリカ、エジプトです。アメリカは大きく輸出を伸ばしており、キャメロンLNG T2-T3、コーパスクリスティT3、フリーポート LNG T2-T3の稼働が牽引して、前年の44.8MTから約50%に当たる22.3MTの輸出を伸ばしています(日系資本も参画していますね。)。エジプトはダミエッタLNGプラントが再稼働したことにより輸出も5倍に増加しています。

続いて輸入です。輸入の伸びは中国、韓国、ブラジルの順に多くなっています。中国は今回の伸びで2021年に日本を抜いて輸入量トップに躍り出ました。日本の輸入量は昨年から-0.1MTと僅かに減らしています。

LNGの輸入量の変数は、その国の経済活動の成長力、原子力や再生可能エネルギーの比率を増やすのか、ガス火力発電の比率を増やすのかという国の方針、そして当該時期においてはLNGの価格が高騰したこともあり、価格を含めた購買力によって年々で増減が発生しています。

エネルギーは国の政策や方針にも大きく左右されるため、この辺りの動向をご存知の方は、是非コメント等で教えていただけるとありがたいです。(私も学びたいです。)

次回予告

今回はLNGトレードの概要に触れましたが、実はIGUのレポート、これからのプラントの建設予定やLNG船の建造予定、そして供給キャパシティの見通しまで、数字ベースで詳細に記載されており、今後のビジネスの広がりをかなり具体的にイメージすることができる内容になっています。

次回は詳しくその点にも触れていきたいと思います。

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